国士舘大学・川勝悠雅主将 100人超の意識を同じ方向へ向け、箱根駅伝に返り咲きを

国士舘大学は箱根駅伝で、2017年の第93回大会から8大会連続出場を果たしていた。しかし昨年10月の箱根予選会で13位に終わり、連続出場はストップ。長距離ブロックの新主将に就任した川勝悠雅(4年、洛南)は「新たな歴史を刻み込む1年にしたい」と秋の予選会突破に向けて意気込む。
ジョグの日は学年横串のグループで練習
昨秋の箱根予選会後、同学年の長距離部員による話し合いを経て、川勝は新年度の主将に就任した。国士舘大学陸上競技部の長距離ブロックは選手が100人を超える大所帯。チーム最大の目標は箱根駅伝本戦出場だが、予選会を走れるのは12人、本戦のエントリーメンバーは16人、箱根路を走れるのは10人。タイムが上位の者と下位の者とでは、意識やモチベーションに差が出てしまうのが現実だ。
そこで川勝は、長距離ブロック部員のなるべく全員が目標に対して同じ意識を持って競技に取り組めるように心を砕いている。

「100人を超える組織なので、なかなか一致団結というのは難しいものがあります。上級生と下級生がコミュニケーションを取ることが大事だと自分は思うので、ジョグの日はAチーム、Bチームや学年でグループ分けするのではなく、学年横串の班をつくってジョグをするようにしています」
川勝は1、2年時に箱根路を走っている。1年目、チームは総合19位と苦戦。自身は最終10区を走り区間17位だった。2年時、チームはシード権こそ逃したが、総合12位とジャンプアップに成功。10位の大東文化大学とは1分10秒差、11位の東海大学とは同タイムだった。川勝は9区で区間13位の力走。順位を一つ押し上げ、復路の鶴見中継所では10位に34秒差まで迫った。

「自分も強くなれた」と洛南での3年間に誇り
小1から小6まで、川勝はサッカーに打ち込んだ。中学にはサッカー部がなく、クラブチームでプレーすることも考え「走って体力をつけておこう」という思いから陸上競技部に入部した。中3のときの京都府中学駅伝で1区を走り区間4位に。そのレースで区間賞だったのが駒澤大学の佐藤圭汰(4年、洛南)、区間2位が順天堂大学の村尾雄己(4年、佐久長聖)、区間3位が青山学院大学でマネージャーを務める阿戸将太朗(4年、立命館)だった。
高校進学時は複数校から誘いの声があった中、「京都で一番強い学校でやりたい」と洛南を選んだ。2学年先輩には三浦龍司(現・SUBARU)、1学年先輩には年始の箱根駅伝5区で区間記録を樹立し、青山学院大を卒業した若林宏樹(現・日本生命)、同期には佐藤と中央大学の溜池一太、山梨学院大学の弓削征慶、神奈川大学の宮本陽叶ら、そうそうたる選手がいた。

レベルの高い環境で、川勝は全国高校駅伝の出走がかなわなかった。高校時代、5000mの自己ベストは14分23秒37。「もし他の高校に進んでいたら高校駅伝を走ることができたかも」という思いもある。それでも川勝は「レベルの高い選手たちと一緒に走り、競い合ったことで自分も強くなれた」と洛南で過ごした3年間を誇りに思っている。
学生長距離界のエースとして注目される佐藤とは、一緒に通学することが多かった。「佐藤は練習にすごくストイックで、高校1年の後半ぐらいから一気に強くなりました。でも普段は普通の高校生ですから、学校の行き帰りは、好きなタレントの話とか女の子の話とか、ささいな話で盛り上がりました(笑)」
佐藤とは今も連絡を取り合っている。今年の箱根駅伝で7区区間新をたたき出した激走には、心を揺さぶられた。「佐藤も故障に苦しんで、箱根は復活のすごい走りでした。自分も頑張らないといけないなと思いました」と大舞台への思いをさらに強くした。

故障に苦しみながらも、レースでは力を発揮
川勝も大学2年目以降は故障に泣かされてきた。現在の5000m自己ベスト、14分20秒52は大学1年の5月、10000mの自己ベスト29分21秒46は大学2年の4月にそれぞれ出したものだ。
度重なる故障に苦しみながらも、大事なレースでは自分の力を発揮してきた。箱根予選会では1年時にチーム内4位、2年時にチーム内9位で走り抜き、本戦出場に貢献。3年時は予選会を突破できなかったが、チーム内3位、全体61位でフィニッシュしている。
現在も100%の力で走れる状態ではない。だが、10月の箱根予選会に照準を合わせ、可能な限りの練習をこなしている。「去年は全体で61位でしたから、今年は30番以内で走りたい」と力強い。
小川博之監督も川勝への期待は高い。「タイム以上に強さを持っている選手。調子が良くても悪くても、自分の力を出し切れる。箱根の経験もありますし、早く故障を治して走りでチームを引っ張ってほしいですね」と語る。

「強い国士舘」「粘り強い国士舘」を
今年度のチームは箱根経験のある川勝や瀬川翔誠(4年、埼玉栄)、第101回大会で関東学生連合の一員として6区を走った横田星那(4年、田村)らが軸になる。2018~2021年度にエースとして活躍したライモイ・ヴィンセント(現・スズキ)の弟、ライモイ・エヴァンス(1年)も入部してきた。
『復國~刻み込め新たなる歴史~』をチームスローガンに掲げ、2025年シーズンに臨む。川勝は「『強い国士舘』『粘り強い国士舘』の走りを今年は見せたい。再び箱根駅伝の連続出場を成し遂げ、自分たちの力で新たな歴史を刻み込む、という意味が込められています」と説明する。
大学4年間で競技人生に区切りをつけると川勝自身は決めている。主将として大所帯をまとめ、箱根への返り咲きを果たし、競技者として最後のシーズンを悔いなく終えたい。
