ダンス

國學院大學ドリル競技部が感謝の公演、チームワークで躍進誓う

エネルギッシュな演技を披露したSEALS(すべて撮影・浅野有美)

コロナ禍で大会が中止になった学生たちに演技を披露する場を――。チアダンスの全国大会で活躍する國學院大學ドリル競技部SEALS(シールズ)の公演が7月、東京都八王子市で開催された。感染予防を徹底し、関係者のみに入場を制限した。引退の4年生を含む40人が出演し、躍動感あふれる演技を披露、感謝の気持ちを届けた。

観客の前で踊れず「ショック」

SEALSはチアダンスの全国選手権大会(USA School&College Nationals)で優勝経験がある強豪。部の最大の目標でもあるその大会が、2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大で中止に。2021年度は映像審査で行われたが、1年以上観客の前で演技する機会を失った。

主将で4年の木俣侃己(かんな)は「観客の前で踊れずショックな1年だった」と喪失感を抱えていた。集大成を披露することなく引退する4年生もいた。なんとか活動を伝える場をつくろうと、部員の学生や部長で元フィギュアスケーターの町田樹助教らが大学に働きかけ、今回の公演が実現。引退したメンバーを含め40人が演目ごとにチームを組み、12のプログラムを披露した。思い出の写真も流れ、舞台からはすすり泣きも聞こえた。心が込められた踊りに観客席から大きな拍手が送られた。

「SEALS愛」を感じて

SEALSの魅力はチームワークだ。「『SEALS愛』という言葉があるのですが、大会を重ねるごとにチームへの愛を語るようになっている自分がいます」と木俣は言う。練習や演技で積極的に声を掛け合い、パフォーマンスが磨かれていく。

ポンポンを使った演技が得意なSEALS

木俣は2年生から入部した。「もともとクラブチームでチアダンスをしていたのですが、大会でSEALSの演技を見て、一人ひとりの自信やパワーがすごく伝わってきて感動しました。大会のジャッジシートで観客を楽しませるところで加点されるSHOWMANSHIPの項目ではチームワークを非常に評価されていました。それだけ人の心を動かせるチームだと思った時、自分もここで変わりたいと思いました 」

1学年下の部員が同期になるため「入部当初は複雑な関係だった」と笑いつつも、仲間に支えられた。「SEALSに入るまでは自分で強くならなきゃという思いが強く、一人で抱え込みがちでした。SEALSに入ってからは違うバックグラウンドを持つからこそ、チームに還元できることは何かという広い視点で見ることができるようになり、仲間と一緒に強くなれました」と成長を実感する。 

メンバーからは様々な意見が出るが「意見を聞き入れて共通点を見つけて、自分が柔軟に対応してまとめていく感じでした」。オンラインのミーティングも頻繁に開催し、コミュニケーションをとり続けた。

公演に向けて部員が成長

部には経験者も初心者もいるため、木俣にとっては初心者の目線に立つのが大きな課題だったという。今回の公演は大会のように実力別でチームを分けずに編成した。「同じ踊りを踊っているからこそ、何がうまくできないかを一緒に踊りながら考えることができました。ここがやりにくいならこういう身体の使い方を練習しようなどより実践的な方法を身につけられたと思います」。初心者の部員にとっても貴重な成長の機会となった。

公演ではSEALSが得意とするカラフルなポンポンを使ったポン以外にもジャズやヒップホップにも挑戦し、チーム全体のダンススキルの底上げにつながった。

観客の前で演技ができ、かけがえのない経験となった

それぞれの演目にはメッセージが込めらている。ポンとジャズを組み合わせた大人っぽい振り付けの「No Roots」は「かっこよく踊りを楽しむこと、観客を楽しませたい」という思い。「躍進」は「結束して躍動して進んでいくぞ」という思い。得意のポンポンを使ってエネルギッシュでパワーあふれる演技を届けた。

観客がいてこその舞台

町田助教はチアダンスをアートとスポーツの重複領域である「アーティスティックスポーツ」と捉える。「チアダンスには舞踊芸術とスポーツ競技の両側面があり、フィギュアスケートと共通する点がいくつもあります。アーティスティックスポーツは踊って表現するものであるため、演者、作品、観客という3者関係がないと成り立たない身体文化なのです」と語った。

木俣も「一緒に楽しい空間をつくっているというか、お客さんがいてできる経験だと改めて思いました。本番はあっという間で、先輩たちは頼もしくかっこよくて、本当に一緒にできてよかったなと思います。同期を含めチームメイト全員が前向きな姿勢で私を助けてくれて、一緒に進んでいけたことがよかったと改めて思いました」

笑顔で踊る主将の木俣侃己

公演を見届けた町田助教は「学生は観客の前で踊ることができず、忸怩(じくじ)たる思いで活動されてきたと思うので、こうした文化芸術ホールでお客様にSEALSのパフォーマンスをお届けする機会を設けられましたことを、本当にうれしく思っています。とくに4年生はこの舞台で、チアダンス競技から引退する方がほとんどです。チアダンサーとしてのキャリアを成就させてほしいと願っていました。ですので、この舞台を一つの節目にしてもらえたらと思います」と目を細めた。

SEALSは10月末に全国選手権大会の予選を控えている。大会は感染拡大の影響で会場での開催から変更されることも懸念されるが、公演をへて成長した部員たちは先輩たちの思いを引き継ぎ、さらに躍進した姿を見せるため練習を重ねていく。

大会への意気込みを聞くと、「目標は1位をとることです」。木俣のとびきりの笑顔がはじけた。

【写真&動画】躍動感あふれる演技が見られます

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