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特集:第50回全日本大学駅伝

もうひとつの全日本大学駅伝 駒大ブルーペガサスの責任感

もうひとつの全日本大学駅伝 駒大ブルーペガサスの責任感
駒大アンカーの山下(左)がブルペの前を通過すると、ひと際大きい声援が飛んだ。八斗が「感動する」と話した瞬間だ

全日本大学駅伝は陸上競技部だけでなく、各大学の応援組織にとっても晴れの舞台である。毎年12月で引退する駒大應援指導部「ブルーペガサス(以下、ブルペ)」の4年生にとっては、これが最後の駅伝応援。スタート地点の熱田神宮でメドレー応援を披露すると、ゴール地点の伊勢神宮では第一応援歌「燃えよ闘魂」を25分間エンドレスで演技。走りを後押しした。

エンドレス応援「苦痛に感じたことはない」

代表代行兼チアリーダー部部長の太田芙海(ふみ、4年、香蘭女学校高等科)はレース後に言った。「応援が結果に直結するわけじゃないし、結果に一喜一憂するために来たわけでもない。でも、もっとやれることがあったんじゃないか、もっと力があれば結果が変わってたんじゃないかって考えてしまう。無事に行程は終わったけど、終わった達成感、開放感よりは次の代に何を残せたかな、自分の代で何かが途切れてしまったら嫌だな、という責任感が残ってます」。複雑な表情を浮かべ、ゆっくり丁寧に言葉を絞り出した。

ゴール地点手前でのエンドレス応援はスペースが限られているため、チアリーダーは選抜された4人だけが踊り、他の部員は横で声出しに専念する。最後ということで、当初は4人をすべて4年生にしようと考えていたが、結局来年以降のことを考えて各学年1人ずつにした。数ある応援の中でも、駅伝のエンドレス応援は特別だそうだ。「毎年、選手を間近に見られる新鮮さ、誰よりも近くで応援させてもらってることへの感謝の気持ち、そしてここに立たせてもらってる責任を感じる。踊りたくても踊れない人もいるので、『任せてもらった』という気持ちになってくれてたらうれしいです」と語った。25分間も踊り続けるが、「苦痛に感じたことはない」と言いきる。

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エンドレス応援を行うブルペ。前列左側、オールバック姿が代表代行兼チアリーダー部部長の太田

全日本大学駅伝でのエンドレス応援は太田自身3度目。「正面からは一般の方、後ろからは部員が見てます。へこたれた姿を見せたら、ここに来た意味がなくなってしまう。体力的にはきついのかもしれないけど、気持ちが勝つんだと思う。ぜんぜん長く感じないし、とくに今回はいちばん短かく感じました」。これも人一倍の責任感があるからこそだろう。

熱田神宮ではメドレー応援後、これまではスタート時に校歌を歌っていたが、「もっと声とパフォーマンスの覇気で選手を後押ししたい」と、今年は第一応援歌にした。「与えられた環境で、できる限りのことはした」と太田。ゴール後には陸上競技部の大八木弘明監督から「目標にしていた3位に届かなかったのはすごく悔しいけれども、君たちの応援の声が勇気をくれた」と感謝されたそう。「直接ありがたい言葉をいただいて少し報われたし、これ以上のことはないと思ってます」。こう振り返った太田の顔に、少し笑みが浮かんでいた。

ひたすら信じて、待つ

しみじみと、「応援は縁でできてると思いました」と語ったのは、副代表でリーダー部の八斗絵里(はっと、4年、松戸国際)だ。今回の応援活動に関する庶務は副代表の仕事。応援を始めるタイミングの指示に始まり宿泊場所や同窓会関係の対応まで、八斗が担当した。

全日本の前夜は毎年、愛知県内の地蔵寺に宿泊する。今年で17年目になるそうで「大人数で迷惑じゃないかなと思ってたんですけど、毎年すごく快く受け入れてくださる。なんでこんなに長い間続いてるんだろう、すごいなと思った」という。

八斗は事前に全日本の応援活動の要綱を作成し、地蔵寺や駒大愛知県同窓会に送付。その後、打ち合わせの連絡もたびたび。「負けず嫌いだから『いい代にしてやる』と思ってました。それぐらいやってミスがないようにすると『今年はすごくしっかりしてるね』と言ってもらえました」と笑った。

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ゴール後、校歌斉唱のセンターリーダーを務める八斗

ゴール後には隣で応援していた東洋大学應援指導部、東海大学応援団とエール交換。これも縁だ。東洋大とは以前から長いつき合いがあり、毎年エール交換をしているそうだ。自然と「やらないと終われないよね」と盛り上がったというが、東海大とはあまり関わりがなかった。「10月25日の応援団会議の後に『3校でやろう』って話しました。やらないといけない決まりがあるわけじゃないんですけどね」。これで新しい縁もできた。

駅伝応援が独特なのは、いつ選手が走ってくるか分からないところだという。熱田神宮からバスで伊勢神宮に到着したブルペは、駒大選手のゴール予想時刻20分~25分前から第一応援歌の演技を開始。選手が通過するまでエンドレスで応援する。レースの動向を確認できるのは、責任者である八斗だけ。ほかの部員は状況を知らないまま駒大の選手が来るのを待つ。「野球応援なんかだと勝ってるか負けてるかすぐに見えるけど、駅伝応援中は分からない。逆転してるかもしれないし、逆転されてるかもしれない。ひたすら信じて待つしかない」。それだけに選手が目の前を通過した瞬間は「あ、通った、待ってたよ」と感動するそうだ。

熱田神宮でのスタートから5時間14分後の13時19分、駒大アンカーの山下一貴(3年、瓊浦)が4番目にブルペの前を通過すると、ブルペ部員からひと際大きい声援が飛んだ。「以前はただ応援すればいいと思ってましたけど、幹部として箱根駅伝と全日本大学駅伝を経験して、『いろんな助けがあってできてるんだな』と見方が変わりました。いまは応援させてもらってるだけでうれしい、って感じます」。八斗が晴れやかな顔で言った。

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ゴール後、観客に挨拶をする太田

4年生にとって、残る大舞台は12月16日の定期公演「天馬祭」だけになった。4年間の責任感と感謝を胸に集大成を披露し、ブルーペガサスの誇りを持って巣立っていく。

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