東京国際大・内山涼太 歴史を作ったキャプテンのラストレースは悔しさとともに
第96回箱根駅伝
1月2~3日@大手町~箱根の10区間217.1km
5位 東京国際大 10時間54分27秒
10区 9位 内山涼太(東京国際大4年) 1時間10分31秒
ゴールでは笑顔の伊藤達彦(4年、浜松商)と真船恭輔(4年、学法石川)が待つ。そこに悔しさをあらわにして飛び込んできたのは、東京国際大のキャプテンを務める内山涼太(4年、八千代松陰)だ。彼の陸上人生のラストレースが箱根駅伝だった。
「シード権獲得」以上の順位が見えた
今年躍進した東京国際大。箱根駅伝出場は4回目、これまでの成績は17位、17位、15位。だが今回は違う。全日本大学駅伝と箱根駅伝の予選会はともに1位通過。全日本大学駅伝では初出場で4位となり、シード権獲得。箱根駅伝での目標「シード権獲得、8位」も現実的な目標としてすぐそこにあった。
そして迎えた往路、大学史上最高順位の3位で往路フィニッシュ。復路は6区で4位、7、8区で5位と順位を落とすも、9区の相沢悠斗(4年、聖和学園)が区間3位の好走で3位まで上げ、内山に襷(たすき)が託された。「相沢があそこまで爆走してくれるとは思ってなかった」と驚きながら、内山の最後の箱根路が始まった。
「成長できる」と思ってキャプテンに
内山は10000mの持ちタイムは29分台と、「走りでチームを引っ張る」というタイプではない。だが4年生になるとき、みずからキャプテンに立候補した。「自分のことだけ考えてたり、普通の人と同じことしてたら成長できない。人として成長できると思って立候補しました」。競技者としての成績だけで見たら伊藤が一番だ。だが、彼に競技のこと以外で負担をかけたくない、競技に集中してほしいという思いもあったという。
「人前で話すことは得意」という内山。キャプテンをやったことはなかったが、スタッフと選手の橋渡し役としてチームをまとめた。大志田秀次監督と話す機会もより増えた。昨年12月10日の事前取材のときには、悩んだときには監督が家でバーベキューを開いてくれることもあったと教えてくれた。「大志田監督は、みんなのお父さんみたいです」と内山は言う。
後ろから来たのは「誤算」、勝ちきれなかった
走る前、たぶん自分が一番緊張していた。でもいつも通りふざけて、ジョークを言って、明るく振る舞うように心がけた。監督からの指示は「後ろから追い上げてくるかもしれないけど、付かれたら付かれたで、設定ペースだけ考えること」。後ろから7秒差でスタートした明治大の河村一輝(4年、大垣日大)が来てすぐ2人旅になった。
昨年の記録を参考に、20km61分30秒が設定ペース。「10kmだったら設定より速かった」と振り返るが、14km付近で國學院大の殿地琢朗(どんじ、2年、益田清風)が、15km付近で帝京大の吉野貴大(4年、東海大望星)が追いついてきた。「誤算だった」と内山。後ろから来ていることには気づいていなかった。最後は時計を見ずに、とにかく勝つことだけ、ラスト勝負だけを考えて走った。
結果的にラストスパートで河村には勝ったが、殿地、吉野には置いていかれ5位でのゴールになった。「ついてついて、最後勝てなかったので実力不足です」。3位をキープしたままならメダルがもらえたはずだった。最後の最後で悔しさが残った。
内山はここで陸上を引退し、一般企業に就職する。「陸上人生、いろいろきつかったです。『早くやめたい』って思うこともあったし、つらいことばっかりでした。普通の大学生として大学生活を送りたかったのに……ここまで人生をかけてやるとは思ってなかったです。でも結果的にいろんな人に出会えて、一生の宝ものになったなと思います」。特に入学当初から切磋琢磨(せっさたくま)してきた4年生の同期には本当に助けられたし、感謝しているという。
最後に聞いた。これからも走りますか? 「いまのところ、疲れちゃったので何も考えられないです。箱根だけって考えてたので……。走るとしてもダイエットぐらいかな。監督(みたいな体型)にならないよう気をつけます(笑)」。東京国際大の新しい歴史を作ったキャプテンは、最後に彼らしいジョークで締めた。