フィギュアスケート

早大の島田高志郎、闘志メラメラ 宇野昌磨・三宅星南から刺激「次は僕の番」

観客に手を振る島田高志郎。4年後に向け動き出している(すべて撮影・浅野有美)

4月に行われたアイスショー「ブルーム・オン・アイス」。ひときわ目を引いたのが早稲田大学人間科学部eスクール3年の島田高志郎(木下グループ)だ。今シーズンのフリー「チャップリン」を繊細な動きで情感を込めて表現した。ステファン・ランビエール・コーチに師事し、スイスに拠点を移して丸5年。節目となった北京オリンピックシーズンを振り返ってもらった。

課題と成長を交互に感じた

「新たなスタート地点になったシーズだったと思います」

21~22年シーズンで出場できたのはわずか3試合。「昔に比べたら本当に数少ない試合数であったんですけど、自分の課題や成長を交互に感じることが多くて、もどかしい気持ちとまだまだできるという気持ち、これからの自分にとって重要なシーズンだったなと思います」と振り返った。

課題と成長。それを象徴する大会が21年11月にポーランドで行われたチャレンジャーシリーズ(CS)ワルシャワ杯だった。大会前の好調を維持したまま現地入りすると、ショートプログラム(SP)で自身初の90点台をたたき出して2位に。演技後にはガッツポーズも飛び出した。一方フリーは4回転サルコージャンプの転倒などミスが重なり総合5位に終わった。

「SPは自信と今までにない高揚感でできたが、フリーでは冒頭で失敗し動揺してしまって。調子がいいときに失敗したときの気持ちの持ち方とか、あと一歩自分の演技ができないところが要因だと思うので、オフシーズンの間に自信をつけて本番に出す力を備えていきたいと思います」

少ない経験から見えた課題は明確だった。

「ブルーム・オン・アイス」オープンニングで笑顔を見せる

オリンピック代表争いの全日本は素晴らしい経験

北京オリンピック日本代表最終選考会を兼ねた21年12月の全日本選手権も貴重な場となった。4年前の平昌オリンピックシーズンはけがで欠場。戦いの舞台にすら立てなかった。今回は初めてその舞台を踏み、観客約2万人を収容するさいたまスーパーアリーナで滑り切った。「人生の中で考えたら素晴らしい経験」と語った。

とくにジュニア時代から競い合ってきた同学年の三宅星南(関西大学)の飛躍には刺激を受けた。全日本選手権で6位に入ると、その勢いのまま22年2月の四大陸選手権4位と健闘した。「星南くんはすごく努力してきたんだという目に見える練習内容、試合結果だった。自分は自分のやり方で星南くんの闘志を見習いたいなと思いました」

オリンピックは同門の活躍に感動

2月の北京オリンピックは「自分が演技するより疲れてしまった」と言うほど高揚した。鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大学)が銀メダル、宇野昌磨(トヨタ自動車)が銅メダルを獲得、羽生結弦選手(ANA)が前人未到の4回転半ジャンプに挑み国際スケート連盟(ISU)公認の大会で初めて認定された。

「いまのレベルの高さを痛感しました。その中で日本選手がメダルを取って4回転半に挑戦して。この試合はずっと記憶に残ると思います」

同門では宇野に加え、デニス・バシリエフス(ラトビア)も13位と健闘した。「チームメイトの活躍にすごく感動しました。チーム・シャンベリーが輝いてところを見るともどかしい気持ちになり、自分もこの舞台で戦いたいと思いました」と目を輝かせる。

続く4月の世界選手権でも宇野が自身初の金メダルを獲得。「(ランビエル・コーチが)昌磨くんが優勝した時にすごく喜んでいました。自分は見ていて、本当に先輩みたいになりたいな、かっこよかったなというのがすごくあって。次は僕の番だな、もっと頑張らないといけないなと強く感じたので、また一緒に頑張っていきたいです」と力強く語った。

指先まで繊細に表現する

羽生結弦のジャンプを参考に

オフシーズンはジャンプの安定、体の強化に重点を置いて取り組んでいる。4回転ルッツにも挑戦する予定だ。観客が入るアイスショーで4回転を跳ぶなど試合に近い環境でプログラムをこなすことで経験値を積む。

トレーナーには股関節や足首まわりを強化するメニューをつくってもらった。176cmの高身長のため体幹も重要で地道に鍛えている。

「長身でもジャンプがうまい選手はたくさんいます。一番参考になるのは羽生選手。正しいテクニックで跳び、細い軸で安定感があり、見習う部分しかありません。他にネイサン・チェン(アメリカ)の4回転ルッツは大好きで自分の中でイメージしやすいです。2人のジャンプを交互に見て自分の中に取り入れるようにしています」

ステファン・コーチとは自分の意見をきちんと伝えて話し合いができる関係性を築けている。最近は思考も似てきたといい、「僕はこう思うというそぶりを見せると、ステンファンもそう思っていたよというのがすごく多くなってきました」とほほえむ。

ランビエル・コーチとのコミュニケーションは年々密になっていく

大学は羽生も学んだ人間科学部eスクールに在籍している。「学びを継続すること、スケート以外に集中するところも必要だと思っています。授業の課題はスケートに支障がないように進めています」。オンライン講義では自分の感想を書き込むスペースがあり意見交換が行われる。社会人の学生もおり、アスリートとは違った視点を得られるという。

大学のアイスショー「WASEDA ON ICE」(3月12日開催)にも出演し学生同士の交流も楽しんでいる。

壁が多ければ多いほど達成感がある

来シーズンのSPはジェフリー・バトルさんに選曲と振り付けをお願いする予定だ。フリーは「City Memories(チャーリー・チャップリン)」を継続する。自分の中でまだ挑戦したい気持ちがあり、ステファン・コーチも継続を勧めてくれた。アップグレードしたプログラムで見せる。

羽生、宇野、鍵山を中心に群雄割拠の日本男子。勝ち抜くのは容易なことではない。「高みを目指すためには乗り越えないといけない壁がたくさんあるんですけど、その壁が多ければ多いほど達成感があって、その中で戦えていることが世界に通用するということになってくると思います。まずは日本国内でもっと上に行けるようにしたいです」と4年後を見据える。

宇野昌磨や三宅星南の活躍を見て静かに闘志を燃やす

「『もっとできるだろ、自分』という思いが毎回積み重なって毎日過ごしているので少しずつ払拭していければと思います。自分の力を発揮することを第一の目標において、ワルシャワ杯SPのような演技をフリーでもそろえて、全日本の舞台でやることが目標です」

同門の先輩や同学年のライバルの躍進にメラメラと闘志は燃えている。新しいシーズンがまもなくやってくる。

さあ、次は島田高志郎の番だ。

【写真】りくりゅうペア、島田高志郎ら「ブルーム・オン・アイス」で華麗に舞う

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