陸上・駅伝

特集:第50回全日本大学駅伝

青学2冠目、原監督が語った「大学スポーツの原点」

青学は10月の出雲駅伝に続く2冠目を手にし、史上初となる「2度目の3冠」に王手をかけた

全日本大学駅伝

11月4日@熱田神宮西門前~伊勢神宮内宮宇治橋前の8区間106.8km
1位 青山学院大 5時間13分11秒(2年ぶりの2度目の優勝)

「メラメラ大作戦、大成功! よしっ」。目線を要求するテレビのカメラマンに、何度も何度も応じていた。学生三大駅伝の2戦目、伊勢路での全日本大学駅伝は優勝候補ナンバーワンの青山学院大が終盤の逆転で圧勝した。10月の出雲駅伝に続く2冠目を手にし、レース後は持ち前のサービス精神を発揮していた原晋監督(51)。その一方で、「大学スポーツの原点」について熱く語っていた。

「ダブル吉田」の快走から逆転劇へ

7区(17.6km)でトップの東海大に追いつき、逆に大きく引き離した優勝の立役者、主将の森田歩希(ほまれ、4年、竜ヶ崎一)は振り返った。「3区で少し(1位の東海大から)離された。東海大の5区は鬼塚選手。うちは初駅伝の吉田祐也。ここで離されると厳しいかなと思った」。しかし、吉田は駅伝経験豊富な鬼塚翔太(3年、大牟田)に引き離されるどころか、2秒上回って区間賞をとった。

森田は東海大の湊谷(みなとや)との「主将対決」に完勝した

さらに、先頭の東海大に24秒差でたすきを受けた6区の吉田圭太。出雲駅伝で初駅伝ながら4区の区間賞だった2年生は、この日も区間賞の走りで11秒差に縮め、森田につないだ。

「ダブル吉田」は9月の全日本インカレで、10000mの祐也と5000mの圭太がそろって日本選手最高の3位となった新戦力。森田は「5、6区で(東海大との差を)詰められたのが大きかった。選手層が厚くなったおかげです」と、ダブルの奮闘を勝因に挙げた。

吉田圭太は高校駅伝の強豪、世羅(広島)の出身。都大路では4区で出場した2年のときに全国制覇し、3年で「花の1区」を走った。「去年、自信を持って入学したんですけど、強い先輩がたくさんいて一気に自信をなくしました」。それが今シーズン、開花した。「4年生から、『けががなく、お前は練習できてるから大丈夫だ』と言ってもらえた。地道に練習して自信を取り戻しました」。きっかけをつくってくれた先輩への恩返しとなる好走だった。

吉田祐也は監督のゲキに、左拳を固めて応じた

森田主将は「今年は4年生の層が厚いので、下級生が走りやすい環境を整えようとしてきました。その結果、チームとしてよくなってきた」と語る。昨年は複数ある寮単位で開いていた目標管理ミーティングを、情報共有のために全体で集まって開くようにした。主将やマネージャー、寮長、学年長のチームミーティングの頻度も上げて、毎月1回にした。カリスマ性で引っ張るタイプではない、と森田は同級生の協力を求め、全体でチームを引っ張るスタイルを選んだ。それも「別に監督に許可を得るわけでもなく、普通に内輪でやってます」ということだ。

そこで冒頭の「大学スポーツの原点」の話だ。

原監督は言う。「当初は私が前面に出てガチャガチャ言ってましたけど、いまは引いて、学生たちが自ら考え行動するような仕組みができました。指導者が1から10まで何でもかんでも管理、指導するのは、本来よろしくない傾向なんですよ。いまは学生たちを見守りながら、というところかな」。自主性を背景に、トレーニングや体のケアなどをする「青山メソッド」ができあがってきており、「それをきちっとクリアした子が選手に選ばれてます。強豪チームのレギュラーとしてのプライドがあり、それだけの練習をして、学内選考を経ている」と説明。「私がすべて管理したのでは、私以上のものにならない」と力説した。

アンカーの梶谷。2位東海大に2分20秒差をつけた

次は4連覇中の箱根駅伝。過去に優勝が1度だけだった全日本を制し、「改めて難しいと思った。選手層を厚くしないと勝てない大会です。史上初となる『2度目の3冠』にむけて、手応えをいただいた大会でした」。原監督の手応えは戦力面だけではない。チームづくりへの自信も、大きく膨らませているようだ。

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