サッカーの関東1部に訪れた〝メイジ時代〟 勝ち点30で首位独走の理由
関東大学リーグ1部第11節
8月10日@埼玉・浦和駒場スタジアム
明治大(勝ち点30)2-0 順天堂大(21)
試合終了のホイッスルとともに、固く閉ざされていた明大イレブンの口元が緩んだ。8月10日、関東大学サッカー1部リーグ戦の前期最終戦。試合前の時点で首位を独走していた明大は、2位につける順大とぶつかった。この日は集中応援日とあって、普段よりも多くのファンが紫紺の勝利を見届けるため、会場に足を運んだ。
「明治の原点」のサッカーで順大に快勝
序盤は思い描いたサッカーができなかったが、11人で守り抜く。ゲームが動いたのは前半35分。FC東京からの入団内定を獲得し、すでにプロの舞台で出場機会を得ているMF安部柊斗(4年、FC東京U-18)が、30mのロングシュートを一閃。吸い込まれるようにゴールとなった。 後半16分には主将のFW佐藤亮(4年、同)がFW小柏剛(3年、大宮アルディージャユース)のクロスに右足で合わせ、ゴールに沈めた。
いい守備からいい攻撃をつくり出す「明治の原点とも言えるサッカー」(栗田大輔監督)を今節も体現してみせた。ユニバーシアード代表で10番をつけたFWの旗手怜央(はたて、4年、静岡学園)を筆頭にタレントぞろいの強敵を相手に、2-0の完封勝利を飾った。
「どうしても勝ちたい試合でした。今日の試合を境に、もっといいチームになれるんじゃないかと思います」。明大主将の佐藤亮は試合後のインタビューでこう振り返った。勝利チームに許された試合後の「自撮りチャレンジ」。サブを含めた選手全員が笑顔になる唯一の瞬間。今シーズン10度目となる喜びの儀式も、どこか見慣れたものになりつつある。
圧倒的な強さのベースに総合力
10勝1敗、28得点、5失点。そして2005年に参加校数が12に拡大されて以降、前期終了時点での最多となる勝ち点30。11戦で残した圧倒的な数字が、今シーズンの明大サッカーの強さを物語っている。
「毎年チームが生まれ変わっている中で、一戦一戦を大事にしてきた結果です」と栗田監督。リーグトップの9得点を誇る佐藤亮を筆頭とする攻撃陣、今シーズンから採用した「3−2−3−2」のフォーメーションで取り組むディフェンスなど、躍進の理由はいくつか挙げられる。中でも、1番大きな要因として選手たちの間で上がった意見が「ゲームに出ている選手だけではなく、ベンチの選手、応援の選手、マネージャー、全員ががむしゃらに一日一日 を積み上げてきたこと」だ。
練習は早朝6時から始まる。寮生活で24時間をともに過ごし、強固な信頼関係を築き上げた。今年度のテーマは学年の垣根を越えること。「大学サッカーを制する」という目標を掲げ、それに向かって4学年の全員が同じ方向を向きつつある。佐藤亮は「ゲームに出ている選手はそれをピッチの上で披露するだけ」と語る。現時点での関東最強チームは〝総合力〟でライバルたちを圧倒している。
勝負はこれから、さらなる躍進に期待
「一人一人が新たなものに〝挑〟む志を持ち、目の前にある壁を〝越〟えていく」と「挑越」をスローガンに掲げてスタートした2019年度。アミノバイタルカップでは4年ぶり3度目の優勝を果たし、5年連続で総理大臣杯へと駒を進めた。5年ぶりに出場した天皇杯の初戦では、J3のブラウブリッツ秋田に3-0で完勝。2回戦では0-1で敗れたものの、2シーズン連続J1王者の川崎フロンターレを相手に、最終盤まで熱戦を演じきった。ここまでを振り返れば恐ろしいくらいに順調なように思えるが、DF中村帆高(4年、日大藤沢)は「誰一人として満足はしてないと思います」と話した。
前期を首位で折り返しても、それはタイトルではない。目指しているのは大学サッカーを制すること。「前期リーグの結果は始まりでしかない、勝負はこれからだと思っています」と佐藤亮は言った。一人の学生記者として、さらなる躍進への期待に興奮を抑えることができない。〝メイジ時代〟はまだ、産声をあげたばかりだ。