フィギュアスケート

神戸大学・壷井達也が目指す「文武融合」 来季シニア参戦へ土台づくりのシーズン

壷井達也は神戸大学に進学、文武両道を目指す(すべて撮影・浅野有美)

フィギュアスケートと勉学を高いレベルで両立を目指す選手がいる。この春、神戸大学国際人間科学部発達コミュニティ学科に進学した壷井達也(18、中京大中京)だ。7月初旬、約7カ月ぶりの実戦だった「名古屋市スケート競技会みなとアクルス杯」男子ジュニアで優勝。フリーでは4回転ジャンプにも挑戦した。文武両道への意欲、今後の目標について語った。

受験を終え約7カ月ぶり実戦

壷井は愛知県岡崎市出身、「たっちゃん」の愛称で慕われる。優れたスケーティング技術を生かし流れの中で跳ぶジャンプが持ち味。2大会連続オリンピック代表の鈴木明子さんらを輩出した名古屋市の邦和スポーツランドに所属し、中学3年で全国中学校大会を制した。中京大中京高校では中京大学のリンクも拠点にしながら2018年全日本ジュニア選手権優勝、2019年世界ジュニア選手権に出場した。

2020年11月の全日本ジュニア選手権後は受験勉強にシフト。「理系クラスで周りも勉強していたので特別なことではなかった」という。氷上から一時離れ、冬は大学入学共通テストや二次試験対策のため猛勉強。2月中旬、晴れて学部のスポーツ科学受験で合格した。

練習再開は2月末。「筋力も感覚も落ちていて滑るのがやっとの状態から始めました。一度休むと勢いで練習できて、トリプルアクセルは2カ月くらいで戻りました。4回転サルコージャンプは昨季から練習でできていたので感覚があり、5月には跳べるようになりました」。その後は一時調子を落としたが、7月の試合に向けて調整した。

みなとアクルス杯フリーでは4回転サルコージャンプに挑戦。直前の6分間練習では着氷、本番は回転不足で転倒したが収穫はあった。「試合となると練習どおりにうまくいかない部分も多くありました。練習で調子の波をなくし、試合で成功するようにしたいと思います」

スポーツ科学を学びたい

練習環境で言えば構内にリンクがある地元の中京大学や関西大学があるが、壷井が選んだのは競技を続けながらスポーツ科学が学べる国立大だった。「数学と物理が好きで、スポーツの分野にどうやったら生かせるかと考えていました。神戸大学国際人間科学部は運動生理学やバイオメカニクスといった理系科目以外にも、スポーツマネジメントやスポーツの歴史など文系科目も学べるため、幅広く勉強できると思いました」

グローバル社会で活躍する文理融合型の人材養成を掲げる同学部。データサイエンスの基礎を身につける「数理・データサイエンス標準カリキュラムコース」も受講でき、壷井はデータ解析やAI(人工知能)の講義に興味がある。いまは教養科目が中心だが、秋以降はスポーツ分野の講義が始まるため楽しみだという。

今季初戦のみなとアクルス杯で4回転サルコーに挑戦した

拠点に関して夏は通年型リンクのひょうご西宮アイスアリーナ(兵庫県西宮市)、冬はポートアイランドスポーツセンター(神戸市)と尼崎スポーツの森(兵庫県尼崎市)を併用する予定だ。2018年平昌オリンピック6位の坂本花織や 2017年四大陸選手権優勝の三原舞依(いずれもシスメックス)を指導する中野園子コーチに師事し、技術を高める。

スポーツの中に勉強がある

最近の文武両道のフィギュアスケーターといえば、全日本選手権に連続出場し、北海道大学工学部卒業、同大学大学院工学院を修了した鈴木潤さん(2020年3月現役引退)がいる。「授業が大変な中、スケートも高いレベルで保っていて、自分も可能性があるのであれば文武両道の道を目指したいと思っています」と先輩の背中を追いかける。

周りからも「文武両道」で注目されるが、壷井自身は少し違ったイメージで捉えている。「文武両道というと勉強とスポーツが分かれているように感じますが、自分は勉強をスケートのためにやっている、スケートの枠の中に勉強が入っている感覚が強いです。勉強とスポーツの融合で、スケートに生かせる勉強をしていきたいです」。ジャンプを映像で解析し、選手の競技力向上に役立てていきたいと考えている。

4回転成功の鍵は

みなとアクルス杯では試合で初めて4回転ジャンプを入れた。1本入れるだけでも体力と集中力を激しく消耗する。「試合で2,3本跳ぶとなると、いかに少ないエネルギーで1本の4回転を跳べるかが課題です」と語る。

一方でけが防止にも気を遣う。4回転ジャンプを武器に持ち、21年世界選手権銀メダルの鍵山優真(星槎国際高横浜3年)や19年ジュニア・グランプリ(GP)ファイナル覇者の佐藤駿(埼玉栄高校3年、フジ・コーポレーション)の活躍に焦り、それがけがにつながった。2019-20年シーズンはトリプルアクセル(3回転半)の練習で右足首を痛め、全日本選手権棄権など満足いくシーズンを送れなかった。「医師からジャンプの着地を足首でコントロールしていると言われ、それ以降はおしりの筋肉や体幹を使って足首に負担がいかないようにトレーニングしています」。ジャンプに対する意識を変え、筋力や体幹を鍛える陸上トレーニングを強化、その効果も感じている。

4回転ジャンプ成功への意気込みを語った

来季のシニアに向けレベルアップ

北京オリンピックを控える今季、壷井はシニアに上がれる年齢ではあるがジュニアで戦う。「シニアになるとショートプログラム(SP)に4回転を入れないと戦えません。まずはこの1年、フリーで安定して4回転を入れられるように土台をつくりたいと思います」。来季シニアで戦う力をつけるレベルアップの年になる。

今季のSPはまだ検討中だが、フリーはラフマニノフ作曲の「前奏曲より」を継続する。「あまり滑り込めていなかったので、もっとプログラムの完成度を高めていきたいと思っています」。全日本ジュニア選手権、全日本選手権に向けては10月の 近畿選手権がスタートになる。「フリーで必ず4回転をおりたいです。体力的な部分を改善して自己ベストが出せるようにしたいと思っています」

大学の学問も競技に生かしていく「文武融合」の体現へ、壷井が成長を加速させる。

【動画】壷井達也「スケートの枠の中に勉強がある」

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