陸上・駅伝

特集:New Leaders2024

国士舘大・西田大智 自己ベストで締めた3年目、最後主将として恥ずかしくない走りを

箱根駅伝4区を走った西田は今年度の主将に。35年ぶりのシードを目指す(撮影・佐伯航平)

今年1月の箱根駅伝で国士舘大学はシード権こそ逃したが、前年の総合19位から大きくジャンプアップ。大学最高記録の11時間1分52秒をマークし、連続出場の8年間では最高の総合12位と健闘した。4区を走り区間10位と好走した西田大智(4年、埼玉栄)が、今季は長距離ブロックの主将に就任。9年連続箱根駅伝出場、35年ぶりのシード権獲得を目指すチームの先頭に立つ。

【新主将特集】New Leaders2024

責任感を持って走った、自身2度目の箱根路

年明けの箱根路で西田は15位で襷(たすき)を受け取ると、安定した走りでラップを刻み続けた。中央大学に抜かれたが山梨学院大学を抜き、5区の山本雷我につないだ。平塚中継所では10位と2分8秒差あったが、小田原中継所では1分31秒差にまで縮めた。「途中、きついところもありましたが、『来年キャプテンなんだから、ここをしっかり走るぞ』と責任感を感じて走りました」と自身2度目の箱根路を振り返る。

3年生のときから西田は副主将を務めていた。国士舘大学長距離ブロックでは毎年、箱根駅伝前に3年生が話し合いをして新主将を決めるが、同期の間でも「自分たちの代の主将は西田」という雰囲気が形成されていたという。「副主将をしていた頃から、次は自分が主将になると意識してやってきました」と西田。順当に新主将に選出され、箱根後、チームは新しいスタートを切った。

「自分はトラックよりもロードの方が強いタイプです。特に駅伝は失敗できない責任感から力が湧いてくるんです」と話すように、西田は駅伝で安定した強さを見せてきた。

昨季の全日本大学駅伝では4区区間12位。チーム内ではトップの区間順位だった(撮影・浅野有美)

箱根デビューは2年生のときに出走した第99回大会。7区を走り1時間6分07秒で区間19位、チームも総合19位と苦戦した。「自分の力のなさを痛感しました。箱根を走れた喜びよりも、悔しさの方が大きいです」とほろ苦い箱根デビューを振り返る。
悔しさをバネに臨んだ大学3年目の昨季は飛躍のシーズンとなった。10月の箱根駅伝予選会では全体72位、チーム内4位。当時の自己ベストである1時間3分38秒でハーフマラソンを走り切り、8位通過に貢献した。

国士舘大にとって7大会ぶりの出場となった全日本大学駅伝でも、西田は4区(11.8km)を走って区間12位。そして今年、自身2度目の箱根駅伝では4区の大学記録を塗り替える1時間2分45秒をマークし、チーム躍進の原動力となった。

埼玉栄高時代は3年連続で都大路を出走

西田は小学生の頃、学童野球チームでショートを守っていた。生まれ育った埼玉県上尾市では、冬に学童スポーツチーム対抗の駅伝大会や小学校対抗の駅伝大会が行われ、西田は両方の駅伝で1区を走り区間賞を獲得した。学内の持久走大会でも常に上位に入っていたこともあり「中学校では陸上一本で頑張ってみよう」と考えて陸上競技部に入部。中3の夏には1500mと3000mの2種目で全国大会に出場した。

高校は県内で圧倒的な強さを誇る埼玉栄高へ進学。2学年先輩に元・青山学院大学の宮坂大器(現・ヤクルト)、1学年先輩に駒澤大学を卒業した白鳥哲汰(現・トヨタ紡績)、同期に佐藤快成や奥山颯斗(ともに國學院大學)らがいる中、高1から3年連続で全国高校駅伝(都大路)を走った。早い段階で勧誘を受けていたことから、国士舘大学へ進学。順調に力をつけ、長距離ブロックを引っ張る存在に成長した。

強豪・埼玉栄高で都大路を3年連続走った(撮影・小川誠志)

チームを率いる小川博之監督は「西田はプレッシャーのかかるレースや駅伝では一番信頼できる選手、計算できる選手です。ここ1年ぐらいで走力、精神力ともに大きく成長したと思います」と西田の成長を喜び、信頼を寄せる。

目標は「予選会5位通過、箱根駅伝総合9位」

国士舘大は箱根駅伝に8年連続52度出場している常連校だが、最後にシード権を獲得したのは1990年の第66回大会。34年ぶりのシード権獲得を目指して臨んだ今年の第100回大会では、往路を10位と3秒差の11位で折り返した。史上最多タイの16校による一斉スタートとなった復路は、実際の順位が分かりづらい中、見えない10位の背中を懸命に追いかけた。11位の東海大学とは同タイム、10位の大東文化大学とは1分10秒差の12位でフィニッシュ。惜しくもシード権には届かなかった。

今年度は「予選会5位通過、箱根駅伝総合9位」をチームの目標に掲げている。西田は「たとえシード圏内の10番を走っていたとしても安心はできない。守りに入らず、さらに前を狙って走っていこうという考えから9位を目標にしました」と理由を説明する。

今年の箱根駅伝では惜しくもシード権を逃した。新チームでは9位を目指す(撮影・佐伯航平)

主将の西田、エースのピーター・カマウ(4年、カギラ)をはじめ、今年の箱根を走ったメンバー8人がチームに残る。箱根未経験の永峯良祐(2年、開志国際)が3月10日の学生ハーフで1時間4分03秒の自己ベストをマークするなど、選手層は着実に厚みを増している。5000m14分07秒82の好タイムを持つ今堀匡道(1年、洛北)ら有力な新入生も加入した。

中央大学、順天堂大学、東海大学、東京国際大学などが予選会にまわり、箱根本戦をかけた戦いはますますハードになるだろう。

「予選会でうちは3人ぐらい飛び出した中、9人ぐらいでの集団走になると思う。みんなが崩れずにそのまま走れば5位ぐらいで通過できると予想しています。自分は、今年は単独で飛び出して、タイムは62分30秒ぐらい、順位は30~40位ぐらいを目標にしています」と意気込みを語る。

4年生として恥ずかしくない走りを

2022年の箱根駅伝第98回大会1区では木榑杏祐(埼玉医科大学グループ)がハイペースの展開の中、粘り強く食らいついて区間10位で襷をつないだ。スローペースとなった第99回大会では1区の綱島辰弥(YKK)が安定感のある走りで区間13位。今年の第100回大会では、5区の山登りで山本雷我が4人抜きの快走を見せた。1区の山本龍神(富士山の銘水)も区間22位と順位こそ下から2番目だったが、ハーフマラソン自己ベスト同等の記録をマーク。4年生の力走が後輩たちに力を与えてきた。

「自分はあまりインパクトを残せるタイプではないと思いますが、堅実に、4年生として恥ずかしくない走りをしたいですね」と西田は表情を引き締める。

「4年生として恥ずかしくない走りをしたい」と話す西田(撮影・小川誠志)

2月4日の香川丸亀国際ハーフマラソンでは1時間2分50秒のタイムでフィニッシュ。大学3年目のシーズンを自己ベストで締めくくった。チームを背負って堅実に、着実に。大学最後のシーズンも自分のラップを刻んでゆく。

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