明治大・村松開人「人間力野球を体現する男」が頼れる仲間とつかみ取ったベストナイン
東京六大学野球春季リーグ戦で明治大打線の2番に座り、目標に掲げていたベストナインを受賞した村松開人内野手(3年、静岡)。打率3割6分6厘(リーグ3位)、15安打(同2位タイ)、5盗塁(同4位タイ)の好成績を収め、上位打線の一角を担う役割を十分に果たした。彼の飛躍の裏には、野球への意識の高さと仲間に対する思いの強さがあった。
意識の変化から生まれたベストナイン
まさに有言実行だ。「今季は開幕スタメンで、レギュラーとベストナインを取ります」。今年1月、長期自主練習期間を終えて、春季リーグ戦の目標を紙につづった。ベストナインを意識し始めたのは昨年の秋季リーグ戦。その前の春季リーグ戦では1番スタメンで出場するも結果を出せず、秋は代打での出場が中心に。「春は自分が出ないといけないと気負いすぎてしまった」。代打に回ったことで「打とうというより、自分のやるべきことをやろう」という考えになり、その変化が功を奏した。打率4割と好成績を残し、確かな手応えを感じた。
意識を変えたのは打席だけではない。「いろいろなところで徳を積んでいったことで運がきたと、自分の中では思っています」。トイレのスリッパをそろえる、ゴミを拾う、困っている人がいたら対応する。そういった徳の積み重ねに、野球の神様は応えた。
上位打線間での信頼関係
打順の前後を打つ陶山勇軌(4年、常総学院)と丸山和郁(4年、前橋育英)の存在も大きかった。「主将、副将のお2人なので、自分が最低限のことをしたらちゃんと生かしてくれる心強さがあった」。2番打者として、打つ場面でもバントで送る場面でも、状況に合わせて得点に絡むことを意識した。
それを象徴する試合が立教大1回戦。2点ビハインドで迎えた8回表の守備に入る前だった。「次絶対にチャンスで回ってくるのでやってやりましょう」。陶山と誓ったその裏、2死二、三塁のチャンスで打順が上位打線に回ってきた。1番・陶山が適時内野安打で1点を返すと「集中しすぎてゾーンに入っていた」。打球を右前へ運び、同点に追い付く適時打を放った。そのとき、いつもはクールな村松に珍しくガッツポーズが飛び出した。続く丸山の適時打で一時、勝ち越しに成功。頼れる上位打線の力を見せつけた瞬間だった。
同学年を引っ張る存在に
リーグ戦に出場している立場として、同期の先頭に立つ責任感は強い。「自分や山田陸人(3年、桐光学園)が中心になっていくのは間違いない」。3年生が抱える懸念点は投手層の薄さ。3年生で今季リーグ戦に登板した投手は渡部翔太郎(3年、千葉黎明)のみ。「投手にも頑張ってもらわないと困るので、厳しく言うつもりではあります。自分らの代で優勝を目指したいので」。野手の村松だが、同期の投手陣にも𠮟咤(しった)激励の言葉を掛け、投打一体となって優勝を目指す。
個性の強い3年生をまとめるために、村松が大切にしているのは信頼関係。「信用していないと本当のことは言えないと思うので、しっかり言い合って良いチームを作りたいと思います」。同期を引っ張る立場として、自分も信頼される選手になるために、さらなる高みを目指して努力を重ねている。春季リーグ戦の3割6分6厘という結果にも満足せず「4割は打ちたかった」と反省を語る。他にも守備の2失策や長打力のなさなど、改善点を挙げればキリがない。その向上心が村松をさらに手強い打者へと成長させる。
最後に刺激になっている選手を尋ねると「山田陸人しかいない」と即答。春季リーグ戦で共にベストナインを受賞し、加えて打率5割で首位打者を獲得した山田。「同学年があのような結果を出したことで、負けられないという思いもある」。秋は自分も首位打者を。ライバルの活躍が村松の心に火を付ける。信頼する仲間と共にさらなる飛躍を誓う彼の進化は、誰にも止められない。