「GTでモータースポーツへのアクセス容易に」FIA幹部が語る意義
「グランツーリスモ」(GT)の世界選手権シリーズ「ワールドツアー」には、国際自動車連盟(FIA)の冠がついており、その年を締めくくる表彰式では、F1の王者らとともにGTの覇者も栄誉をたたえられます。FIAとしてGTとタッグを組む理由はどこにあるのでしょう。シドニー大会に帯同したFIAのステファン・フィラストレ氏に聞きました。
GTの歴史、プレーヤー数に敬意
――あなたはFIAでブランド・ライセンス・リテール部門のトップを務めていますが、GTの世界選手権シリーズに帯同している理由は何なのでしょう?
私の役割はFIAを代表して、GTと、その生みの親である山内一典さんをサポートすることであり、レースで選手たちにペナルティーを出す際、競技長としてFIAの見地からアドバイスをしています。
GTは20年間の歴史があり、世界で8020万本(2018年5月現在)売れ、多くのプレーヤーたちがいるタイトルであり、大変敬意を抱いています。
我々車業界として裾野を広げることが大切ですが、GTの幅広いファン層に訴えかけることができ、その中でヒーローが生まれるお手伝いができています。
そしてそのヒーローたちが、さらに新たな影響を広げてくれることを望んでいます。
世界で一番速いドライバーは誰か
――車業界として将来的な視野で、GTに期待するものは何でしょう?
FIAとしては、レースには目的がないといけないし、レースは社会や公共に影響を与えなくてはいけないと考えます。
まず、FIAは「安全性」に力を入れています。なるべく事故のないレースをすることが大事です。
と同時に、「革新性」も重要です。電気自動車だったりハイブリッドだったり、技術を積極的に導入し、車業界の先駆け的存在になることを目指しています。
そして、「いろんな方々に幅広く参加してもらえること」が三つ目の柱となります。女性であったり、幅広い年齢層であったり、より多くの方々にサッカーや野球のようにモータースポーツに参加していただくようにしないといけない。
この先20年を考えてみても、安全であって革新性があって、誰もが参加しやすい、参加障壁が低いスポーツであることを目指しています。
それとともにGTの世界選手権においては、毎年新たな参加国が増えることを望んでいます。
それによって多くの人々が世界選手権に参加し、より幅広いイベントになるからです。
良い例としては、オリンピックがあります。
多くの国が参加し、勝つことではなく参加することに意義がある。そういう意味において、デジタルモータースポーツの分野は可能性があると思っています。
F1のトップ選手だったフェルナンド・アロンソ氏に「世界で一番速いドライバーは誰ですか」とジャーナリストが聞いた際、「僕ではなくて、ブラジルの貧しい地域にいる子どもたちかもしれない。彼らはモータースポーツにアクセスできていないから分からないが、もしかしたら僕より速いかもしれない」と答えた、という話があります。
そういった意味で、ソニーのプレイステーション4が1億台以上も売れたことで、GTを通じてモータースポーツにアクセスできるようになり、新しい金の卵たちを探すきっかけになったのでは、と思っています。このことは本当に大切なことだと思っています。
(文・永田篤史)