野球

特集:2021年 大学球界のドラフト候補たち

関西大学の野口智哉、コロナ禍を乗り越え万能選手が目指すもの

関西大学の野口智哉。身長181cm、体重83kg(撮影・沢井史)

関西大学の4年生になった野口智哉(鳴門渦潮)は遊撃手だが、実は三塁手、外野手もこなし、高校時代はリリーフで投手も務めた経験があるユーティリティープレーヤーだ。今は正遊撃手としてプロのスカウトからの評価が高く、関西学生野球リーグを代表する打者としても注目される。

甲子園のマウンドにも

関大に入学して間もなく、1年春のリーグ戦からスタメン起用された。当時は外野手。以降は三塁手、2年春以降は正遊撃手となり打ってはクリーンアップを任された。
奈良県橿原市出身。中学時代は葛城JFKボーイズに所属した。同級生が甲子園常連の強豪校に進む中、野口は徳島の鳴門渦潮高校へ。2012年に鳴門第一と鳴門工が統合して生まれていた。関西を離れることに抵抗はなく「あえて地元を離れてみたかった」と四国に渡った。元々、自主性は強い方で、周囲の環境の変化にも動じない強いメンタルはこの頃から培われていた。高校でも1年夏からレギュラー格となり、3年の夏は全国高校野球選手権徳島大会でサイクル安打を記録するなど打線を引っ張り、鳴門渦潮として夏の甲子園に初出場。初戦で日本文理(新潟)に敗れたが、3番遊撃手でスタメン出場し5打数2安打、九回にはマウンドにも上がった。

第99回全国高校選手権(2017年)に出場。甲子園のマウンドにも立った(撮影・朝日新聞社)

1年秋の不振をバネに

大学1年の秋には分厚い壁にもぶち当たった。春はバットを振れば当たるかのように飛び出した安打が放てない。春と同じく12試合に出場したものの43打数6安打と打率.140でシーズンを終え、残ったのは悔しさだけだった。
「最終戦で、メンバーを外されたことが一番悔しかったです。それから冬の間は体作りをまずやりました。単に大きくするのではなくて、体をしっかり作る。食事改善をして走り込みをして、そこからバットを振っていました」。
そのかいあってか2年春、秋のリーグ戦は共に打率が3割5分を超えた。本塁打をマークするほど長打力もつき、徐々にプロのスカウトからの視線も熱くなった。

守備では軽快にさばく(撮影・沢井史)

早瀬万豊監督は、野口のことを「とにかく練習熱心で、いつも最後までグラウンドに残っている。あれだけひたむきに練習する選手はあまりいない」と感心する。ストイックな性格で、どこまでも自分を追い込んでいき、ボールとバットと真剣に向き合う時間を大切にする。昨年の新型コロナウイルス感染拡大の影響で全体練習が自粛になった際も、「自分の時間がたくさんあったので、その分好きな練習ができた」と、体を休めるよりも汗をかく時間に大いに活用した。

調子上がらず出場辞退、中断

昨秋のリーグ戦も打率は3割超え。コンスタントに数字を残し続けてこそ、リーグを代表する打者であると自負している。中学時代のチームメートでもある福元悠真(大商大)も同じドラフト候補選手として名前が挙がり、気になる存在だ。だが、周囲よりもまず自分。大学ラストイヤーはさらに高みを見つめて臨むつもりだった。しかし、今春は1勝4敗と出足でつまずき、3節目の立命館大学戦を迎える直前、コロナ感染拡大予防ため出場を辞退することに。さらに4月25日から緊急事態宣言が発令され、リーグ戦自体が中断となった。

3週間後にリーグ戦は再開され、関大は5月22日の京都大学戦から復帰となったが、4月25日から5月10日まで全体練習は全くできず、本格的に練習を再開してから約10日後の公式戦となった。

「(練習自粛は)去年からもう3度目なので……。先月末からの自粛期間も自主練習はやっていました。今回は長距離を走ることが多かったです。それよりも自分の思うような結果が残せていないのが悔しかったです。昨年までは先輩がいての自分。最終学年になって、マークされていることは分かりました。それでも結果を残さないといけない」
5月24日に行われた近畿大学戦では、初回に1死二塁のチャンスで先制適時打を放った。2打席目でも左越え二塁打、延長戦となった10回には(タイブレークのため無死一、二塁から)右越え適時二塁打も放ち、5打数3安打2打点と底力を見せつけた。
「今年は打撃、守備、走塁すべてにこだわっていきたい。すべての要素で納得のいく結果を残したいです」

春、チームは低迷したが、巻き返しを誓う

好きな言葉は「克己心」。自分に厳しく、そしてどん欲に。コロナ禍の中、コンディショニングが難しいとされているが、まずはこの春のリーグ戦を最後まで走り切り、さらにその先へつなげる。

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