フィギュアスケート

「自分の殻を破れるように」休学してフィギュアスケートに集中、中京大の山本草太

オリンピックに向け、日々やるべきことを考えて練習を積んでいる(撮影・朝日新聞社)

リンクで軽く流して滑るだけで周りの視線を集めてしまうスケーターがいる。中京大学の山本草太(愛知みずほ大瑞穂)だ。伸びやかで爽快感のあるスケーティングが魅力で、2015年世界ジュニア選手権3位など輝かしい成績を残した。その後、大きなけがから復帰し、シニアのトップで戦っている。先日の中部選手権で優勝、10月3日にさいたまスーパーアリーナである「ジャパンオープン」に出場予定だ。本格的なシーズン開幕に向けてどう過ごしてきたのかインタビューした。

休学してスケートを追求

山本は大阪府岸和田市出身、中学1年で名古屋市に拠点を移した。流れるようなスケーティングと質の高いジャンプを武器に、2014、15年ジュニアグランプリファイナル2年連続表彰台、15年世界ジュニア選手権銅メダル、16年ユースオリンピック金メダルなどジュニア時代から世界トップで活躍してきた。だが、16年3月に右足首を骨折して以降、手術やけがを乗り越えてきた苦労人でもある。18年4月に中京大学スポーツ科学部に入学した。

スポーツ選手が多く在籍する学部で、ほかの競技の選手から刺激を受けている。特にショートトラックの吉永一貴(名古屋経大市邨)と仲が良く、「吉永選手はストイック。そういう選手が周りにいるからこそ学べる」と言う。授業では野球やバスケ、水泳など他競技を経験することで、「こういう筋肉を使うんだと自分なりの学びもあり、気分転換にもなっています」と大学生活も満喫している様子だ。

3年生になった現在はスケートに専念するため休学し、オリンピック出場を目指している。「スケートも競技人生が限られているので2年間休学してスケートだけを追求していこうと思いました」。大阪の実家に戻り、大阪府立臨海スポーツセンターや関空アイスアリーナで練習、幼少期に師事した大西勝敬コーチの指導を受けている。週の半分は愛知県の中京大学アイスアリーナにも通う。

自粛期間中もランニング欠かさず

4月に休学してすぐ、新型コロナウイルスの影響でリンクが閉鎖。氷上練習ができなかった期間中は日課のランニングのほか、国際スケート連盟や日本スケート連盟が配信する陸上トレーニングの動画を参考にトレーニングしたり、縄跳びをしたりした。ランニングは20分間と決めていて、体力がきつくなる終盤で演技後半をイメージして走るようにしている。

氷上練習が再開されてからは新しいプログラムの準備に取りかかった。今シーズンのSPは「黒い瞳」、フリーはノービス時代に使った「ドラゴン/ブルース・リー物語」。いずれも宮本賢二氏が振り付けた。「今年のテーマの一つが華やかなスケート。SPはその華やかなイメージが出るように曲を編集してもらいました。宮本先生からは指先だけでも表現があるから、指先を広げて派手に見えるようにと指導してもらいました。一つひとつの所作を大切にして、最後のステップで盛り上げていければと思います」

フリーは来シーズンも見据えた選曲で、「世界観を感じてもらえるスケートをしたいと思っています。宮本先生にも『本当に変わったよね』と言ってもらえて。自分でも変化を少しずつ感じているので、多くの人にもそう言ってもらえるように練習していきたいです」と話す。

フィギュアスケート・ジャパンオープンで演技する山本草太=さいたまスーパーアリーナ
【写真】「ドラゴン」で変化した姿を、山本草太の演技

曲の流れの中で4回転を跳ぶ

昨年は左足甲のけがでジャンプの量をこなせなかったが、けがも完治して練習時間も増えた。とくにトーループとサルコーの2種類の4回転ジャンプは得点源になる。SPで2本、フリーで3本を入れる予定だ。

いまの課題を聞くと、プログラムの流れの中で跳ぶことだという。「ジャンプを単独で跳ぶのと違い、曲の流れで跳ぶときは他のことも意識しなければならず、大変さを身に染みて感じています。質のいい一つのパッケージとして、3回転と同じくらいの感覚で跳べるところまで持っていけるようにしたいです」。完成度を上げるため、曲をかけての練習を繰り返す。

世界トップ層に入るために

山本の最近の成績はNHK杯2年連続6位、全日本選手権7位で、世界トップ層に迫りつつある。昨シーズンから「自分の殻を破る」というテーマを掲げて上を目指していた。それでも「トップにいける練習ができていないのでは」と、不安に駆られるときがあるという。「たくさん考えて悩む時間も大切だけど、ひたすら行動に移していきたい。今シーズンは妥協せず、限界を求めていきたい。それができている感覚はあるが、まだまだ足りない。限界を越えられるように、自分の殻を破れるようになりたいです」

芯の強さこそ武器

ちょうど3年前の秋、平昌オリピックシーズンの中、右足首の骨折から3度の手術と約1年半の長期離脱をへて実戦復帰した。そのときはどこか自信なさげで、本人の前でオリンピックを口にできる雰囲気ではなかった。

そのシーズンは中部選手権からスタートし、1回転、2回転、3回転、コンビネーションと跳べるジャンプを試合ごとに増やしてきた。全日本選手権では「また戻ってこられた」と感謝の演技を届けた。翌シーズンにはジュニア時代から跳んでいた4回転ジャンプも取り戻した。ジャンプが跳べなかった期間に鍛錬したスケーティングやスピンにも磨きがかかっていた。

いまはトップで戦えるジャンプ構成を組み、演技全体の完成度を上げてきている。「僕は常にオリンピックが目標です。昨年は自分を奮い立たせている状態だったが、いまはオリンピックを頭の真ん中において、日々何をやらないといけないのかを考えています。足りないことばかりですが、そういう目標を置くことで自分の行動や言動が変わってきているという実感はあります。ジャンプや表現、メンタル面でも自信がついてきました」と力強く語る。

いよいよ本格的なオリンピックプレシーズンを迎える。山本には天性のスケーティング技術があるが、それ以上に目標に向かって一つ一つ困難を乗り越えていける芯の強さがある。その信念を持って努力を続けていけば目指す世界にたどりつくだろう。そんな期待をもって将来を見守りたい。

フィギュアスケート・山本草太からファンへのメッセージです

in Additionあわせて読みたい