愛にあふれた関学ラクロスにさよなら
全日本選手権準決勝の相手は社会人クラブチームMISTRAL。前半は思い通りのプレーをさせてもらえず、1-5で試合を折り返した。ハーフタイム、主将のMF長村由紀乃(4年、啓明学院)から「強気、強気、強気!」と檄(げき)が飛んだ。そこからチームがかみ合った。それでも、4-6で終わった。「私たちが目指してたのは、真の日本一。悔しいけど、後半は気持ちの入ったプレーができた」。MF杉本知佳(4年、鳴尾)は悔し涙をにじませながら、最後は仲間と笑った。
誰よりも努力し、誰よりも語り合った
杉本は誰よりも努力を重ねた。1回生のときはどこの部活にも入らず、充実感のない日々が続いた。高校の先輩の紹介でラクロスに出会い、2回生で入部。志は常に高く、オフの日や空いた時間は自主練習に費やした。「みんながライバルだから」と、ほかのメンバーが行く練習場所には行かず、一人きりで練習。低い壁を見つけ、グラウンドボールやパスなど基礎を固めた。チーム一の負けず嫌いである杉本の存在感は次第に増し、最終学年では副将を任された。
3回生のときを振り返ると、同期でスタメンだったのは杉本と南山知也子(4年、宝塚西)だけだった。その後、南山はディフェンスリーダーに就任した。3回生から戦ってきた杉本は、自分がチームの中で厳しい発言を求められる立場だと自覚していた。しかし、途中入部という負い目もあり、技術にも自信が持てなかった。「きら(杉本)の存在が必要」。同期がかけてくれたこの言葉が、胸に刺さった。「みんなに認められてうれしかった」。同期の言葉は自信に変わり、周囲への厳しさを貫く原動力になった。
杉本は相談相手として、メンバーと1対1で話す機会も多かった。「知佳はいろんな人と同じ目線で話すのが得意で、いろんな子のモチベーションを上げてました」と長村は言う。長村もまた、杉本に励まされた一人だった。4回生になる前やリーグ戦開幕前、長村は一人で落ち込むことが多かったが、杉本とは自然と話し込んだ。「みんながついていこうと思う主将やと思うで」。杉本がかけたこの言葉に、長村は救われた。「そう思ってくれる人のために頑張ろう」と、長村は自信を取り戻したという。
最後の試合を終えて杉本は言う。「この4年間は決してつらくなかったです。大変なときもあったけど、スポーツの厳しさや、忙しい生活が好きなんだと思います」。2、3回生のときは自分のことで精一杯だった。4回生になり、このチームが大好きだと強く実感した。「関学ラクロス部は一番愛があふれているチーム」。杉本は笑顔で、大好きな関学ラクロス部を引退した。