陸上・駅伝

特集:第50回全日本大学駅伝

伊東颯汰、ニュータイプの走りで駒大の起爆剤へ

伊東は初の大学駅伝となった全日本で、区間5位と健闘した

駒大2年の伊東颯汰(そうた、大分東明)は10月13日の箱根駅伝予選会では個人21位と、ハーフマラソンの自己ベストを大幅に更新する走りで存在感を見せつけた。11月4日の全日本大学駅伝で学生駅伝初出場を果たし、箱根駅伝へとアピールした。

駒大らしからぬロケットスタート

高校時代は主将としてチームを牽引。全国高校駅伝では学校史上最高順位の4位入賞に大きく貢献した。駒大入学後は、高校時代から実績のあった加藤淳(2年、西脇工)や大学でブレイクした小原拓未(2年、一関学院)などの同期に刺激を受け、厳しい練習もしっかりとこなしてきた。

だが結果がついてこなかった。昨年11月の上尾シティマラソンではスタミナ不足が露わになった。出場した駒大勢ではダントツの最下位である214位。記録は1時間8分20秒と苦々しいハーフマラソンデビューとなった。3月の立川ハーフマラソンでは自己ベストを更新したものの、目標としていたタイムには及ばず、成績も芳しいものではなかった。

伊東は最初からグイグイ飛ばし、集団を引っ張るスタイルの選手だ。中盤からジリジリとペースを上げていく駒大勢の中では異質である。序盤で飛ばした分、中盤から終盤にかけて大きく失速してしまうのが昨年の一番の課題だった。

自己記録を続々更新

その「失速癖」に変化が生じた。2年に上がってすぐの4月、日体大記録会にて大学初の10000mのレースに挑戦した。同じ組には大坪桂一郎(3年、鳥栖工)や山下一貴(3年、瓊浦)らもおり、いつも通り、最初から飛び出した。3000m前後で順位を落とすも、終盤でスピードを上げ、その組の駒大勢ではトップの2位でフィニッシュ。このレースが伊東にとってのターニングポイントとなった。

大学初の10000mのレースがターニングポイントとなった

6月の世田谷記録会で5000mの自己ベストを大幅更新。目標としてきた13分台に迫る走りを見せた。その1カ月後のホクレンディスタンス深川でも、10000mで自己記録を塗り替えた。夏は苦い記憶が残るハーフマラソン克服を目して合宿に臨んだ。練習の疲れが抜けない中でも「これを乗り越えたらもっと力がつくはず」と自身を鼓舞し、箱根駅伝予選会のメンバーに入るために必死で監督、コーチにアピールを続けた。

迎えた箱根駅伝予選会。自身に設定されていた64分30秒という目標タイムを大きく上回る63分台前半でゴールに飛び込み、周囲を驚かせた。中だるみをしてしまう悪癖への対策として右腕に記した「男だろ」の言葉が、伊東を奮い立たせてくれた。

自己ベストを次々と更新する調子のよさに、大八木弘明監督は伊東を全日本で5区に抜擢した。4区では順大の塩尻和也(4年、伊勢崎清明)が10人抜きで4位に浮上し、駒大もその餌食となった。5位で襷(たすき)を受けとった伊東はいつも通り、猛スピードでスタートを切った。すぐさま目の前の順大を追い抜くと、中継所地点で競り合っていた明大とも差を広げた。途中、明大に追い抜かれるも意地の走りで後ろにつけ、合流した東洋も巻き込み三つ巴で中継所まで走り続けた。

結果は区間5位。順位も一つ上げて6区の中村大聖(3年、埼玉栄)につなぎ、「いい経験をした。これを次につなげてくれれば」と大八木監督からも高評価を得た。最初から出るという駒大には珍しいスタイルの伊東が、チームにどんな化学反応を起こすのか、注目したい。

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