ラクロス

特集:第10回ラクロス全日本大学選手権

関学決勝へ 最強守備でレッツゴーKG

杉本(#43)のディフェンスが、関学の得点力の高さにつながっている

全日本大学選手権 女子準決勝

11月17日@大阪・ヤンマーフィールド長居
関西学院大 11-5 福岡大

関西リーグを全勝した関西学院大の試合を見ると、平均得点が10.8とオフェンス力の高さがよく分かる。その一方で平均失点は3.8という関西最強の守備も見逃せない。「オフェンスは誰でもどこからでも仕掛けられて、確実に点をとります。ただ、うちの強みはディフェンスだと思ってるんですよ。ディフェンスが高いところで奪ってくれるから、すぐにオフェンスにつなげられてます」。住田行志コーチがこう話すように、強いオフェンスは強いディフェンスから生まれている。

福岡大との準決勝、関学大は開始1分に先制点を奪われた。次のプレーでドローを取り切ると、MF吉田陽(3年、豊中)がカットインからショット。早々に試合を振り出しに戻した。さらにMF喜田絢子(3年、同)が決めると、あとは連続得点を許すことなく点差を広げ、11-5で勝負を決めた。喜田のハットトリックをはじめ、オフェンス陣がそれぞれ個々の力を発揮して勝ちきった。

その反面、ディフェンス陣は試合の立ち上がりに課題を残した。準決勝に備えた練習の中で対策してきたはずのプレーで、早々に先制点を奪われた。MF杉本知佳(4年、鳴尾)は試合後、「やばいなって思いました。でも、みんなで声をかけあって立て直せて、結果勝てたからよかった」と、ホッとした表情を見せた。関学ディフェンスはこの杉本と吉田を軸とし、高い位置から相手にプレッシャーをかけ続けてきた。

刺激がない日々が変わった

関学は未経験者が大半で、一から学んで力をつけていくチームだ。杉本も例にもれず高校まではバスケ部だった。2回生になってからラクロス部に入った。

高校のバスケ部は兵庫県大会優勝を果たすほど強いチームで、バスケ漬けの日々だった。フォワードでシューターだったが、相手からボールを奪うプレーが好きだった。高校最後の大会は県ベスト8で敗退。大学でもバスケを続けるか悩んだが、毎日の練習から解き放たれて大学生活を楽しみたいと思い、どこにも入部しなかった。でも、楽しいはずの毎日なのに、どこか物足りない。そんな杉本の現状を知った高校時代からの先輩が「だったらおいでよ」と声をかけてくれ、ラクロス部の見学に行った。かっこいいなという思いで、2回生からの入部を決めた。

杉本は、ディフェンスには「チームで戦ってる感がある」と言う

1学年下の代と一緒にラクロスを学ぶ日々。年上の自分をすんなり受け入れてくれたことがうれしかった。3回生になってからスタメンに選ばれ、いまは最上級生としてチームを支えている。「私にとってはいまの3回生も4回生も両方同期。気も遣わずに語り合える仲間です」と杉本は笑った。ラクロスに抱いていたかっこいいイメージはいまも変わらないものの、日本一を目指して取り組む練習は辛いことも多かった。だからこそ、楽しいことがもっと楽しく感じられた。何も考えないで過ごしていた1回生のときとは違い、毎日いろんな刺激を見いだせている。

失点したときこそ笑顔

杉本にとって、3回生最後の試合となった関西リーグファイナル4の準決勝は忘れられない試合となった。昨年王者の関学は4連覇をかけて臨んだが、7-8で敗れ、関大が初の決勝へ進んだ。「雰囲気をもってかれました。私的にはいやで、チームとして一つになってない感じがすごいしました」。そこから最上級生となる新チームでどういう集団にしたいかを同期全員で考え、学年関係なく本音で語りあえるチームを目指した。

レギュラーを張っていた多くの4回生が卒業したことで、杉本自身の意識も変わった。自分が変わることでチームを変えないといけない。昨年のプレーを見返し、自分の現在地を知ることから始め、毎日ラクロスのことを考えた。全勝をキープしていた関西リーグ戦中の試合でも、まだまだ自分たちがやりたいプレーではないという意識があった。もっと上にいったらやられてしまう。目標とする日本一を見据え、挑戦者として一戦一戦を全力で戦い抜いてきた。

今年から関学が新たにメンタルトレーニングに取り組んだ。その中で、失点したときのルーティンを決めた。点を取られたらまず輪になる。「大丈夫大丈夫、切り替えよう」などと声に出して互いを鼓舞し、笑顔で「レッツゴーKG」と叫ぶ。また、得点後にチームがつくる輪も今年からだ。「得点した選手をみんなに見てもらいたいよね」という考えから、得点者を囲むことにした。「ナイシュー〇〇」と言って周りの選手がしゃがんだら、得点者がポーズを決める。「ダサいですよね」と杉本は笑うが、私には照れ隠しにしか見えなかった。そうやってチームで戦う気持ちの強さがうかがえた。

失点したらみんなで輪になり、笑顔で「レッツゴーKG」

学生日本一をかけて挑む相手は、昨年日本一の慶應だ。慶應と聞いて杉本が思い出すのは、3回生になって初スタメンで挑んだ慶應との練習試合だ。ショットをまったく決められなかった。ボールをクリアしても運べず、ボコボコにされた。その試合で慶應に対する恐怖が生まれた。4回生になったいま、関西リーグを全勝し、心ひとつで戦ってきた仲間がいる。「いまは倒したい。恐怖感はないです。本当に『やったろ』っていう気持ち」。11月25日の学生頂上戦、勝気なMFが慶應に牙をむく。

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