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特集:ウインターカップ2022

バスケと看護師の夢、全力で追った 最多23点の福島東稜・渡部奈月

福島東稜の渡部奈月(撮影・松本麻美)

 (バスケットボール全国高校選手権1回戦、桜花学園106―55福島東稜)

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 両チーム通じて最多となる23点を挙げたのは、敗れた福島東稜の渡部奈月(3年)だった。この試合を最後にプレーヤーから離れる。バスケットで輝くことと看護師になる夢を、「どちらも100%で」追いかけた3年間だった。

 女子で2年連続2度目の出場を果たした福島東稜は、前年覇者・桜花学園を相手に最後まで攻めの姿勢を崩さなかった。

 高身長の選手がそろう桜花学園を相手に思うようにシュートが打てない。そんな中で、積極的にボールを受けた161センチの渡部がディフェンスを押しのけながらドライブで切り込んで得点した。点差があった後半は積極的に3点シュートを決め、チームを勇気づけた。

 10歳離れた兄が医師であることに影響を受けた。身近な兄が、他者の命を救っている。憧れた。患者に対して親身に接することができる看護師を志した。

 看護科の渡部は病院実習の期間もあり、練習に遅い時間から参加することもあった。

 「勉強との両立はすごく大変でした」

 時間はどちらかに100%はかけられない。

 「体育館に来たら勉強のことは置いて、バスケに100%でいけるように本当に自分のなかで考えて切り替えていました」

 練習が終われば、机の前でまた切り替えた。

 渡部の姿を見守ってきた古川清春監督は「練習に出られない分は、朝練でカバーしていたのでしょう。中学校から有名な選手でしたが、一番伸びたんじゃないでしょうか」と目を細める。

 限られた時間で二つを追ったからこそ、気づいたことがある。

 「勉強って、その1回だけで終わるんじゃなくて、自分で必要だと思って決めたことはやり続けることが大事だなと。それはバスケで成長できた継続力とつながっていました」

 今後は福島東稜の看護専攻科に進んで2年間学び、国家試験に挑む。

 「バスケで伸ばした観察力や気づく力を生かして、患者さんの小さな変化にも気づけるように。寄り添えるって言ったら大きいかもしれないけど、信頼される看護師になりたいです」

 この日、多くのパスを受け、誰よりもその期待に応えた渡部。積み上げた信頼があったから、バスケット最後の舞台で輝いた。

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朝日新聞のウインターカップ2022特集
(平田瑛美)

=朝日新聞デジタル2022年12月23日掲載

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