大学陸上・駅伝

特集:第96回箱根駅伝

中央大・舟津彰馬 「ばっちこい!」と挑む最後の箱根駅伝、念願のシード権を

今回の箱根駅伝予選会で舟津は唯一の4年生として出走するも、チーム9番目の記録で悔いが残った(撮影・北川直樹)

中央大は箱根駅伝の予選会をギリギリの10位で通過した。舟津彰馬(4年、福岡大大濠)は例年、単独走への苦手意識から箱根駅伝では1区を希望していた。しかしチーム練習で先頭を引っ張り続けてきたことで、変わった。「いちばん性に合ってるのは1区だと思うんですけど、1区に限らず、もしうちのオーダーに穴があれば、その穴を埋められるぐらいの走りをしたいと思ってます。どの区間でも、ばっちこい!」。実に頼もしい駅伝主将だ。

中央大・田母神一喜 悩み苦しんで目指した箱根、主将として駆け抜ける
中央大、実力出しきれず箱根駅伝予選会10位通過 舟津、田母神それぞれの思い

まさかの「1年生主将」

中大は箱根駅伝で「シード圏内、8位」を目標に掲げている。1~4区で上位につけ、山の5、6区で勝負。7~10区では順位をキープしてゴールを目指す。藤原正和監督は「平地区間の選手がしっかり働いてこそ目標に届くと思ってます。メンバーに入った10人以外の選手も含めて全員で戦いたいです」と話す。舟津は区間5位以内で、いい流れをもたらす走りを目指す。

舟津は中距離を主戦場としてきた選手であり、中大に入学したときも箱根駅伝を目指すことになるとは思っていなかった。それが、なんと藤原監督は1年生だった舟津を長距離ブロック主将に任命した。監督は言う。「生活も練習もめちゃくちゃで、あまりに上級生がだらしなかった。これを変えるには伝統うんぬん言ってられないなと思い、何色にも染まってない1年生でやっていくしかない、新しい伝統をつくるにはそうするしかないと思ったんです」

舟津は1、2年生のときには長距離ブロック主将を、4年生では駅伝主将を担った(撮影・藤井みさ)

藤原監督は舟津一人にすべてを背負わせるのではなく、上級生からも幹部を出し、舟津を支える体制をとった。そこからチームは上向いたが、その年の箱根駅伝予選会で中大は11位に沈み、本戦の最多連続出場記録は87で途絶えた。翌年も舟津は主将としてチームを率いた。箱根駅伝予選会を3位で通過し、本戦への切符をつかんだ。初めての箱根駅伝で舟津は1区を走って区間12位。チームは総合15位だった。3年生のときには主将という役目から離れて競技に向き合った。2度目の箱根駅伝は6区。チームは総合11位と、あと一歩でシード権を逃した。過去2度の箱根駅伝を振り返り、「悔しい思いしかない」と舟津は言う。

勝ちきれなかったシーズン、最後は自分を信じて

今年の箱根駅伝が終わって新体制に移行するタイミングで、中距離ランナーの田母神一喜(現4年、学法石川)が寮に戻ることになった。前800m日本記録保持者の横田真人さんから指導を受けていた田母神に、藤原監督が「最後の1年、キャプテンをやってもいいんじゃないか」と打診し、田母神が応じた。舟津は駅伝主将を担うことになった。

舟津は1500mで日本歴代8位となる3分38秒65の記録を持つ。しかし今シーズンは4月の兵庫リレーカーニバルの1500mで優勝して以降、勝ちきれないレースが続いた。6月の全日本大学駅伝関東地区選考会では、チームは6位の次点で本戦出場を逃した。

兵庫リレーカーニバル(1500m)では最後の直線で勝負を決めた(撮影・藤井みさ)

そして夏前に急きょ、田母神が箱根駅伝を目指して長距離の練習に加わることとなった。田母神は当初、Bチームで練習していたが、蔵王での夏合宿からAチームに合流。田母神の姿勢は舟津にも刺激となり、練習では強い走りでチームを引っ張り続けた。田母神は言う。「本来のあいつの姿を見て、後輩たちも『舟津さんはやっぱやってくれるんだな』って励まされたと思います」

10月の箱根駅伝予選会に向けて準備を重ね、チームはトップ通過も狙えると意気込んでいた。しかし結果は10位。夏合宿では例年よりも距離を踏み、自信を持って臨んだだけに、チームには不安が残った。舟津もエースとしてチームを牽引(けんいん)する走りを目指していたが、1時間6分54秒で188位、チームで9番目のタイムに終わった。「メンタルの弱さがそのままレースに出てしまいました」と舟津。しかし「実力がなかったということだけがすべての結果じゃない。いま持ってる実力を信じることも大切。この失敗を生かしてもう1度つくっていければいい」と前を向き、最後の箱根に向けて心身ともに最終調整に入っている。

今回の箱根駅伝予選会はボーダーラインの10位で通過。舟津(左)と田母神の胸には安堵と悔しさが入り交じっていた(撮影・藤井みさ)

藤原監督は舟津に対し、「これまでほかの選手と違う道を歩ませてしまった部分はありますので、どこか燃え尽きてしまったところがあっても仕方がないのかなと思うことはありました。でもそうは流れなかったところに、彼の努力を非常に感じてます」と話す。舟津自身、何のために走っているのか、自分はどうしたらいいのか分からなくなるときもあったという。そんなときは叔母と祖母からの手紙を読み返す。

叔母と祖母は頻繁に仕送りをしてくれて、毎回手紙も入れてくれてます。その手紙を集めて壁に貼ってるんですけど、読み返すと落ち着けて、ここで一息ついてもいいんだな、と思えるんです。『しっかり頑張ってね』という言葉からも応援してくれてるという気持ちが伝わりますし、両親やきょうだいと同じようにつながりの深さを感じてます」

福岡に住む母は舟津の試合があるたびに駆けつけ、今年の箱根駅伝予選会も現地で応援してくれた。最後の箱根駅伝には家族総出で駆けつけてくれる予定だ。

箱根駅伝があったから、いまがある

中距離を主戦場としたまま箱根駅伝を目指さないという選択肢もあったのでは? 「自分が10000mで30分台後半の選手だったら走らなくてもよかったかもしれない。でも10000mや5000mでも記録が出せて、そんな自分を必要としてもらえているのであればこそ、走る意義があると自分は思ってます」

どの区間を任せられても、区間5位以内の走りでいい流れをつくりたい(撮影・松永早弥香)

箱根駅伝に対してあこがれがあったわけではない。でも、箱根駅伝があったからこそ、いまがある。

「中央大学というチームで陸上ができて、個性が強い後輩や同級生たちと陸上ができた。箱根という目標がなかったら、チームの方向性はバラバラだったと思うんです。ただ単に寮生活を一緒に過ごしてトラックレースに何本か出て、何と言うか、味気ない4年間になったのかと思うことはあります。つながりをつくるきっかけとして、箱根があったのかな。自分がメディアで目立ってしまった分、嫌な注目のされ方をすることもあったと思います。それでもこれまでついてきてくれました。だからこそ、ちゃんと残せるものは残したい。後輩たちに最後こそシード権を残せたら、自分としてもうれしいです」

いざ、最後の箱根路へ。ばっちこい!

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「Dream Challenger~夢に挑む者たち~SP」12月29日(日)23:15~24:15、テレビ朝日系列 全国24局ネットで放送