走攻守そろった東洋大・佐藤、聖光学院高3年で抱いたドラフト指名の夢
東都大学野球第2週の東洋大-國學院大戦は4月25日、2勝1敗1分けで東洋大が勝ち点を獲得した。東洋大はドラフト上位でプロ入りした3投手が抜けたが、大学球界屈指の捕手との呼び声高い佐藤都志也主将(4年、聖光学院)が、リーグ戦登板経験の少ない投手陣をもり立てる。開幕から2カード連続で勝ち点を奪い、優勝奪回へ出足は好調だ。
捕手のライバルたち、意識しない
昨秋までの6シーズンで打率3割3分7厘をマークした確実性の高いバッティング、50m6秒フラットの俊足、二塁への送球に要する時間がコンスタントに2秒を切る強肩。佐藤は走攻守のすべてで大学球界トップクラスの能力を誇り、秋のドラフト候補として、プロのスカウトから熱い視線を浴びている。
今年の大学球界には、慶應義塾大の郡司裕也(4年、仙台育英)、立教大の藤野隼大(4年、川越東)、東海大の海野隆司(4年、関西)ら捕手に逸材が集まる。比較されることは多いが、佐藤自身は意識していないそうだ。
「周りにはそういうふうに言われますけど、見る人によって評価するところは違うと思いますし。最終的に“やっぱりこいつだな”と思ってもらえるように、走攻守すべてにおいて一番をとれるように頑張ります」
福島・聖光学院高校3年の秋にもプロ志望届を提出していたが、ドラフト会議の当日、佐藤の名前は呼ばれなかった。あの日の悔しさと、芽生えた「大学で4年間やって、ドラフト1位でプロに入ろう」との思いが、いまの佐藤の原動力になっている。
東洋大入学後は、2年生の春に一塁手のレギュラーをつかみ、打率4割8分3厘で首位打者を獲得する活躍。チームはリーグ戦春秋連覇を達成し、自身も2シーズン連続でベストナインに選ばれた。3年生の春からは捕手のレギュラーとなり、チームは3連覇を達成。夏には侍ジャパン大学代表に選ばれ、日米大学野球、ハーレムベースボールウィークに出場。外野や一塁を守り、中軸を打った。しかし、その秋は3校が勝ち点3で並ぶ混戦から抜け出せず、東洋大は4連覇を逃した。
経験の少ない投手陣を好リード
昨秋のドラフトでは、東洋大から上茶谷大河(DeNA1位)、甲斐野央(ソフトバンク1位)、梅津晃大(中日2位)と、3人の投手が上位指名を受けてプロに進んだ。一気に3人の主力投手が抜け、この春は投手陣の整備が急務になっている。3人の先輩たちのボールを受けてきた佐藤が、この春は経験の少ない投手陣を引っ張っていかなくてはならない。
第1週、中央大1回戦は左の渡辺友哉(1年、報徳学園)、2回戦は山内響(2年、東洋大姫路)と、いずれも下級生の投手が先発し、継投で5-2、6-5と連勝で勝ち点を手にした。2試合とも最後の1イニングを締めたのは河北将太(1年、浦和学院)だった。
「今年は打線が強いから、何点取られても大丈夫。しっかり腕を振ってこい、と話しました」。佐藤が振り返る。
第2週、國學院大1回戦、4回戦では、村上頌樹(3年、智弁学園)が最速147kmの直球に、この春覚えたというフォークボールを交え、1回戦は被安打2、4回戦は被安打1と、いずれも素晴らしいピッチングで完封勝利を収めた。
「佐藤のリードは去年より格段によくなりました。“かっこいいリードはいらない、点を取られても最少で”と言ってます」と、東洋大の杉本泰彦監督も彼の成長を認める。
対戦相手のデータはしっかり頭に入れるが、試合に入ってからは打者の反応をより重視しているという。
「データは出てるんですけど、実際はやってみないと分からないところがありますから。バッターを見て、まっすぐに張ってるな、とか、変化球狙ってるな、とか。バッターの反応を見るのを大事にしています」
先輩の大野奨太と重なる4years.
プロ入りした先輩投手と組んだ経験から多くのことを学び、4年になると逆に経験の少ない投手陣をリードして勝つ。佐藤のいまは、プロで活躍する東洋大の先輩捕手、大野奨太(現・中日)の大学時代と重なる。
大野は大学3年の時、1学年上の鉄腕・大場翔太(元・ソフトバンクなど)とバッテリーを組んだ。大場は春9勝、秋8勝を挙げ、東洋大はリーグ戦を連覇。翌年、大野はキャプテンを務め、前年まで登板経験の少なかった同学年の上野大樹(元・ロッテ)、2学年下の乾真大(元・日本ハムなど)、3学年下の内山拓哉(元・JR東日本東北)らをリードし、4連覇に導いている。ドラフト1位で日本ハムへ入団し、2009年、12年、16年と3度のリーグ優勝(16年は日本シリーズ優勝)に貢献、16年にはゴールデングラブ賞も受けている。
佐藤は偉大な先輩を超える活躍を披露し、4年前に誓ったドラフト1位でのプロ入りを実現できるだろうか。