アメフト

リーグ最終戦、後輩に託した日体大エース

試合中、諸本(左)は何度も千代に寄り添った

関東大学リーグ1部TOP8第6節

11月11日@横浜スタジアム
慶應義塾大(2勝3敗) 23-21 日体大(6敗)

試合開始のキックオフ。日体大のリターナーに10番が入っていないのを見て、あれっと思った。

先輩の分も死にもの狂いで

エースRBの諸本輝(もろもと、4年、初芝立命館)。走るときの姿勢が高くて不器用な印象は否めないが、タックルされても足を止めず、がむしゃらに走ってきた。5試合で68回ボールを託され、計278yd。ひるまず、あきらめず、前進してきた。

そんな彼が、日体大のリーグ最終戦にいない。初勝利と入れ替え戦回避をかけた最後の試合に、いない。探すと、すぐに見つかった。スタイルせず、左腕を吊(つ)って、ベンチから叫んでいた。アメフトに、けがはつきものだ。とはいえ、よりによってこの試合に出られないなんて……。諸本の無念を思った。

諸本はベンチからチームを鼓舞していた

彼の代わりに出たのが背番号40の千代修平(せんだい、2年、日野)。今シーズン、RBとしての出場はなかった。日体大アメフト部には「ペア制度」というものがあり、上級生が2学年下の後輩とペアを組み、面倒を見る。諸本にあらゆることを教わってきた千代は言った。「お世話になってきた先輩がけがをして、僕が出ることになって。諸本さんはほんとに悔しいだろうから、その分死にもの狂いでやろうと思いました」。千代は高校時代まで野球に打ち込んできたから、横浜スタジアムで走れるのがうれしかった。

その心意気は、走りから十分に伝わってきた。無印の男が慶應のタックルをはね飛ばし、二つのタッチダウンを奪った。「めっちゃナイスやな!!」。諸本はいつもの関西弁でほめてくれた。14-0で試合を折り返した。今シーズン初勝利が、少し見えた。しかし後半、奮起した慶應のオフェンスを止められない。試合残り2分に勝ち越しを許し、そのまま負けた。

千代の二つのタッチダウンで初勝利が見えたが……

試合後、日体大の選手たちは泣いていた。諸本も涙をこらえられなかった。千代は言った。「悔しいです。諸本さんは『ミスしてもいいから思いっきりいけ』って後押ししてくれました。だけど、勝たせられませんでした」

日体大は1部TOP8の7位に決まり、12月15日に1部BIG8の2位チームと入れ替え戦を戦うことになった。「圧倒して勝ちたいです」と千代。おそらく次も諸本はフィールドに立てないだろう。

彼の分まで走る、そんな気持ちですかと尋ねた。千代は「はい」と言って、うなずいた。

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