「一般入部でもやれるよ」 早稲田・三上多聞、恩師の言葉を最後に体現してみせる
前回の箱根駅伝で早稲田大は12位に沈み、13年ぶりにシード権を逃した。今年10月の予選会でも9位と苦しんだが、その翌週にあった全日本大学駅伝では6位に食い込んだ。箱根では3位以内を目標に掲げている。
16人のエントリーメンバーには5人の4年生が名を連ねた。主将の太田智樹(浜松日体)は1年生のときから箱根駅伝を走り、新迫志希(世羅)は前回9区を任された。尼子風斗(あまこ・かぜと、鎌倉学園)と遠藤宏夢(国学院久我山)、三上多聞(たもん、早稲田実)のうち、尼子と三上は最終学年で初めてエントリー入りを果たした。三上はアンカーを希望している。「前々回のアンカーだった谷口耕一郎さんが、4位で襷(たすき)もらって最後に1人抜いて3位になりました。一般入部で力をつけてきた方なんですけど、その姿に胸を打たれました。自分もそういう走りをしてみたいです」
三大駅伝3冠を達成した早稲田にあこがれ
大迫傑(ナイキ)が1年生だったときの第87回大会(2011年)、早稲田は18年ぶりに箱根駅伝を制し、三大駅伝3冠を達成した。当時中学生だった三上はその姿を目にし、早稲田へのあこがれを抱いた。その優勝メンバーには猪俣英希さんや北爪貴志さんという、スポーツ推薦ではない一般入部の選手もいた。とくに北爪さんは早実時代の恩師だ。「一般入部でもやれるよ」という言葉に希望を抱き、三上は競走部の門をたたいた。
3年生までの競技生活を振り返ると、いい結果を出せていないという思いが強い。前回の箱根駅伝前は調子を上げていたが、エントリーメンバーを選ぶ段階で同期の伊澤優人(東海大浦安)や真柄光佑(西武文理)に抜かれてしまった。そしてチームはシード権を逃した。「何より、自分が絡めなかった悔しさは大きかったです。自分が関わっている代で伝統を途切れさせてしまった責任とか、情けなさを感じてました」と三上は口にした。
最後の箱根駅伝に向け、三上も挑戦を続けた。今年3月の日本学生ハーフマラソンでは、1時間3分46秒と自己ベストを1分以上縮め、チームトップの30位でゴール。チーム内にけが人が多数いた中で好結果を出し、存在感を示した。
夏はBチームで基本を見直した
5月の関東インカレでも男子1部ハーフマラソンに出たが、結果は27位。学生ハーフ以降、調子が上がらなくなり、相楽豊監督に相談した。すると「1度Bチームで基礎基本をしっかり重ねてからAチームに戻ったらいい」と言われ、2次の夏合宿はBチームに合流。気持ちが塞ぐこともあったが、「下を向いてる時間はない。ここで基礎基本を積み重ねて自分を見つめ直せば、もう1度自分が飛躍するきっかけをつくれるはず」と考え、自分ができることを一つひとつこなしていった。
夏に走り込み、箱根駅伝予選会の前には自信になる練習が重ねられた。「いつも通りにいけば、きっとうまくいくはずだ」。そう考え、予選会に臨んだ。しかしチーム9番目の記録に終わり、全日本大学駅伝では補欠に回った。
気持ちを切り替えて練習に励み、11月17日には上尾シティマラソン(ハーフ男子大学生の部)に出た。自己ベスト更新には至らなかったが、チームトップの走りを見せた。そして箱根のエントリーメンバー入りを果たした。「ホッとしましたけど、本戦で走るためにはどうしたらいいかをずっと考えてきたので、これからです」
後に続く一般入部組の希望になりたい
あこがれの舞台に立ち、早稲田は一般入部組にもチャンスがあると示したい。かつて自分が北爪さんや谷口さんの姿に希望を抱いたように、今度は自分がこれから早稲田に入る後輩やいまBチームにいる後輩に何かを残したい。
最後のチャンス。たたきあげの男は、今日も前だけを見すえて走り続ける。