フィギュアスケート

「いつか選手の振り付けをしてみたい」花開く表現の才能 明大・本田真凜(下)

いつか選手の振り付けをしてみたいと語る本田真凜(撮影・北村玲奈)

2020年の全日本フィギュアスケート選手権後、「スケートから離れたい」と周囲にこぼすまで思い詰めていた明治大学の本田真凜(JAL)。家族や現役選手たちに支えられて競技を継続しました。最近はテレビのスポーツ番組のMCを務めるなど新しいことに挑戦しています。20歳の学生アスリートはどんな生活を送っているのか。これからのスケート人生の目標とは。4years.の独占インタビュー後編です。

【前編】「スケートから離れたい」どん底から戻ってきた20歳の現在地 明大・本田真凜

大学のゼミやテレビ出演

本田は明治大学政治経済学部3年生。コロナ禍でオンライン講義が続いていたが4月から対面講義も始まった。「まだ友だちが一人もいなくて、なんか新入生みたいな感じ」と笑う。ゼミではレポートや発表など慌ただしい毎日を過ごす。

競技にも生かせる講義で特に印象に残っているのは毎日の食事を記録していく運動学演習。料理が得意で昔から栄養に興味があった本田でも日々の記録は大変だった。「自分が1日に何を食べているかあまり考えることがなかったので、甘い物を食べ過ぎとか記録することで意識できるようになりました」。ほかにメンタルトレーニングの講義も参考になったという。

オフシーズンはスケート以外で新しい挑戦もあった。テレビのバラエティ番組に妹の望結(みゆ)、紗来(さら)と出演したり、生放送のスポーツ番組でマンスリーキャスターとして初のMCを務めたり。

「他のスポーツのことを全然知らなかったので、その週に放送するスポーツについて調べて勉強しました」。番組内でアスリートにインタビューする機会もあり、同じ2001年生まれでプロ野球・千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手を取材した。

最近はテレビ出演も増えている(撮影・北村玲奈)

振り付けで類いまれな才能発揮

シーズン開幕に向けて新しいプログラムも仕上がった。今季のフリーはミュージカル「ムーラン・ルージュ」。振り付けは宮本賢二さんが担当した。小学生以来の日本人の振付師で、「全部日本語で振り付けが進むのが新鮮な感じでした」と声を弾ませる。

どんな振り付けもすぐに吸収し表現できる本田。その“得意技”が炸裂し、振付師をうならせた。「賢二先生が作ってきてくれた振り付けをすぐにできてしまって、『1回でできるのなんでなん?』と言われていました (笑)。それに賢ニ先生が困っていて慌てて次の振り付けを考えてくださるという流れが面白かったです。いつか賢ニ先生に振り付けしていただいたプログラムを滑ってみたいと夢見ていたのでうれしかったですし、本当にとても楽しい振り付け期間でした」

見どころは終盤のステップ。映画の様々なストーリーを組み合わせているという。

19年全日本選手権女子SPの演技後、両手を合わせる本田真凜(撮影・遠藤啓生)

自ら振り付けに挑戦したことがあり、今年2月の「プリンスアイスワールド」で披露した「far away」は編曲や振り付けを自分で考えた。「公演の3日前まで納得のいく振り付けが思い浮かばなくて、でもいざやるってなったらばーっと思い浮かんできました」と明かす。

コロナ禍で映画を見たり、音楽を聴いたりする機会が増え、振り付けのアイデアが生まれるようになった。スケーターから振り付けを頼まれることもあるそうで、「やってみたいなと思います。でも全然、没にしてくれてもいいよって感じで」とおどける。

表現の才能とともに目を見張るのがアドリブ力だ。

アイスショーでは友人がいる観客席の方にコースを変えたり、メディアが入る日はカメラに向けて演技したりする。「本番で自分の世界に入ったときに毎回違う感じで気分を乗せられるのは特技かもしれないです」

プリンスアイスワールドの魅力

ノービス時代から国内外のアイスショーに出演してきた本田。16年から継続して出演しているのが「プリンスアイスワールド」だ。

「ジュニアの頃、プリンスに出たときにアイスショーってめっちゃ面白いと感じて。試合でも見に来てくれている人が楽しかった、感動したと思ってほしいなと考えて滑っていました。それを全部発揮できるのがアイスショーだと思います」と魅力を語る。

プリンスアイスワールドは観客との距離感が近く、会場で撮影できるフォトセッションの時間があり、コロナ禍の前は選手にプレゼントを渡したり、話しかけたりできる「ふれあいタイム」もあった。

「お客さまの歓声も聞こえるし、表情もわかるのですごく好きなアイスショーです。いろんな大変なことがあっても自分がどんな状態でも変わらず来てくれる人がいるので、一気に心が復活するアイスショーでもあります」

22年プリンスアイスワールド横浜公演で観客に笑顔を見せる(撮影・浅野有美)

7月15日から東京都西東京市のダイドードリンコアイスアリーナで始まる東京公演に本田もゲストスケーターとして出演する。「たぶん新しいプログラムを滑ると思うので楽しんでいただけたらうれしいなと思います」とアピールする。4日間全8公演で、妹の望結や22年北京オリンピック銅メダルの宇野昌磨(トヨタ自動車)、銀メダルの鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大学)らも参加する。

スケーター・本田真凜のこれから

学生スケーターは大学卒業と同時に引退する選手も多い。18年間スケートを続けてきた本田もセカンドキャリアを意識しているのだろうか。

「大学卒業ともに現役を終えるというのが一般的ですが、そこから先も続けるとなったとしても、終わりというのは何十年も先にあるわけではないので、お客さんの前で演技できる機会というのを一つずつ大切に滑れたらいいなと思います」

14歳で世界ジュニア選手権を制し、天才少女と呼ばれた頃から約6年が過ぎた。シニアの波にのまれ苦しみ、一時スケートと距離を置きたくなるほどのどん底も味わった。少しずつ大人になり、「自分をどういう風にコントロールしないといけないか自分と向き合えた」と話す。本音で語れることも増えた。

「毎日調子が落ちないように維持することもそうですし、自分でもう1回見返したくなるような演技ができるように、スケート選手として現役を終えたときによかったなと思える試合を増やせるように頑張れたらいいなと思います」

最後に色紙にメッセージを書いてもらった。綴られた言葉は「キラキラハッピー!!!!」

その言葉のように未来の本田真凜が幸せな気持ちで輝いていますように。

色紙に綴ったメッセージは「キラキラハッピー!!!!」(撮影・北村玲奈)
【動画】スケーターが目の前に VR映像で楽しむ「プリンスアイスワールド」
【写真】宇野昌磨、鍵山優真、本田真凜ら「プリンスアイスワールド」で観客を魅了
兄・本田太一さん 17年間のスケート人生にピリオド 就活で発揮した体育会の強み

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