ラクロス

京大ラクロスが教えてくれたこと DF山本太一

京大守備陣の核を担ってきた山本(54番)は最後の試合に出られなかった

全日本選手権第2日

12月9日@大阪・ヤンマーフィールド長居
男子準決勝  FALCONS 15-7 京都大

京大の相手は全日本選手権10連覇中のFALCONS。絶対王者との決戦の舞台に、ディフェンスリーダーとして京大を支えてきた4回生の姿がなかった。

絶対王者を1点差で追う

DF山本太一(4年、明和)は11月17日の全日本大学選手権準決勝で負傷。長きにわたる京大の目標だった「学生日本一」をかけた決勝に、無理をして出た。ひざが曲がらなくなり、第4Qで交代。早大に完敗し、夢がついえた。その2週間後のFALCONS戦は、フィールドに立つこともままならなかった。「全治3~6カ月なんです。けがしたときは、冷やしてまた復帰したぐらいだったから、まさかそんな重傷とは……」。彼の無念を思うと、なんと声をかけていいのか分からなかった。

山本の代わりに出た西山直輝(2年、堀川)は、この試合が初スタメンだった。西山が言う。「やまたい(山本)さんが出られないのはうすうす分かってて、試合の1週間前には『序列的に自分だろうな』って思ってました」。初スタメンの相手が「雲の上の存在」と感じていたFALCONSということもあり、プレッシャーは大きかった。だから山本は西山に伝えた。「何も気負わずにやってほしい。こんなチャンスないんだし。それも全日本の準決勝という大舞台で。いつも通りのことをやれば、結果はついてくるから」

この日は、早大戦で苦戦したフェイスオフで勝ち、オフェンスにつなげられた。先制点を奪われたが、AT(アタッカー)椎橋広貴(3年、船橋)のショットで同点に。また入れられても、MF相田凛太郎(3年、滝)が決め、追いつく。FALCONSはフィジカルが強く、多彩な攻めからゴールを挙げたが、京大も得意の1on1(1対1)でチャンスを生み出し、第1クオーター(Q)は4-5で終えた。第2Qも粘る。ディフェンスはマンツーマンとゾーンを使い分け、G(ゴーリー)鎌木誠人(4年、西大和学園)は好セーブを連発。MF島佳輝(4年、東海)の連続得点もあり、6-8で試合を折り返した。

島(左)はFALCONS相手にも1on1の強さを示した

第3QはAT川本智貴(4年、東海)のショットで京大が先に得点。1点差に追い上げたが、京大もここまでだった。FALCONSはグラウンドボールをことごとく拾い、ゴール付近まで一気に運ぶ。パスからショットへの流れも速く、京大は常勝軍団の力の差を見せつけられた。

京大は早大に完敗して関東勢との実力差を痛感。FALCONS戦まで2週間しかなく、すべてで勝つのは無理と判断した。自分たちが勝てるところだけは勝とう。セットオフェンスを強化し、社会人相手でも、それが得点につながった。

「狭間の代」と呼ばれて

試合を見守った山本は言った。「ハーフコートのディフェンスはやられた気がしませんでしたけど、フルフィールドで差をつけられました」。西山は「いままでの核が抜けた状態で最強の相手と戦うのはヤバいんじゃないかって言い合ってましたけど、やまたいさんもアドバイスをくれて、僕たちの背中を押してくれました。不安もあったけど、自信も持てました。やまたいさんがつくってきたディフェンスなんだから、おれたちもできるぞって」。試合中の状況に応じてディフェンスを変える指示をしたのは、ディフェンスコーチと山本だった。コートの外から選手たちの背中を押していた。

初スタメンの西山(右)は練習通りのプレーを心掛けた

山本は明和高時代、サッカー部でサイドバックだった。高3の最後の大会では愛知県でベスト16。1浪して入った京大では、スポーツをやるとしてもサッカーサークルぐらいだろうと思っていた。でも高校のサッカー部の先輩がラクロス部だったこと、現役で入学した同期も入っていたことでラクロスに興味を持ち始め、スポーツをやるなら体育会系でやりたいと思うようになった。さらに「やるんだったら日本一を目指せるスポーツをやりたい」と思うようになり、京大ラクロス部の門をたたいた。

そのころの京大は学生ラクロス連盟からのペナルティーで公式戦に出場できず、翌年に3部リーグからスタートするという惨状だった。それでも「日本一は絶対に目指せる」と先輩たちに言われ、「絶対その舞台に送り出すから」とも言われた。先輩の力強い言葉に励まされ、最短で最終学年で1部リーグに挑戦できるのをモチベーションにして戦ってきた。ただ、入部したときは山本自身、日本一になれるという確信はなかった。「処分が下った年の新入生だったので、もともと人が少なくて。新人戦でも勝てなくて『狭間の代』『弱い代』って言われてきたので、正直不安の気持ちも大きかったです」と振り返る。

最終学年になる年にディフェンスリーダーに志願したのは、卒業していった先輩たちの思いを伝える責任を感じたからだ。とくに1部に復帰した今シーズン、OBや保護者からも注目され、「強い京大が1部に帰って来た、という姿を見せなければ」との思いがあったという。プレッシャーはなかったといえばウソだが、いろんな人の応援が力になったと感じている。

日本一を目指せなかった時代の京大ラクロス部は、「後輩たちを1部に上げること」「王者FALCONSに勝つこと」を目標としてきた。試合後、FALCONSの選手たちから「おまえたち、4年間よく頑張った」と声をかけられるシーンがあった。1部の舞台に立った「狭間の代」の最後の相手がFALCONSだったのは、運命だったのかもしれない。

試合後、京大とFALCONSが一緒に

山本は社会人になってもラクロスを続けるつもりだ。力を出しきれなかった早大戦と、出場すらかなわなかったFALCONS戦を経て、「ラクロスを続けたい」という思いがさらに強くなった。いつか京大と戦うこともあるかもしれない。「そのときはボコボコにして勝ちますよ。これが社会人の力だって見せつけたいです」。山本は今日一番の笑顔を見せてくれた。きっとその試合の最後には、この日のFALCONSのように京大をたたえ、肩を抱き合うのだろう。

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