「あゆしん」がシニアデビュー戦で2位 全日本選手権へ「自分たちの力を試したい」
フィギュアスケートのアイスダンスで、早稲田大学の高浪歩未(あゆみ、ケイ・インターナショナル東京)、西山真瑚(しんご、目黒日大高)組が9月、カナダ・ケベックで開催されたローカル大会に出場、シニアデビュー戦を銀メダルで飾った。「あゆしん」の愛称で親しまれる二人は21年3月にカップルを結成。現在はカナダ・トロントを拠点に練習を積んでいる。今シーズン初戦の手応え、目標の全日本選手権に向けた意気込みを聞いた。
リズムダンスで高評価「驚きとうれしさ」
――シニアデビュー戦で銀メダル、おめでとうございます。
西山 ありがとうございます。シニアの大会に出るんだというドキドキがありました。大人の世界に入るんだと(笑)。アップしているときからジュニアとは雰囲気が違うなと思っていました。その中で自分たちは自分たちなりのシニアの舞台で初戦から見せられたのかなと。いい形でカナダのジャッジ(審判)の方に評価してもらえて、満足した演技でもあり、結果でもありました。
――特にどこが評価されたと感じていますか。
西山 リズムダンスの課題にパターンダンスのミッドナイトブルースステップがあります。オンタリオでもローカル大会(映像審査)があったのですが、どちらの大会でも(最高の)レベル4をとることができました。アイスダンスでレベル4をとるのはすごく難しいことで、本当に驚いています。いままで練習してきたところをしっかり評価してもらえてすごくうれしかったです。
高浪 私は1年間パートナーがいなかったブランクに加えて、新しいチームとして出ることに緊張する部分があったのですが、それ以上に二人の初めての試合を楽しみたいというのがありました。大きなミスがなく、いい演技ができましたし、ここまで高い評価をいただけるとは思っていなかったので驚きとうれしさがありました。
◆画像バナーから選手へ寄付・応援を送ることができます。
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――プログラムづくりはどのように進めたのですか。
西山 リズムダンスは『Daydreamin’/I Need You』という曲で、カナダ・バンクーバーにいるアーロン・ロウ先生とメーガン・ウィング先生にリモートで振り付けをしてもらいました。
高浪 リモートの映像だと左右が反対になるので、どちらの手を上げているのかわからなかったり、ポジションが合っているのかわかりにくかったりして難しかったです。日本にいるときは氷上の時間が限られていたので陸上や一般滑走の時間を使って練習していました。カナダに渡ってからはバンクーバーに行ってアーロン先生とメーガン先生に直接教えてもらい、集中的に取り組むことができました。
西山 フリーダンスのミュージカル『パリのアメリカ人』はイーゴリ・シュピルバンド先生とパスカーレ・カメレンゴ先生の振り付けです。春にアメリカ・ミシガンで練習しているときにつくってもらいました。6月下旬にカナダに渡ってからは試合に向けてプログラムの練習をがんがんやっていました。
――大会で手応えを得た一方、課題は見つかりましたか。
高浪 フリーダンスのスピンがレベル2だったので伸びしろがあります。あとはユニゾン(調和)。アイスダンスをやる上でいつになっても課題になるのですが、手や足の向きとか動かし方とか、そこはもう少し強化できると思います。
――結成から半年がたちました。どんなところが成長していると思いますか。
西山 拠点のクリケットクラブで一緒に練習しているジュニアのカナダ代表カップルがいます。世界トップで活躍している選手と一緒に練習することでスピード感だったり表現力だったりを見て学ことができます。そこは高浪選手も僕も上達したのかなと思います。
フリーダンスでは若さを表現
――今季のプログラムの見どころを教えてください。
西山 リズムダンスはブルースとストリートダンス(ヒップホップやスイングなど)が課題であるのですが、僕たちの曲は演技後半で雰囲気ががらっと変わります。後半はお客さんと一緒に楽しめると思います。すごく面白い振り付けが入っていて、特にミッドラインステップが見どころです。振り付けの先生からは「クレイジーに踊って」と言われているパートもあります。
高浪 フリーのダンスは最初から元気いっぱいの振り付けです。全日本選手権では一番若い選手になると思うので、若さを表現しつつ、シニアのスケーティングや滑りを見せたいなと。見どころは最初のコレオステップです。中盤ではスローパートの曲を挟み、後半のステップで盛り上がっていきます。一番速く動く部分がローテショナルリフト(回転しながら滑るリフト)からステップに続くところで、二人とも疲れがくるんですけど、スピードを落とさず最後まで演技したいです。何度も曲かけをして体力をつけて慣れていかないといけないと思っています。
――カナダでの生活はいかがですか。勉強も大変ですか。
西山 平日は朝6時半から3時間くらい練習しています。僕はお昼にシングルの練習もして、お昼を食べたらトレーニングか学校の勉強をして。家に帰ったら夜ごはんを作ってストレッチして寝るという生活です。1日が充実していて時間がたつのが早いです。大学の先輩である羽生結弦選手(ANA)も学校の課題をこなして卒業しているので僕も頑張っています。
高浪 拠点が海外になったのでオンデマンドの授業を中心に取っています。自分たちが大きな目標としている2026年のオリンピックまでに大学を卒業したいです。競技と授業の両立は難しいのですが頑張っています。
全日本でベストパフォーマンスを
――今シーズンの目標を教えてください。
西山 全日本選手権に出場してベストパフォーマンスを披露するのが目標です。どれだけシニアの実力についていけるのか思いっきり自分たちの力を試したいです。
高浪 私たちは結成して1年目ですが、長く組んでいる他のカップルに負けずに、ユニゾンやシニア1年目には見えないような滑りを見せたいと思います。
――全日本選手権では小松原美里、尊組(倉敷FSC)、村元哉中(かな)、高橋大輔組(関大KFSC)ら実力者と戦うことになりますね。
西山 どのカップルがオリンピックにいくんだろうと観客みたいな感じになるかもしれませんが、そこはあこがれというか。自分たちは自分たちなりに、どこまで上位に食い込めるかを目標にしていきたいです。
高浪 小松原組、村元、高橋組の両カップルともオリンピックイヤーということで、日本文化にちなんだ曲を選択され、日本文化の魅力を伝える素敵なプログラムになっていると思います。今回、大会に一緒に参加させていただくことで、先輩カップルから多くのことを学び、自分たちもいつか日本を代表するようなプログラムを演技したいと思います。