野球

特集:2021年 大学球界のドラフト候補たち

関西大学の久保田拓真、「勝てる捕手」を極めて続くプロへの道

関西大学の久保田拓真捕手。コミュニケーションを大事にする(撮影・沢井史)

コロナ禍で昨年はほとんど中止となった大学野球の春のリーグ戦が各地で感染症対策を実施しながら始まります。新チームで挑む選手の中から、この秋のプロ野球ドラフト候補を紹介します。最初は関西大学の久保田拓真(津田学園)捕手から。今年の4年生には捕手の逸材が多いといわれています。

短い捕手歴補う対話

久保田が目指す捕手の理想像は「勝てる捕手」だ。「勝てる投手」というフレーズはよく聞くが、勝てる捕手とは具体的にどんな選手なのか。

「何点取られても、試合が終われば勝っていたらいいと思っています。点をやらないことも大事だけれど、勝つことが大前提。そのために、自分がどう投手を乗せていけるか。何か声を掛ければテンションが上がると思うので、マウンドにいる時は積極的に声を掛けるようにしています。緊張している時はなおのことです。緊張をほぐすためにリラックスさせるような言葉を掛けつつ、腹を括(くく)ってやっていこうか、みたいな感じで気合が入るような言葉も掛けます。そのために普段から会話も多くしていますね」

捕手になったのは高校の途中から(関大野球部提供)

明るい性格も手伝って、久保田はとにかくチームメートとよく話す。捕手はまずコミュニケーションと肝に銘じているからだ。だが、捕手歴は意外と浅い。津田学園高(三重)在学中、2年生の春直前に捕手が少なかったチーム事情により急きょ捕手転向することになった。直後に夏のシード権を決める春の三重県大会が控えており、早く技術を飲み込まなければ、と久保田は焦った。春にいきなり背番号2を背負ったが、キャッチングやリードなど「課題だらけだった」と自身は振り返る。そこから経験を積み上げ、3年生だった2017年夏の甲子園(第99回全国高校野球選手権)にチームは初出場し、初勝利も挙げた。高校野球を終えた頃にようやく捕手として自信が持てるようになったという。

高校3年夏の甲子園、初出場の津田学園は2回戦まで進んだ(撮影・朝日新聞社)

関大では2年春からレギュラーに。秋のリーグ戦では優勝を果たしたが、久保田にとって、この秋の経験がさらなる高みを目指すきっかけになった。

先輩捕手に学ぶ

「明治神宮大会で郡司(裕也)さん(慶應義塾大→中日)や海野(隆司)さん(東海大→ソフトバンク)と対戦して、全国レベルのキャッチャーはこんな人達なんだと驚かされました。技術面、フィジカル面……。自分はまだまだ、だと思わされましたし、自分はまだまだ、やることがあると感じました」

同じ関西学生リーグには昨年まで立命館大学に榮枝裕貴(阪神)という強肩強打の捕手もいた。
「榮枝さんは肩が強いし打撃は勝負強い。直で榮枝さんに打撃について聞いたことがあるのですが、考えて打つのではなくて、とにかく思い切り振るようにしていると教えてもらいました。試合では強いスイングを心掛けるようになったのも、その言葉がきっかけのひとつだったのもあります」

打撃力アップへ

昨秋のリーグ戦は35打数9安打で打率.257と不本意な数字だっただけに、勝てる捕手として、自身の打撃もさらにレベルアップさせなくてはならない。

投手を助けるためにも打撃向上は欠かせない(関大野球部提供)

「投手を乗せることも大事ですが、打つ方で援護もできないと。そういう意味では周りから信頼される捕手を目指していきたいです」

大学ラストイヤー。関大の近年の優勝は秋ばかりで、全日本大学選手権につながる春の優勝は1995年までさかのぼる。攻守にわたる久保田の躍動が一昨秋以来の優勝へのカギとなる。

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