陸上・駅伝

特集:第96回箱根駅伝

箱根駅伝予選会9位の早稲田、飛び出した太田智樹主将の覚悟

太田は最後の箱根駅伝にかけている(撮影・小野口健太)

第96回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会

10月26日@東京・陸上自衛隊立川駐屯地~立川市街地~国営昭和記念公園
9位 早稲田大学 10時間55分26秒

13年ぶりにシード権を落とした早稲田大にとって、予選会もまた、13年ぶりの挑戦だった。その翌週には全日本大学駅伝も控えている。「予選会後のダメージを考え、全日本大学駅伝の1本に絞って調整させてきた選手もいます」と相楽豊監督。前回の予選会の記録から逆算して3~6番手を狙っていたが、結果は9位。発表の瞬間、相楽監督は安堵の表情を浮かべた。

新迫と小指は全日本大学駅伝に向けて調整

予選会の登録メンバー14人を決める際に、相楽監督は「速さよりもスタミナがあり、(予選会と全日本大学駅伝の)2本を走りきれるタフな選手」を基準にしたという。さらに全日本大学駅伝で磐石なレースができるよう、新迫志希(4年、世羅)と小指卓也(1年、学法石川)は全日本大学駅伝に絞って調整をさせた。夏合宿も7月からと例年より約1カ月前倒しし、9月中旬と早めに合宿を終え、長めの調整期間を設けた。

夏合宿の途中で腰痛から1カ月ほど休まざるを得なくなった半澤黎斗(れいと、2年、学法石川)は箱根駅伝に向けて調整中。また中谷雄飛(2年、佐久長聖)も予選会を走る予定だったが、レース10日ほど前に脚の痛みが出始めたため、大事をとって予選会を回避させた。「走れてはいるんですよ。でも他のメンバーの調子がよかったこともあったので無理はさせませんでした」と相楽監督。それでもエースとしての走りが期待されていた中谷が抜けたことで、目標設定を下方修正する必要があったという。

太田主将「チームのために1秒でも速く」

レース前、早稲田は駅伝主将の太田智樹(4年、浜松日体)を一人で走らせ、そのほかは3つから4つの集団をつくって一人ひとりのタイムを引き上げる戦略を立てていた。太田は予選会の一週間前、頭を丸刈りにした。「とくに理由はないです」と口にしていたが、そうした主将の姿に刺激を受けたメンバーもいたことだろう。けが明けで挑んだ今年の箱根駅伝は2区で区間21位に沈み、ブレーキになった。だからこそ学生最後の駅伝では力を尽くしたい。この予選会では「1秒でも速く走ってチームを楽させたい」と考え、先頭集団に食らいついて走ると心に決めていた。

太田(左から3人目)は序盤、先頭を狙える位置でレースを展開した(撮影・小野口健太)

太田は留学生集団に続く第2集団で、東京国際大の伊藤達彦(4年、浜松商)や専修大の長谷川柊(4年、八海)、城西大の荻久保寛也(4年、三郷工技)らとともにレースを展開した。スタート時に18度だった気温はみるみるうちに上がり、強い日差しが選手たちを苦しめた。太田は10km地点までは日本勢トップを争う集団の中にいたが、次第にペースが崩れてしまい、全体16位(日本勢10位)の1時間3分58秒でフィニッシュ。両足にできたまめをかばうような歩きでコースを後にした。

集団で走った太田以外のメンバーも想定外の暑さに苦しめられ、後半に失速してしまった。「記録でのずれは一人あたり1分ぐらい、トータルでは10分ぐらいありました」と言うと、相楽監督は唇をかんだ。9位通過という結果を受け、太田は「不本意な結果ではあるんですけど、通過できたことはプラスにとらえて、ここから来週の全日本大学駅伝、その2カ月後の箱根駅伝に向けてしっかりチームとして上げていきたい」と前を向いた。

「昨シーズン、エースを失ったところでカバーできなかったのがチームの弱さだったので、今年はほかのメンバーでカバーできるようなチームを目指す」と相楽監督(右)(撮影・松永早弥香)

11月3日に迫った全日本大学駅伝に対し、相楽監督は「これから劇的に変えることはできませんけど、春からつくってきたベースはありますから、いまのこのチームでベストを尽くすしかない。まずは疲労をとって、選手の状態をしっかり見て判断します」と目標を明言しなかった。

いまのチームに足りないところを問われ、太田は「練習は十分できてると思うんで、そこからいかに結果を出して試合で走れるかという部分だと思います」と答えた。結果を出す。誰よりも強くその覚悟を決めているのが太田だろう。名門・早稲田の復活をその走りで引き寄せる。

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