フィギュアスケート

甲南大学・三原舞依、氷上に戻ってきた妖精「今季はもっと力強い演技を」

昨季は体調不良から復帰。観客の温かい応援に支えられた(撮影・浅野有美)

リンクで舞うだけで見ている人たちが幸せな気持ちになる。そんな魔法をかけてくれるのが甲南大学経営学部4年の三原舞依(21、シスメックス)だ。昨季の近畿選手権では体調不良から約1年7カ月ぶりの競技復帰を果たし、全日本選手権で5位に入った。すでに卒業論文を提出し、北京オリンピックシーズンへの準備を整えた。8月に大会を迎える三原に学生生活や今季の目標を聞いた。

競技復帰に「ありがとう」の声

三原は神戸市出身、2010年バンクーバーオリンピック銀メダルの浅田真央さんに憧れてスケートを始めた。透明感のある優しい滑りで観客の心を動かす。関節が痛む難病「若年性特発性関節炎」と闘いながら世界の舞台で活躍している。2017年四大陸選手権優勝、2017世界選手権5位など結果を残してきたが、2019-20年シーズンは体調不良で試合を欠場。昨年10月の近畿選手権で競技会復帰し、全日本選手権では大会に戻ってきた喜びをいっぱいに表現した。

「いろんな方から復帰してくれてありがとうと言っていただいたり、クラブのチームから帰ってきてくれてありがとうという言葉をいただけたり、戻ってくることができたと実感できるシーズンでした」。コロナ禍で無観客試合もあったが、グランプリ(GP)シリーズNHK杯や全日本選手権は観客を入れて開催された。「お客様の温かさを全身で感じて、本当にうれしかったです」と振り返った。

神戸から世界を目指す

スケートを始めたときから神戸を拠点にしている三原。大学も地元の甲南大学に通う。「地元で育ってきたので、そこで4年間しっかり学びつつ、神戸からスケートを頑張っていきたいと思っていました。いま4回生になり、あっという間でさみしい思いです。たくさんお世話になった大学です」

フィギュアスケート部員として2019年にはユニバーシアード冬季大会に出場し、女子では2009年の中野友加里さん以来、5大会ぶりの優勝を飾った。「Konan University」と会場でアナウンスされ、大学代表、日本代表としての喜びをかみしめた。部員は数人だが、「新しく大学のジャージを作ってもらってインカレやユニバーシアードに出られていい経験になりました」と感謝する。

おちゃめな表情でポーズをとってくれた(撮影・浅野有美)

大学ではマーケティングや組織論、ベンチャービジネスなど経営学全般を学んだ。「リンクのフェンスに張ってある広告や企業の経営に関すること、ビジネスのサイクルだけでなく、人と人との関わりの中で人をどうマネジメントするか、会社の表だけでなく、奥にあるものを深く学ぶことができました。これから生きていく人生にいきてくると思います」。スケートとの共通項も見つけ、「人にどう伝えるかというのもスケートには大切なこと。表現していく上でちょっとでも生かせたらいいなと思っています」と話す。

先行研究を参考にアスリートとしての経験も踏まえて経営をテーマにした卒業論文を執筆。新型コロナウイルス感染拡大のため自宅で過ごす時間ができ、3回生のうちからコツコツ書き溜め、7月に提出を済ませた。

やっと出合えた曲「レ・ミゼラブル」

卒業論文も落ち着き、これからは北京オリンピックに向けて競技に集中する。プログラムも完成し、ショートプログラム(SP)はデビット・ウィルソンさん振り付けの「I DREAMED A DREAM 〜レ・ミゼラブルより」を選んだ。「すごくすごくすっごく悩んで、悩みに悩み抜いて。やっと出合った曲でした。決まったときは振り付け前から盛り上がってしまって、すごく思いの詰まったプログラムになりました」

映画「レ・ミゼラブル」も鑑賞し、演技へのインスピレーションも得た。「悲しくもがき苦しむ部分を演じます。主人公ファンティーヌさんの心の奥から思う表現をしっかりして、演技に引き込んでいけたら」。壮絶な時代を強く生き抜いたファンティーヌの姿を、いくつもの困難を乗り越え、前に進んできた三原のスケート人生に重ねながら演じる。

7月の「ドリーム・オン・アイス」で新SPを披露。「レ・ミゼラブル」のファンティーヌを演じた(朝日新聞社撮影)

フリーは昨季のローリー・ニコルさん振り付けの「フェアリー・オブ・ザ・フォレスト&ギャラクシー」を継続する。「もっともっと磨いていきたい、もっとフェアリー(妖精)になれるんじゃないかと思っています。ショートもフリーも全体を通してパワーのある力強い演技をしたいです。なめらかな滑りをしっかり追求しつつ、その中に強さもあるという滑りができたらいいなと思っています」と進化を誓う。

8月9日から始まる「げんさんサマーカップ」に出場予定。10月の近畿選手権、11月のGPシリーズ中国杯と、オリンピック代表選考がかかる12月の全日本選手権に向けて調子を上げていく。「4年に1度の目指している舞台で楽しみではあるのですが、代表の3枠に入るという思いで練習を積んでいきたいです。結果は後からついてくると思うので、あまり深く考えすぎず自分のできることをしっかり確実にやりたいと思います」

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