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アメフト 元スプリンターの法政WR南河「一発TD狙います」

陸上で鍛えた足が、フットボール人生にも生きている

関東大学リーグ1部TOP8第5節

10月28日@富士通スタジアム川崎
法政大(3勝1敗) 30-0 中央大(1勝3敗)

全勝の早大を追う法大に、高校時代まで陸上競技に没頭したワイドレシーバー(WR)がいる。4年生の南河竜成(近大付)。今年の春からスターターに名を連ねるようになり、今シーズンは6回のキャッチで94ydを獲得。常に一発タッチダウン(TD)の脅威があり、残り2節の優勝争いで法大のキーマンとなりそうだ。

日本一になりたい

第5節の中大戦では2回のキャッチに1回のラン。第4Qには右から少し斜めに中央へ入ってくるルートで相手のマークを外し、35ydのパスキャッチに成功した。「自分に投げるパターンだったから、絶対に捕ってやると思いました」。晴れ晴れとした笑顔で振り返った。
ランプレーで相手をブロックにいくときも、ハードに、粘り強く当たっていた。こういう選手が、ここぞの大勝負で生きてくる。

高校時代、スプリンター南河のベストは100mが11秒02、200mが21秒97。近畿大会の6位までには入れず、個人種目ではインターハイに出られなかった。400mリレーと1600mリレーでは全国の舞台を踏んだが、高校限りで陸上はやめると決めた。「個人で歯が立たなかったんで、このまま陸上やってても日本一にはなれないと思いました。違うので日本一になろうと決めたんです」。そう、彼はただ走るのが好きで陸上競技をやっていたのではない。日本一になる手段として、まずは走っていたのだ。

指定校推薦で法大に合格し、新たに何の競技をやるか考えた。そのときアメフトが浮かんだ。高校時代、アメフト部の同級生たちは、そんなに強いチームでもないのに一体感があって、いつも楽しそうだった。強豪の法大はほとんどがフットボール経験者だが、1学年に5人ぐらいは他競技から転向してきた人もいる。それを知って、アメフトを始めることにした。もちろん、日本一になるための手段としてである。

フットボーラーとして独走

入部して、てっきりランニングバック(RB)になるんだろうなと思っていたら、当時の監督から「足が速いならレシーバーだ」と言われ、WRになった。といっても体ができていないため、4月から2カ月間は練習に入れず、筋力トレーニング漬けの日々だった。やっと練習に入れることになったが、とにかくパスが捕れない。防具は邪魔だし、ヘルメットは窮屈。「それにボールは変な形じゃないですか。走りながら捕るのが、めちゃくちゃ難しかった」。南河が笑顔で振り返る。

2年の春に初めて試合に出た。パスはまったく飛んでこなかった。夏の練習試合が記念すべき日になった。人生で初めて、試合でパスを捕った。「5ydフック」という、超入門編のパスコース。ボールが自分に向かってきて、捕った瞬間のことは一生忘れない。でも捕った直後にタックルを受け、足首を負傷。2カ月も練習できなかった。

入学したころはベンチプレスで60kgしか持ち上がらなかったのが、いまは125kgを支えるようになった。身長178cm、体重81kg。体はガッチリで、腕は膨らんでいる。どこから見てもフットボーラーだ。だから高校時代の仲間に会うと、ひどく驚かれるそうだ。

最終学年になって先発出場するようになり、春には念願の独走TDを決めた。東大との練習試合で短いパスを捕り、フィールドの中央付近をエンドゾーンまで駆け抜けた。「あんなに気持ちよかったことってないです。あれから捕ってからのランを研究してきました。リーグ戦の残り2試合は、一発TDを狙っていきます」。南河がニヤッと笑った。

マークを外し、パスを捕る

アメフトをやってよかった、と彼は言いきる。チームの人数が多いから、仲間も増えた。それに、パスを捕った瞬間の快感はたまらない。そして何より、大好物の「日本一」へ前進できている。「チームで日本一になるには、個人の強さも絶対必要になると思うんです。だから僕がもっと強くなって、チームに貢献します」

目上の人と話している分には、関西弁は出なくなったそうだ。この日、私はほとんど彼の関西弁を聞けなかった。こっちは思いっきり関西弁なのに、である。それでも私には楽しみができた。法政の背番号2が決定的なパスキャッチをして、「よっしゃーー」と関西弁で叫ぶ瞬間を目撃するという楽しみが。

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