大学ラクロス

茨城大女子ラクロス部、公募に応じてくれたヘッドコーチと歩む

主将の石井奈津美(左)と新ヘッドコーチの鳴澤眞寿美

JR水戸駅から車で20分ほどの場所にある国立の茨城大学。日曜日の昼下がり、正門をくぐり、校舎を抜けた先にあるグラウンドから大きなかけ声が聞こえてきた。女子ラクロス部だ。

ヘッドコーチ不在の窮地

女子の関東学生ラクロスは、59チームが1部から4部までにわかれて、リーグ戦で争う。茨城大は3部で奮闘している。部員は30人弱。ほかの大学と比べて部員数はかなり少ない。週に4日、学内のグラウンドで汗を流している。

彼女たちは昨シーズン終了後、ある難題に直面していた。ヘッドコーチが仕事の都合もあり、続けるのが難しくなっていたのだ。それまでも忙しい中、どうにかこうにか練習にきてもらっていた。そして、彼女たちも3部の下位からどうにか脱却したい、チームが強くなるために出来ることはないかと考えていた。何度もヘッドコーチと話しあった。そしてアドバイスをもらって出した結論が、新ヘッドコーチを公募すること。昨年11月にラクロス専門のウェブメディア『ラクロスプラス』に募集の記事を載せた。難航した。年をまたいでも見つからない。刻一刻と新チームが本格的に始動する4月が迫る。

今シーズンの主将になった石井奈津美(4年、水戸第二)は、こう振り返る。「昨シーズンの終了前から、ヘッドコーチを見つけるために動き始めてはいました。いろいろなところにアンテナを張ってはいたのですが、それでも見つからない。3月に入ると半ばあきらめの状態になって……。現実的には自分たちだけでチームをつくるということも考えてました」

チームを引っ張る石井(左から2人目)は、ディフェンスの要でもある

状況が一変したのは、3月の中旬だった。ひとりの女性が名乗りを上げてくれた。早稲田大女子ラクロス部の元主将で、2013年に21歳以下女子日本代表の副将としても活躍し、14年には女子日本代表候補にも選ばれた鳴澤眞寿美だ。

鳴澤はコーチ経験も豊富で、15年からは筑波大学大学院で「コーチング論」を学びながら、筑波大女子ラクロス部のヘッドコーチを務めていた。22歳以下ラクロス女子日本代表のアシスタントコーチも経験。アメリカとカナダの大学に研究留学して、女性のリーダーシップやコーチングについても学んでいた。ただ、17年秋からは彼女自身の仕事の関係もあり、ラクロスから離れていた。

「茨城にある、茨大だからこそ」と応募

鳴澤がヘッドコーチ募集を知ったのは、ほぼ偶然だった。3月上旬、SNSのタイムラインで、ラクロスプラスの記事「茨城大女子ラクロス部ヘッドコーチ募集」が目についた。同じ茨城県内にある筑波大でヘッドコーチをしていたこともあり、茨城大は以前から知った仲だ。ただ、この時期までヘッドコーチが見つかっていないとは知らなかった。ラクロスから離れてはいたが、鳴澤の心がざわめいた。「都内の大学が募集をしていても、おそらく私の心は動かなかったと思います」

鳴澤の実家は茨城にあり、何よりも筑波大でヘッドコーチをやったことで、人を含めた茨城のよさを再認識していた。地元に貢献したいという思いが強まったなかでの、この募集。以前、ヘッドコーチをつとめていた筑波大女子ラクロス部のOGにも相談した。すると「まっすーさんは、茨大でやってみるのもいいと思う」と背中を押された。鳴澤はすぐに応募した。

取材当日、鳴澤ヘッドコーチはまだ練習参加4日目だったが、すでに十分なじんでいた

はじめての顔合わせは3月23日。主将の石井を含めた3人が、鳴澤のもとを訪れた。鳴澤は彼女たちと会ったこの日に、改めてヘッドコーチを引き受けたいと思った。「想像していた学生像よりも、しっかりしてたんです。チームの悩みや私への質問も的確。何より人として魅力的でした」。そして3月31日。こんどは鳴澤が茨大を訪れ、部員の前でプレゼン。パワーポイントでつくった資料を持参する力の入れようだった。「私には情熱しかありませんから」と笑う鳴澤の言葉は、学生たちの心に響いた。

つい先日まで自分たちでどうにかしなくてはと悩んでいたが、一転、鳴澤がヘッドコーチになってくれることで自分たちが変われると思った。石井は言う。「自分たちよりすごく高いところにいる人がヘッドコーチになってくれる!! と、跳び上がるような気持ちでした。ラクロスの技術だけでなく、考え方や生き方も含めて学びたいと思えたんです」

目指すは茨大史上最高成績!!

まさに突如現れた救世主。茨大は、4月から鳴澤ヘッドコーチのもとで動き出した。鳴澤は平日は都内で仕事のため、グラウンドに来られるのは週末のみ。いまは前のヘッドコーチから引き継ぎを受けつつ、学生たちに何を教えられるかを普段から考えている。

コーチングを学んできた鳴澤が、まず何から手をつけるのかは気になるところ。「ラクロスの技術は、時間をかければうまくなります。なかなか変えらないのが考え方の部分です。茨大の学生たちは、自分たちになかなか厳しい。いいところがたくさんあるのに、みなその強みに目を向けないで、できないところを見ちゃうことが多いんです。そこを変えることからですね。彼女たちは素直に聞く力があるので、これから変われると感じています」

茨大の過去最高成績は3部での2位。鳴澤は力強く言う。「どんなことに対しても、私が関わったからにはいい結果に貢献したいです。目標は茨大史上最高の3部1位になること。2部との入れ替え戦のチャンスをつかむことを、まず目指したいです」。関東学生リーグは今年も8月に開幕予定だ。

鳴澤ヘッドコーチのもと、彼女たちがどのような進化をとげるのか。これからの茨大女子ラクロス部に注目したい。

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