フィギュアスケート

特集:フィギュアスケート×ギフティング

新田谷凜、中京大卒業後の成長「続けてよかったねと言われる演技を」

中京大の仲間たちと練習に励む新田谷凜(すべて中京大学スケート部提供)

フィギュアスケートの2021~22年シーズンが始まった。大学卒業と同時に引退する選手が多い中、卒業後も成長を続けているのが中京大学スポーツ科学部出身の新田谷(にたや)凜(23、愛知みずほ大学瑞穂)だ。「まだ自分は頑張れるうちは頑張りたい」。大学卒業を控えた2020年2月、東京で開かれたエキシビション「明治×法政 ON ICE」にゲスト出演した新田谷は現役続行を宣言。会場が歓喜に沸いた。あれから約1年、20年12月全日本選手権ショートプログラム(SP)では自己ベスト更新し5位、総合10位に入り日本スケート連盟の強化選手にも選ばれている。7月2日から地元・愛知県で開催される「名古屋市スケート競技会 みなとアクルス杯」で今シーズン初戦を迎えた。高みを目指す新田谷に競技へのモチベーション、今後の目標について聞いた。(※競技引退に伴いギフティング受付を終了しました)

――20年3月の現役続行宣言には驚きました。

新田谷 大学4年の2019年-20年シーズン始めには引退を考えていました。最後と決めていた全日本選手権で自己最高位の7位に入り、スケート人生の課題でもあったSPとフリーをそろえることができました。やりきったという気持ちで、これで引退でいいかなと思いました。ですが直後に右足を骨折し、最後のインカレにも出られませんでした。考える時間ができて、まだできると思ったのと、自分ができると思っている間はスケートを続けたいなと思いました。家族も後押ししてくれました。

――大学を卒業して練習環境は変わりましたか。

新田谷 大学の授業がなくなり、練習が好きな時間にできるようになりました。空いた時間は飲食店でアルバイトも始め、オフシーズンには週4、5日入っていました。

――20-21年はどんなシーズンでしたか。

新田谷 続けていなかったらできなかった経験ができました。一番大きいのは全日本選手権SPでパーソナルベストを更新し、フリーの最終グループに残れたことです。続けてよかったなと思えるシーズンにするのが目標だったので、それは達成できたかなと思います。

――印象に残る演技でした。目標を達成できた理由は何でしょうか。

新田谷 プログラムの演技構成は前シーズンとほぼ同じだったのですが、ジャンプの質をよくすることを目標にやってきました。初めてシニア強化合宿に参加でき、そこで連盟のジャッジ(審判)の方にプログラムを見てもらえる機会がありました。ジャンプの構えの長さを指摘され、そのおかげでプログラム全体の流れが改善され、演技構成点が上がったと思います。

――どのように改善していったのですか。

新田谷 ジャンプの構えが長いことは自分でも自覚していたのですが、何年も跳んできたタイミングを変えるのはすごく難しかったです。少しでも点数につながればと思い、指摘を受けた直後から構えを短くし、ステップの流れから意識して変えていきました。全日本までには自分でこれだというくらいのジャンプに修正できました。

――素晴らしい修正力ですね。大学時代について聞かせてください。2017年、大学1年で出場したユニバーシアード冬季大会では銀メダルも獲得しています。21年世界選手権銀メダルのエリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)にも勝ったんですね。

新田谷 ユニバーシアードは大学4年の全日本とともに印象に残っている大会です。メダルをとれるとは思っていませんでした。出るからには良い演技をしたいと思い、詰めて練習していました。思った以上点数が出てメダルをもらえました。それがすごいという実感がなかったです。その時は大会の大きさをわかってなかったですね。

――ユニバーシアードに限らず世界のトップ選手と戦ってきています。その経験はどういきていますか。

新田谷 全日本は何回も出場していますし、ジュニアグランプリシリーズにも派遣され、シニアのトップ選手と一緒の大会に出てきた経験があります。昨年はSPで紀平梨花選手(トヨタ自動車)の後に、フリーは宮原知子選手(木下グループ)の後に滑りましたが、これまでの経験があったので緊張感はなく普段どおりに臨めました。

強化合宿でアドバイスをもらい、ジャンプを修正した

――表彰台の目標もあるのですか。

新田谷 とにかくノーミスでそろえるのが一番の目標なので、順位はそれほど気にしたことがないですね。

――ノーミスを意識し始めたのはいつからですか?

新田谷 大学に入ってからです。練習への意識や練習の方法が変わりました。邦和スポーツランドで指導を受けていた時に先生から「練習でできてないことは試合ではできない」と教えていただいていたので、ノーミスでできるまで曲をかけ続ける練習をしていました。それによって体力もつきました。今はなるべく1回目の練習でノーミスでできるように、練習を試合だと意識してやっています。

――今年4月、羽生結弦(ANA)や宇野昌磨(トヨタ自動車)らトップ選手が集うアイスショー「スターズ・オン・アイス」に出演しましたね。

新田谷 一生出ることがないと思っていたくらいの大きなアイスショーで、スケート人生で一番楽しかったです。全日本でしか会わない選手とも一緒に練習できました。トップ選手を生で間近で見て、今までテレビで何回も見ているはずなのに、何回見ても感動するんだなと思いました。

――今シーズンのプログラムについて教えてください。

新田谷 プログラムは今シーズンも同じものを使います。特にSP「映画『レッドバイオリン』より」は3年目になるので、つなぎを足してジャンプの構成を上げています。演技後半に3回転ルッツ―3回転トーループの連続ジャンプを入れる予定です。

――演技後半に連続3回転を入れるのは初めてですか。

新田谷 冒頭ジャンプで失敗して後半に入れていたことはありました。昨年から後半に入れたかったのですが、ジャンプで加点をとれるようになったのでミスをしないことを優先していました。今シーズンは初戦から後半に入れていきたいです。

昨シーズンのプログラムを継続、磨きをかける

――プログラムの見どころを教えてください。

新田谷 SPについては後半の連続ジャンプと、ステップは細かい音を拾っているので見てほしいです。この曲といえば自分を連想してもらえる曲になればいいなと思います。フリーの「映画『ブラック・スワン』より」は、これまであまり使われてない曲調なので自分らしさが出せたらと思います。樋口美穂子先生には前半は曲調がゆっくりでもスピードを落とさないように言われています。

――スポーツギフティングサービス「Unlim」に登録しました。ファンからの支援金をどのように活用したいですか。

新田谷 本来だったら就職して自分のお金でやりくりしている年ですが、家族にも応援してもらって続けているので、自分で何かできることがあるならと思っています。ご支援をいただけたら靴代やレッスン代などスケートに関わる費用に使いたいと思っています。

――ファンの方にメッセージをお願いします。

新田谷 本当に続けてよかったね、となるべくたくさんの方に思ってもらえる演技をどの大会でもできるように中京大学を拠点に頑張っていきたいので応援よろしくお願いします。

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