GT日本勢の精神的支柱 山中智瑛選手に聞く「勝つための方法論」
日本の精神的支柱――。「グランツーリスモ」(GT)の世界選手権シリーズ「ワールドツアー」、2019年の車メーカー対抗戦で優勝メンバーの一人となった山中智瑛選手は、まさにそんな存在です。同年の全国都道府県対抗eスポーツ選手権も制した山中選手に、「勝つための方法論」や、他の日本選手たちへの思いを聞きました。
「すごかったんだな、俺たち」
山中選手にとって、2019年は躍進の年でした。
茨城国体の文化プログラムとして開催された全国都道府県対抗eスポーツ選手権のGT一般の部で栃木県代表の1人として優勝に貢献。ワールドツアーでは、車メーカー対抗の3人1組のチーム戦「マニュファクチャラーシリーズ」でトヨタチームのメンバーとして、ファイナル制覇を果たしました。
国際自動車連盟(FIA)の表彰式では、F1の王者ルイス・ハミルトン選手も居並ぶ場で、栄誉をたたえられました。
「2018年のワールドツアー1年目は、マニュファクチャラー2位で、(国別対抗の個人戦)ネイションズカップも4位となかなか勝てなかった。今年は絶対取ってやろう、とチーム3人、状態は良かった。目標通り優勝できて本当に良かったが、日を追うごとに『やっぱり勝ったんだ、俺』という思いが出てきて、FIAで表彰された時、『すごかったんだな、俺たち』と改めて感じた」と振り返りました。
なぜ勝てるようになったのでしょうか?
山中選手は、6月にあったワールドツアー2戦目のニュルブルクリンク大会を制したことで、「そこから状態が良くなった」と指摘します。
「勝ち出すと、物事がうまく回り出す。何をしたら良いか、何をしたらダメか。独特のフィーリングが分かるようにある」
一番大きいのはメンタル面だそうです。
「勝つことで、物事の筋道ができていって、より勝ちやすくなる。全部つながった瞬間、(筋道が)一本になる。勝てないとつながらない。瞬間的な判断については、そんなに頭では考えていないはず。迷ったら勝てない。迷いそう、となったその瞬間で既にダメ。負けている時は、うまく回らないからこそ、うまく行っても勝てない」と語ります。
今の悩みを聞いても、「あまり迷うことがない」ときっぱり。
「勝てない時は、うまく準備をしきれていない。自信を持って臨めているのか、練習で自分の100%を出しているのか。ちゃんと材料をそろえているのかが大事」と話します。
「ライバルだけれど、仲間」
1993年生まれの26歳。ワールドツアーに参加する日本のトップ選手の中では最年長です。
2020年のワールドツアー初戦、シドニー大会では、ネイションズカップで日本の宮園拓真選手が初優勝。その瞬間、我先にと宮園選手に駆け寄り、祝福の抱擁をしました。
他の日本人選手たちについて、「ライバルだけれど、仲間」と話します。
「一緒に戦うとなにくそ、という気持ちがあるけれど、同じところから旅立って戦っているから、やはり勝って欲しい」
他の日本選手のタイムや走らせ方を見ながら「何に困っているんだろう」ということを見つけ、不安を取り除いてレースに臨めるよう、アドバイスをしているそうです。
ライバルとして挙げる一人は、その宮園選手。「すごく応援している、可愛がりたくなる弟」と言いながらも、その持ち味である「速さ」については、「あの才能は僕にはないので、補わないと」と脅威に感じています。
「最後のコンマ1秒、2秒の100%の限界点。その感覚をつかむのがめちゃくちゃ上手。1周をまとめる力は、國分(諒汰。2019年ワールドツアー東京大会ネイションズカップの優勝者)君も上手だが、そこが自分は微妙につかみきれない。残りの1%、才能に依存する部分だと思う」と評します。
大会中、山中選手を含め日本勢が仲良く行動する姿がしばしば見られますが、これからも引き続き切磋琢磨して行くつもりです。
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(文・永田篤史)