アメフト

早大RB片岡、復活を告げる独走TD

今シーズン初のTD。喜びを全身で表現するRB片岡

 

関東大学リーグ1部TOP8第6節

11月11日@横浜スタジアム
早稲田大(5勝)31-14中央大(1勝4敗)

早大が無傷の5連勝で首位の座を守った。57ydの独走タッチダウン(TD)でチームに勢いをもたらした副将のRB片岡遼也(4年、早大学院)は、意外にもこれがシーズン初のTDだった。けがで厳しいシーズンを送っていただけに「久しぶりに試合に出て、TDできたのですごくうれしかった」と、喜びもひとしお。元山伊織(4年、豊中)とともに、RBの2枚看板として大きな期待がかかった今シーズン。片岡は並々ならぬ決意を胸に、創部史上初の日本一へ挑んでいた。

片岡は3人兄弟の末っ子で、8歳上の兄が一橋大のアメフト部に所属していた。「それがすごくかっこよくて、そんな兄のようになりたかったんです」と片岡。早大学院高入学を機にフットボールの世界へ飛び込んだ。身長176cm、体重94kgの恵まれた体で、3年の春まではRBの中でもブロックの役回りが多いFB(フルバック)を務めていたが、「ベアーズのRBを日本一のユニットにしたい」と考え、よりボールキャリーの機会が増えるTB(テイルバック)へ転向。そこで才能を開花させた片岡は、秋の関東大会決勝で佼成学園を相手に逆転のTDを挙げ、頼れる主将としてチームをクリスマスボウル(全国高校選手権決勝)へと導いた。

勝てば5連覇という大一番。試合序盤からアクセル全開の片岡は、持ち前のパワフルなランでゲインしたが、最多優勝回数を誇る関西学院高の守備陣を思うようには崩せない。それでも前半で相手に許したのは1ポゼッションのリードだけで、後半で十分に追いつける点差だった。しかし、第4Qで片岡が負傷。戦線離脱を余儀なくされた。これがチームとして大きな痛手となり、10-13で敗戦。「5連覇を逃したという一生残るような悪い思い出を、僕がつくってしまった」と、主将は責任を背負い込んだ。

「片岡復活」もう走れる

高校でエンジのユニフォームを脱ぐ選択肢もあったが、片岡は大学でもプレーすることを選んだ。アメフトの借りはアメフトで返し、日本一をつかみ取る。決意は固かった。そして片岡は秋の開幕戦でいきなりTDを奪うなど、ルーキーイヤーからその実力を存分に発揮。次代のエースとして大きな注目を浴びた。しかし周囲の期待とは裏腹に、そこからなかなか満足のいく結果が残せない。さらにラストイヤーとなる今シーズンはけがにも悩まされ、第3節の慶大戦と第5節の立大戦を欠場。理想とは程遠い現実を突きつけられた。

中大戦は片岡にとって、約2ヵ月ぶりの試合だった。しかし、そのブランクを感じさせない圧巻の走りを見せつけた。第1Q7分すぎ、自陣40yd付近でQB柴崎哲平(3年、早大学院)からハンドオフを受けると、一切の迷いはなく、これまでの鬱憤を晴らすような鋭いランで中央を突破。さらにグンと加速し、相手のDBを置き去りにした。「片岡復活」を告げる9秒間の独走パフォーマンス。片岡にしかできない走りが、戻っていた。

鬱憤を晴らすような鋭いランを見せつけたRB片岡(右)

片岡には、日本一を目指す理由がもう一つある。片岡がクリスマスボウル5連覇に挑んだ2014年。早大学院高で監督として指揮を執っていたのは、いま早大でアシスタントオフェンスコーディネーターを務める箕浦秀一氏だった。片岡にとって現役時代にFBとしてプレーした監督の存在は大きく、助言も受けてTBへのコンバートを決めたという。監督と主将の師弟はともに戦い。ともに敗れ。ともに涙をのんだ。だからこそ、片岡にはどうしてもかなえたい4年越しの夢がある。「箕浦さんが日本一の男だってことを証明したい」。もう走れる。ここから片岡は、日本一へ続く道をひた走っていく。

中大戦後、仲間と「紺碧の空」を歌い上げる片岡

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