陸上・駅伝

特集:第96回箱根駅伝

やっぱり大作戦の青学、4年生が最後の箱根で「言われてきたこと全部を覆す」

エントリーメンバー16人に、(前列左から)鈴木、中村、谷野、吉田の4人の4年生が選ばれた(すべて撮影・松永早弥香)

箱根駅伝で王者奪還を狙う青山学院大の原晋監督は、今大会に向けて「やっぱり大作戦」を掲げた。そこには「やっぱり4年生強かった、やっぱり青山学院強かった、やっぱり青山学院応援してよかった。そういう風なかたちで、大手町に笑顔でゴールをしたい」という思いが込められている。作戦名は例年、12月10日の記者会見の前に、原監督の口から選手たちに伝えられる。今大会のエントリーメンバー16人には4人の4年生がいる。この作戦を受けての思い、そして最後の箱根路にかける思いを聞いた。

出雲駅伝5位の青学、勝つためには鈴木塁人主将ら4年生の奮起が鍵
全日本で連覇逃した青山学院大 箱根こそは「失敗しないので」

最後は主将としての意地を見せたい

前回の箱根駅伝を走った4年生は、鈴木塁人(たかと、流通経大柏)と竹石尚人(鶴崎工)のふたりのみ。竹石は2大会連続で5区を担ったが、今シーズンはけがに悩まされていた。原監督は竹石と面談した際、ギリギリまで様子を見るために「16番目の選手として登録しよう」と提案したが、竹石自身が「青学は16番目の選手も強い。僕を外してください」と願い出たという。

鈴木は前回同様、アンカーを希望している

鈴木は1年生のときから主力として期待されていたが、箱根駅伝のエントリーメンバー発表後に脚の痛みが気になり始め、出走できなかった。2年生のときには1区で区間5位。3年生のときにはアンカーを任されるも準優勝で、個人としても区間2位で区間賞を逃した。「箱根で悔しい思いをして、そこから(今シーズンが)スタートしました。トラックシーズンに思うような走りができず、駅伝シーズンに入ってもいい走りができなかった」と鈴木。しかし最後の箱根駅伝を前にして、調子が上がっているという。今年こそは区間賞の走りで優勝テープを切りたい。「4年生の意地、キャプテンの意地で、笑顔で箱根駅伝を終えて、後輩たちにバトンをつなぎたいと思ってます」と意気込んだ。

3人にとって最初で最後の箱根路

「(鈴木と竹石の)ふたりに頼りっきりのまま4年生になってしまったので、4年生全員で走って全員で好走すれば、チームとしても盛り上がる」。そう口にした副将の吉田祐也(4年、東農大三)は、3年連続でエントリーメンバー入りを果たした。過去2大会は11番目の次点。それでも「めげずにここまでこられたのは僕自身の強み」と自らを分析する。

定めた目標に対してコツコツ準備をしていくタイプの吉田は、「陸上競技は積み重ねていくことがすべてだと思うので、自分に合っているのかなと思ってます」と話す。普段の練習においても後輩たちの模範になれるよう、背中を見せることを心がけてきた。吉田にとって今回が最初で最後の箱根駅伝であり、大学で引退を決めている。希望区間に対しては「チームが勝つためならどこでもがんばる」と話す。

2年連続で11番目次点だった吉田は、その悔しさを最後の箱根駅伝にぶつける

中村友哉(4年、大阪桐蔭)は今回、初めてエントリーメンバー入りを果たした。今年の出雲駅伝で初めて三大駅伝を走ったが、任せられたアンカーで3位から5位に順位を落としてしまった。全日本大学駅伝では7位だった青学を区間2位の走りで3位まで上げ、追い上げのきっかけをつくった。それでも中村自身は「ある程度出せたものはあったけど、区間賞を取れずに終わってしまった」という思いが強い。最後の箱根駅伝では持ち前のスピードを生かし、自分の区間で決定づけられるような走りを目指す。

最初で最後の箱根駅伝で、中村は区間賞を狙う

谷野航平(やの、4年、日野台)は今シーズン、1500mで関東インカレ2部2位、日本インカレでは3分45秒31の自己ベストで4位入賞を果たし、今回初めてエントリーメンバーに選ばれた。「練習では強くないのに、ここぞというときに力を出せる」という本番での勝負強さを自分のアピールポイントとして挙げている。谷野も吉田同様、大学で競技を終える予定だ。

谷野は7区と10区を希望。「初のエントリーで緊張する部分はあると思うんですけど、臆せず優勝に貢献したい」とコメント

原監督からの叱咤激励、夏にチームは変わった

4人が口をそろえて言うのは、4年生としての責任だった。原監督は新体制に移行した直後から、「今年の4年生はダメだ」「気合が入ってない」「一体感がない」という叱咤激励を繰り返してきた。鈴木は主将として悩み、寮の規則を厳しくしたり、意識が伴わない仲間に厳しい言葉を投げかけたりしてきた。そんな中、自分ががんばる姿を見せて空気を変える大切さに気付けたことで、モヤモヤが晴れていったという。

夏合宿では鈴木や竹石、吉田ら4年生が練習で引っ張り、チームの練習消化率が向上。4年生を中心に大きく成長したチームを見て、原監督もやっと「総合優勝を目指すぞ! 」という言葉をかけられるようになったという。これまでずっと悔しさを抱えてきた中村も、「一番弱いと言われた代で勝てたらやっぱりうれしいですし、言われてきたこと全部を覆せるようにしたい」と気概を示した。

原監督(前列の左端)は4年生に対して「不思議と原マジック必勝法にはまってきましてですね、青山メソッドにはまってきた。期待してますよ」

前述の通り、作戦名は青学大寮でのミーティングの中で、原監督の口から選手たちに伝えられる。そのときを振り返り、鈴木は「正直びっくりした」と言う。「事前にちらっと聞いてたのと違ってて……。『スクラム大作戦』思ってました。ラグビー(W杯)もあったんで『ワンチーム』じゃないですけど、そういうのを入れてくるんじゃないのかなって」

「総合優勝」というたった一つの目標に向け、青学は心一つで挑む。その土台には4年生の姿がある。

青学は今シーズン、出雲駅伝で5位、全日本大学駅伝で2位だった。最終戦の箱根駅伝では総合優勝を目指している
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