フィギュアスケート

特集:駆け抜けた4years.2022

甲南大学・三原舞依、涙の全日本を超えて 感謝と幸せを胸に新シーズンへ

21年全日本選手権SPはノーミスの演技で小さくガッツポース(撮影・朝日新聞社)

フィギュアスケート女子で2022年四大陸選手権優勝、甲南大学4年の三原舞依(シスメックス、芦屋)が激動の今シーズンを振り返り、4years.に寄稿してくれました。悔し涙に暮れた全日本選手権、ファンの応援に支えられた四大陸選手権。三原自身の言葉で届けます。

力強いスケートができるようになりたい

今シーズンを振り返ってみると、春シーズンのアイスショー、夏の強化合宿、げんさんサマーカップから始まりました。

オリンピックシーズンは、新しいショートプログラム(SP)の「I Dreamed A Dream」と、継続のフリー「Fairy Of The Forest」「Galaxy」で迎えることになりました。エレメンツもスケーティングの滑りも「昨シーズンよりもっとレベルアップさせて、さらに体力もつけて力強くスケートができるようになりたい」。そう思って1つ1つ目の前のことから小さな目標を立てていきました。

新シーズンが始まり、グランプリ(GP)シリーズのエントリーが出た時、リストの中に名前がアップされているのを見つけてすごく嬉(うれ)しかったことを覚えています。初戦となった昨年8月のげんさんサマーカップでは、収穫とともに様々な課題を見つけることができ、9月のGPシリーズNHK杯の選考会ではミスなく滑り切りベストを出し切ったのですが一歩及ばず。悔しく悩んだ時期もありました。

その後、昨年はコロナ禍で行くことができなかった海外での試合のアナウンスがアップされ始めた頃、これから世界で戦って行くためには、まだまだ足りないところをもっと磨いて練習を積んで、強化していくトレーニングをしていかないといけないと考え、メニューを組み立てていきました。

透明感のあるスケーティングが見ている人の心をつかむ(撮影・朝日新聞)

まだまだできる、強くなった思い

10月から国際試合が始まり、アジアンオープントロフィー、GPシリーズ・スケートカナダからイタリア大会の連戦。試合が始まっていくと、日にちが経つのが本当にあっという間で、試合期間、隔離期間合わせて1カ月半ぶりに自宅に帰りました。

プログラムの滑りも点数も試合ごとにレベルアップして更新することができ、達成感もありました。それとともにまだまだできる、もっと磨いていくという思いも強くありました。

コロナ対策として無観客での試合が多かった中、観客の皆様がいてくださる試合に参加できることが本当に嬉しくてワクワクしていました。応援してくださる方々が作ってくださったとっても素敵なバナーやリンクに掲げてくださった「welcome back Mai」のバナー、お手紙やプレゼント、お花、そして素敵な絵。全てが私の宝物で心から嬉しくて本当に感謝の思いでいっぱいです。

「ノーミス」記録の更新を目標に

スケートを観るのも好きで、他の選手たちが出ている試合を観ると、やっぱり世界はすごい……と感じていました。そこで戦って行くためには、まだまだ練習をと思い年末の全日本に向けて、そして自分の目標に向けての日々を過ごしました。気がつくと季節も真冬に変わり、試合前のラストスパートという時期の練習。ほぼ毎日携帯につけていた両プログラムのノーミス記録を更新して行くことが、当時の小さな毎日の目標でした。

グレアム充子先生から昨シーズンにいただいたノーミスハンコと手帳があったのですが、手帳が今年の3月までだったので、それ以降は携帯につけるようにしていました(笑)。

四大陸選手権は5年ぶり2度目の優勝(本人提供)

涙が止まらなかった全日本

オリンピックの最終選考となる全日本では、今までの練習を出し切るという目標を立てて、現地入りをしました。公式練習の時、ホテルとリンク間を歩く数十メートルでさえ緊張感がある中、様々なことを考えて試合に臨みました。

