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現役CAは何のために踊るのか

現役CAは何のために踊るのか
JAL入社5年の平本さんは乗務の傍ら、JAL JETSのメンバーとしてダンスを踊る

「チアダンスは大学で終わり。そう思ってました」。日本航空(JAL)入社5年目の平本亜佑美さんは、いまもチアダンスを踊っている。本職は客室乗務員(CA)。JALが運営するチアダンスチーム「JAL JETS」のメンバーは全員が現役CAという、華やかすぎる集団だ。

思っていたよりも体育会系

JAL JETSはCA主体のドリルチームを経て、JAL民営化(1987年11月)の翌年に発足した。就航地でのイベントやJAL協賛の大会などでダンスを披露し、JALの認知拡大やイメージアップに貢献している。加入条件はCAであることだけだが、「本職をしっかりできるようになってから」という思いを込めて、「入社半年以後」を加えている。現在、メンバーは14人。経験は問わないものの、新体操やクラシックバレエ、ヒップホップダンスなどの経験者が集まっている。

平本さんは高校時代、野球部のマネージャーだった。自分たちチームを勇気づけてくれたチアリーディングに、「私もやってみたい」という思いを膨らませた。大学では迷わずチアリーディング部に入った。当時の部員は多くても20人程度。競技大会を目指すには少なかったため、大学内のイベントがメイン舞台となった。東京マラソンでもゴール付近で応援した。

高校のときに目にした華やかさから、和気藹々(あいあい)な雰囲気を期待していたが、思っていたよりもずっと体育会系だということを早々に知った。コーチから技術的なアドバイスを得て、ダンスの構成は全て自分たちで考えていた。「放課後だけじゃなくて朝練もやってました。練習のときは全員が集まり、集中して取り組んでました。目標としていた学祭の前には夏合宿もありましたね」と、当時を振り返る。

もっとも記憶に残っているのは最後の学祭だ。いままでで一番大きなピラミッドのスタンツをやりたいと構想し、上に3人が乗る12人のピラミッドに挑んだ。ほぼ全員、目立つトップを希望した。平本さんも思いは同じだったが、長身ゆえに下を任された。「上には小柄な子がいくんだなってことは次第に分かりました。下はぜんぜん日の目を見ないので、最初はすごくいやだったんですよ。でも、『下がいるから上がいる』っていう先輩からの教えで踏ん切りがつきました」

いざやってみると、これが全然上がらない。悔しくてコーチにアドバイスを求めたところ、課せられたのが腹筋と背筋を各100回、きれいなかたちでの腕立て伏せを30回。「そのぐらいやらないとできないから」というコーチの言葉で、毎日就寝前に取り組んだ。その努力が実り、本番では一番きれいなスタンツを上げられた。「やっぱり努力は裏切らないなって、そのとき思いました」。自分が土台になっている思い出を振り返り、平本さんが笑った。

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平本さんは最後の学祭で、難易度の高いスタンツを下で支えた(写真は本人提供)

見るだけで元気になれる唯一のスポーツ

大学卒業後は小学生のときからの夢だったCAになった。そして入社後すぐに、社内更衣室のロッカーに貼ってあったポスターで、JAL JETSの存在を知った。チアダンスがあるんだ、やってみたいなと思ったそのとき、一緒にポスターを見ていた同期が「やりたいな」とつぶやいた。そのふたりもいま、JAL JETSのメンバーだ。

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先輩たちの想いとともにユニフォームを受け継いだ

「『本当にCAさんなの? 』って驚かれることもあります。『CAだったら、練習する時間もないでしょ』って」。入社5年目の平本さんは、国際線乗務が増えてきたため、全体練習に参加できない日も少なくない。いまは自宅での個人練習がメインになっているそうだ。動画でもらった振り付けを見ながら、自宅の姿見の前で練習。ときにはステイ先のホテルも練習場になる。

「時間をやりくりしながらというのは大変ですが、私たちをきっかけにして『JALに乗ってみたい』『JALってこんな会社なんだ』って思ってもらえたりする。架け橋になってると思うとやりがいを感じます。JALが協賛するホノルル駅伝に行ったとき、『やっと会えたよ』って言ってもらえたのはうれしかったです。私たちに会いたいと思ってくれる人もいるんだなって思うと、続けていこうとやる気がわいてきます」

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JAL協賛の「よなよなエールの超宴」でも、ダンスを披露した(撮影・藤井みさ)

JAL JETSのメンバーは目安として最大24人までに定めている。「24人まで増えたら、またスタンツができるのでは? 」と平本さんに尋ねると、「JAL JETSはチアダンスがメインなので難しいかもしれません。でも、チャンスがあったらやってみたいです」と答えてくれた。メンバーに年齢制限はないものの、仕事でキャリアを積むとJAL JETSまで手が回らないのが実情だ。これまでチーフのメンバーはいないようだが、平本さんは「体力が続く限り頑張りたい」と話す。

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CAとしての仕事が第一。でも、JAL JETSだからこそできることにやりがいを感じている

最後に、チアダンスの魅力を平本さんにうかがった。「チアという言葉には人を元気づけるという意味があります。どのスポーツも人に元気を与えられるものだと思いますが、ただ見るだけで元気になれるのはチアダンスやチアリーディングだけだと思います。応援する気持ちを伝える。それが、私が目指すチアダンスです」。インタビュー中も笑顔を絶やさなかった平本さんは、CAとしての日々でもチアスピリットを貫いている。

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