インタビュー

特集:第50回全日本大学駅伝

和田正人の駅伝観 全日本でやり残したこと

和田正人の駅伝観 全日本でやり残したこと

青学が2年ぶり4度目の優勝を果たした出雲駅伝から早1カ月。次なる舞台、全日本大学駅伝が11月4日に迫っている。さらにその約2カ月後には箱根駅伝だ。この「学生三大駅伝」をすべて、日本大学の選手として走った俳優の和田正人は、いま、どのような思いで大学駅伝を見ているのだろうか。和田正人の駅伝への想いを、不定期企画でお届けします。

全日本は鬼門

今回は全日本大学駅伝について話をうかがいたい。インタビューでそう切り出したものの、和田正人の第一声は「いい思い出がないから、記憶があまり残ってないんですよ」。三大駅伝の中で唯一、全日本だけ自分の納得できる走りができなかったという。

1年生のときは日大が出場しておらず、2年生のときは区間17位。「わりといい成績を出して走れてた時期」と話す3年生のときは区間4位と上位だったが、「疲労が蓄積していたのか思うような走りができませんでした」と振り返る。4年生のときは故障で見送った。和田正人にとって「全日本は鬼門的な駅伝」と位置づけられた。

 和田正人記事メイン画像

10月から始まる駅伝シーズンの中で、出雲駅伝は距離が短く、出だしということもあり、照準をあわせやすいイメージがあったという。その一方で、全日本は出雲から1カ月しか開いていないため疲れも抜けず、総じてうまく調整ができなかったと感じている。だからこそ、全日本で勝てるチームは“本物”であり、紛れもなく“日本一”だと。「全日本で勝つってことは、よっぽどなこと。どの駅伝に関しても勝つことは難しいと思いますが、全日本はその勢いが直接的に箱根に結びついていくので、ここで勝つのは大きいですよね」

いま分かる「仲間に対する想い」の大切さ

改めて大学時代を振り返り、「やり残したことだらけ」と話す。「けがが多かったので。1年生の時から走るチャンスはあったはずなのに。けがなく練習を継続的にできていたら、どういう成果につながっただろうかと思うことはあります。学生ならではの未熟さの表れなのか。そういうところをうまくコントロールできる組織力があれば、チームは強くなれると思います」

チームとしての強さ――和田正人にはある後悔があった。駅伝主将を事実上、引き受けなかったのだ。4年生になった際に駅伝主将就任の打診があったが、自分の競技だけに集中したいがために断った。別の4年生が担ったものの、その選手は夏で駅伝チームを離れた。結局、駅伝シーズンだけということでしぶしぶ引き受けたという。しかし、そのときは故障をしていたため、主将らしいことは何もできなかった。最後の箱根に向けて出雲も全日本も回避し、応援にも行かなかった。そしていま、社会人になって思うのは「最初から主将をやっておけばよかった」ということだ。

和田正人本文②

「自分のことだけ考えて何かを成し遂げようと思っても絶対に無理なんですよ。自分がこうなりたいああなりたいと願うなら、環境がよくなることを考えないといけなかった。少しでもいいタイムで走るにはどうしたらいいか考えるじゃないですか。そのためにムードをつくったり、チームをひっぱったり。まわりのことを考えて、まわりとともにやろうとして初めて、個人の能力も高くなることを、当時のぼくは理解してませんでした。

いま、ぼくがあのときに戻れたら、キャプテンの仕事をまっとうする。自分がだめだったときなら、まわりをもっと盛り上げて、チームのために自分の力を使います。そうした方が、絶対責任も背負えるし、自分自身の心も強くなれる。そう思える自分だったら、もしかしたらけがなんてしてなかったかもしれない。もっともっとチームとしてよかったかもしれないし、個人としてもいい成績を残せたかもしれない。

やっぱり、いま思うんですよ。自分と向き合いすぎることはよくないって。駅伝は同じ釜の飯を食べてる仲間たちと一つのことをなし得ることができるスポーツなので、『仲間に対する想い』って言うとちょっとクサいところもあるかもしれないけど、その想いが力になることもあるんだなって感じました」

 和田正人本文③

和田正人は2002年の第78回箱根駅伝で最後の大学駅伝を駆け、実業団のNECに進んだ。しかし、03年に陸上部が廃部。そこで目指したのが俳優だ。長距離ランナーの経験はテレビドラマ『陸王』でも生かされ、今年の11月14日からは1964年の東京五輪で銅メダルを獲得した円谷幸吉とその4年後のメキシコ五輪で銀メダルをとった君原健二の物語をテーマにした舞台『光より前に~夜明けの走者たち~』に、円谷のコーチ役として出演する。11月4日にある全日本大学駅伝は、まさにこの舞台稽古の真っ最中。「もちろん見ますよ。いままでも全部見てますから」と、笑顔で言った。

全日本大学駅伝を見たことがない人に何か一言お願いします。そのお願いに和田正人は「たった4年間で何度走れるか分からない、その1回の走りは、きっと心になにか灯火を与えてくれる。選手の顔とか名前とか分からなくても、見れば絶対感じるものがあるから」と返した。和田正人の大学駅伝に対する想いは、いまも熱い。

和田正人(わだ・まさと)

1979年8月生まれ。高知県出身。高知工高から日大を経てNEC。三大駅伝は、出雲2回、全日本2回、箱根2回出場。2013年、NHKの連続テレビ小説「ごちそうさん」で主人公の幼なじみを好演。近年の主な出演作にNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」、TBS「陸王」など。また、今年の11月14日からは1964年の東京五輪で銅メダルを獲得した円谷幸吉とその4年後のメキシコ五輪で銀メダルをとった君原健二の物語をテーマにした舞台『光より前に~夜明けの走者たち~』に、円谷のコーチ役として出演する。ワタナベエンターテインメント所属。

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