フィギュアスケート

早大・島田高志郎、新プロ「死の舞踏」でダークな一面「表現面でさらに洗練させたい」

早大の島田高志郎はフリー「死の舞踏」で新たな表現に挑む(すべて撮影・浅野有美)

2022年全日本選手権2位と、初の表彰台に乗った早稲田大学4年の島田高志郎(木下グループ)。新シーズンのフリーは「Danse Macabre(死の舞踏)」でダークな曲調のクラシックに挑戦する。難易度の高いプログラムに「表現面に関してはさらに洗練させていって、シニアのスケーターと“しっかり”言われるスケートを披露したい」と成長を誓った。

全日本2位、充実したシーズンも「大変なのはここから」

2022~23年は島田にとって充実したシーズンだった。

ハイライトは12月下旬に大阪市で開催された全日本選手権。同じチームの宇野昌磨(トヨタ自動車)に続く2位に入り、自身初の表彰台に上がった。2位以下、世界選手権代表に選ばれた5位の山本草太(中京大学)まで7.15点差の大混戦を勝ち抜いた。

「オリンピックシーズンの全日本で失敗して、そこからすべての焦点を、すべての調整を次の全日本に向けて行ってきた。それが強い気持ちとして表れて結果につながった」と笑み。「終わった瞬間はほっと一安心で、やっと自分が目指した結果、演技につながったなと、一つの自信にはなった」と評価しつつ、「終わったことは終わったこと。次はどんなスケーターになりたいか考えるきっかけになりました」と振り返った。

「ブルーム・オン・アイス」で満面の笑み

2月の四大陸選手権に初出場。結果は11位で、トップ選手の強さを目の当たりにした。

「調整の仕方だったり、自信を持って試合に臨むことの大事さだったり、自分に足りないものが本当に浮き彫りになった試合でした。どんな状況に置かれてもトップの選手たちは演技をまとめるだけではなく、メダルを勝ち取る演技をしているので、そこが自分にはまだまだ足りない部分だと思いますし、まだまだトップのスケーターの方たちから学ぶことの方がすごく多く感じられました」と課題を見つけた。

手応えがあったシーズンだったが、「大変なのはここから」と気合を入れ直す。「また自分が進化するために、自分が成長するために必要なことだらけが目の前に広がっている。課題をピックアップしだしたら幾千個もあるんで、それをどんどんクリアしていって、理想とするスケーター像に近づくために頑張るだけだなと思っています」と、新シーズンに向かっている。

全日本2位も「自分が成長するために必要なことだらけ」

「死の舞踏」で今までと違った表現の領域に

2023~24年シーズンのショートプログラムはジャズの名曲「シング・シング・シング」を継続する。「さらに滑り込んで、アップテンポにリズムに乗った動きを洗練させていきたい」と意気込む。

フリーは新しいプログラムで、ランビエル・コーチが振り付けした「Danse Macabre(死の舞踏)」。ピアノ調でダークな雰囲気の曲だ。「クラシックで、自分にとっては難しいジャンルと捉えているのですが、プログラムというより作品というか、今までと違った表現の領域に足を踏み入れようと頑張っている」と語る。

「チャップリン」など明るい雰囲気が似合う印象の島田だが、「意外と感情を出す面ではダークな曲調のほうが自分の中でしっくりきている」と分析する。「チャップリンで(感情を)100%出していたら、ダークなときの方が150%、より深いところから出てくる感触がある」

死という重いテーマを扱い、冷酷さ、怖さ、不気味さを内から存分に表現していく。「ストーリー性よりはまず動きの洗練度、シリアスでダークな雰囲気やスケートの重厚感をテーマに今は取り組んでいます。表現面に関してはさらに洗練させていって、シニアのスケーターと“しっかり”言われるスケートを披露したい」と力を込める。

明るい曲調が似合う印象だが、ダークな感情表現が得意だという

4月のアイスショー「ブルーム・オン・アイス」ではフリーの後半部分を初披露した。かなり運動量が多い構成で、「ジャンプを入れずに練習しても脚にきてしまう。ストップして行って、ストップしてまた行ってが多いので、体力面でも成長が必要です。ステファン(・ランビエル・コーチ)から『これはきついわ、ごめんね』みたいな感じで言われた(笑)」と明かす。

島田の進化のために用意されたプログラム。だからこそ、自分のものにしたい作品だ。

「常に常に上を目指して、常に常に戦って」

5月にはステファン・ランビエル・コーチが率いる「チーム・シャンペリー」と、木下スケートアカデミーの練習生との合同合宿が京都府宇治市で行われた。

島田はお兄さん的な存在で、スイスから来た選手たちのために、レストランの予約をしたり、外国語で通訳したり、日本滞在をサポートした。「小さい子たちが日本のすばらしいトップスケーターたちと一緒に滑って経験値を積んでくれることがうれしくて。勝手に保護者目線で見ているところもあるんですが、自分自身もこの合宿に参加できてすごくうれしい」と目を細める。

5月19日に報道陣に公開された氷上練習では、フリーのプログラムを中心に調整した。木下アカデミーに所属する男子選手のジャンプを見て刺激も受けた。

不気味な振り付けもあり、感情表現に注目したい

大学では4年生になった。最大8年間在学できるため練習や試合を優先し、自分のペースで勉強している。最近は環境文化を学び、これからバイオメカニクスの講義を受けてみたいという。

スイスで特訓した後、6月末にアイスショー「ドリーム・オン・アイス」出演のために帰国する。その後はスケート連盟の強化合宿やアイスショー「ONE PIECE ON ICE」出演などがあり、日本で過ごす予定だ。

世界的に見てもレベルが高い日本男子。世界選手権2連覇中の宇野が頭一つ抜けているが、続く選手たちは熾烈(しれつ)な争いをしている。

「常に常に上を目指して、常に常に戦って戦い続けないとトップの方では残れないと思うので、強い気持ちを持ち続けたい」と気を引き締める。

フリーで表現の新境地を開けるか。充実したシーズンを次の成長につなげ、さらなる進化を期待したい。

【写真】宇野昌磨・島田高志郎ら「チーム・シャンペリー」と木下アカデミーが合同合宿

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