結果は4位。悔しさが大きく、フリー後は数時間も涙が止まりませんでした。正直、全日本後はほとんど頭が働かずアスリートチェックを終えて自宅に帰宅し、ふと気づくともう大晦日でした。年末年始は家族、親戚、友達と過ごして2022年を迎えました。サポートしてくださる周りの方々やファンの皆様の応援、お声がけ、お手紙、メッセージブック、「好きなところ100」、今までにいただいた全ての愛が私の心の支えでした。

2月に開催される四大陸選手権の派遣をいただくことができ、日本代表としてしっかり滑り切って1番高いところに立って帰ってくるとプレッシャーを自分でかけて、出発までの2週間は集中して落ち着いた練習ができました。

涙を堪(こら)えるほどの緊張

四大陸選手権の開催地、エストニアに行くと真っ白な雪景色がとても素敵でした。私の命綱とも言えるカイロとともにスノーブーツが大正解なくらい雪が積もっていました。出発前に母校の甲南大学の方からいただいた公式キャラクターの「なんぼーくん」のティッシュケースと一緒にリンクに行きました。試合前、所属させていただいているシスメックスの社員の皆様より応援メッセージをいただき、また神戸クラブのとってもかわいい子たちからお手紙ももらって、「ああ、なんて私は幸せ者なんだろう」とお部屋の中で幸せに浸りました。

いざ当日リンクに立って、演技の直前になると、涙を堪(こら)えるほど予想以上に緊張がすごく、自分を落ち着かせるのが大変でした。でもいつものように先生が温かい手で背中を押して喝(かつ)を入れてくださり、観客の皆様がバナーを振って声援を送ってくださったおかげで、思い切って滑ることができました。点数が出た瞬間、自分でも驚くほどに堪えていた涙がばーーっと流れてきました。素敵な街に日本の国歌を流していただくことができ、とても嬉しかったです。

四大陸選手権の帰国便でサプライズのお祝いをしてもらった(本人提供)

目の前の小さな目標を一つずつ

たくさんの方々の応援や支え、サポートがあるからこそ今も私が生きることができていて、こうしてスケートを続けてこられ、大学を卒業することができました。

様々な苦しいこと、悔しいこともたくさんありますが、こうして今を過ごすことができる幸せを、嬉しさを感じることが、最近は特に多いです。

今できることの精度を上げてより良いものに磨き続けることを大前提として、今の時点で足りていない、かつ強化したいところであるお客様を引き込む多様な表現力やジャンプ時の瞬発力、さらに高難度ジャンプに耐えうる筋力、体力も少しずつ身につけていけるように、これからトレーニングをしていきたいです。

アスリートの中でも「トップ」がつくアスリートになるためには、人よりも倍以上の積み重ねが大切で、大きな目標のためにはまず目の前の小さな目標を一つずつクリアしていくことを大切に、自分に厳しく、”今この時”を何より楽しんで、感謝の思いと幸せを感じながら生きていきたいと思います。

また、私1人の目線からではなくて他の方々から見た自分の客観的な視点からも物事を考えられるような柔軟性のある人になりたいと思っています。

甲南大学の卒業式。功績を称えられ学長表彰を受けた(本人提供)

大学院進学、これからの私

これまでの色々な経験や学び、多くの知識を今後のフィギュアスケート人生に、そしてその先の人生にも生かしていきたいと考えています。

4月からは甲南大学大学院に進学し、学びとともに両立して、世界のトップで戦っていけるスケーターになれるように、全てのありがたみを感じながら人として、またフィギュアスケーターとして、社会に少しでも貢献していけるように、こつこつ1日、1カ月、1年……と、積み重ねていきたいと思います。

スケートができることにも喜びと感謝の思いをしっかり持って思い切って頑張ります。日本代表として出られるように、毎日悔いなく小さなことから1つ1つ、全部を大切にしていきたいと思っています。

1日終えたときや試合や何かの出来事を終えたときに、後悔のないように、最高の笑顔でいられるように、いつもベストを尽くすことを強く思いながら日々過ごしていきます。

応援してくださる皆様へ、感謝の思いを届けられるような、そして少しでも元気に、笑顔になっていただける演技ができるスケーターを目指し、これからも精進して参ります。

いつも本当にありがとうございます。

三原舞依

 

甲南大学・三原舞依、氷上に戻ってきた妖精「今季はもっと力強い演技を」

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