陸上・駅伝

特集:第55回全日本大学駅伝

関西大が7大会ぶり全日本大学駅伝切符 エース・亀田仁一路を支えた中間層の成長

スタート直後から独走状態だった関西大のエース・亀田仁一路(撮影・浅野有美)

第55回全日本大学駅伝対校選手権大会 関西地区選考会

6月11日@ヤンマーフィールド長居(大阪)
1位 大阪経済大学  4時間04分22秒65 
2位 立命館大学   4時間05分00秒21
3位 関西大学    4時間05分41秒63
4位 関西学院大学  4時間06分29秒52
----------ここまで本戦出場------------
5位 京都産業大学  4時間07分45秒79
6位 びわこ学院大学 4時間11分25秒91
7位 同志社大学   4時間15分22秒51
8位 京都大学    4時間19分38秒32
9位 龍谷大学    4時間21分27秒28
10位 大阪大学    4時間25分10秒14
11位 神戸大学    4時間26分42秒45
佛教大学 規定の8人に満たず選考外

6月11日の全日本大学駅伝関西地区選考会で、7大会ぶりに本選出場を決めた関西大学。鍵となったのは、エース・亀田仁一路(4年、姫路商業)に続く中間層の底上げだった。亀田は「僕一人のチームじゃなく、みんなのレベルも上がってきているという証明にもなった」と、チームの成長に自信をのぞかせた。

“関西の雄”亀田仁一路は3組1着

昨年の全日本大学駅伝関西地区選考会。関西地区の出場枠3に対し、関大は3位の立命館大学と40秒差の4位で涙をのんだ。今年は出場枠が4に増え、チームはトップ通過を狙って選考会に臨んだ。

1組は嶋田匠海(2年、東海大大阪仰星)が2着に入り、チームに勢いをつけた。2組の伊藤仁(4年、関大北陽)は、1着の立命館大学の茶木涼介(2年、立命館守山)と一時トップ争いを繰り広げた。6000m付近でペースを上げた茶木に食らいつき、残り1kmのラストスパートで離されたものの4着でゴールした。

チームの軸、亀田は3組に登場した。関西学生記録28分25秒80を持つ“関西の雄”で、2022年9月の日本インカレ男子10000mでは日本人トップの4位に入り、注目を集めた。今年5月に行われた関西インカレでも男子1部5000mと10000mを大会新記録で制した。

立命館大の茶木涼介(右)に食らいつく関西大の伊藤仁(撮影・浅野有美)

この選考会でも実力者がそろう最終4組に出走すると思われたが3組だった。亀田は「状態がいい中、単独走で勝負を決定づける走りをして、4組を走る選手の負担を少しでも和らげるというのが理由」と明かした。

その狙い通り、スタート直後から飛び出すと独走を続けた。ところが後半、脱水症状でけいれんし、脚に力が入らず失速。1着は守ったが、ゴール直後に倒れ込むとしばらく動けず、担架で運ばれた。タイムは昨年より30秒以上遅く、全体3位の29分48秒50。3組終了時点で関大は3位につけたものの、大きな貯金があるとは言えず、全日本への切符は最終組に託された。

最終組の3人が健闘、決めた本選出場

エースにアクシデントがあっても揺るがないのが今シーズンのチームだ。最終組に出場したのは坂本亘生(3年、滝川)、坂東壮琉(たける、3年、岸和田)、谷村恒晟(2年、愛知)の3人。坂本、谷村は昨年の出雲駅伝で出走経験がある。各校のエース級がそろう中で、3人は集団で走ってペースを保った。

谷村11着(30分26秒02)、坂本12着(30分26秒60)、坂東13着(30分27秒91)でフィニッシュし、各自が実力を出し切った。レース後、スタンドにいた部員から選考会通過の見通しを伝えられると、3人は顔をほころばせた。

関大は上位8人の合計で4時間05分41秒63を記録し、大阪経済大学、立命館大に続く3位に入り、7大会ぶり13回目の全日本本選と、出雲駅伝の切符も手にした。

最終組で走ることが夢だったという坂東は、「ウォーミングアップの時点から流しもまともにできないくらいに息が上がってしまったんですが、スタートラインに立った瞬間に腹をくくり、勝負するぞっていう気持ちが出てきた」と振り返った。「何が起こるか分からないのがこの予選会。僕らが亀田さんをしっかり支える走りが最低限できたので、そこはチームとして自信にしていってもいいかなと思います」と、誇らしげだった。

「一緒に走ってくれた(坂本、谷村の)2人にも本当に感謝したい」と伝えた上で、自身の走りについては「僕は自分に甘いところがあるんで、100点かなって思います」と笑った。

最終組の坂東壮琉(38番)、坂本亘生(40番)、谷村恒晟(39番)は3人そろって走った(撮影・浅野有美)

「亀田さんを一人で練習させない」

7大会ぶりの本選出場を決めた関大。その鍵は中間層の底上げにあった。

閉会式後、亀田は晴れやかな表情でこう語った。

「(他の選手と)自己ベストで1分以上の差があり、自分一人で練習することが今までは多かったんですけど、最近になって大人数で練習できるようになり、チームとしても活気づいてきた。4組で走った3人が中心になって、『亀田さんを一人で練習させない』とミーティングとかで発言してくれて。僕が一人で練習していることに対して壁を作るのではなく、“チャレンジ”と捉えて(自分のペースに)積極的についてくるようになった」

坂東は「中間層がまとまって練習できている。4組の3人と同等の練習を積めている選手が10人ぐらいいるので、そこは(チームとして)戦っていけるんじゃないかなと思います」と自負する。

中間層を引っ張る3人に対して亀田も、「僕が卒業した後もチームを任せられる」と信頼を寄せている。

スタンドに向けて笑顔を見せる選手たち(撮影・井上翔太)

亀田「常連校みたいに、全員が結果を残せるように」

亀田は日本学連選抜として2年連続で全日本1区を走った。今回は初めてチームでの出場になる。「今年は関西大学の襷(たすき)をつなげる。昨年、一昨年の経験をチームに還元して、常連校みたいな感じで、全員が結果を残せるようにしたい。個人的な目標としては、どの区間であっても区間賞を取れる走りができるように夏合宿を頑張っていきたい」と意気込んだ。

坂東も「僕らは関西トップを取るような気持ちでやっていますし、なんなら関東の1校、2校食ってやろうって気持ちで全員でやってるんで、ここから2、3カ月、さらに力を上げて本番に臨みたいと思います」と力強く語った。

2024年1月の箱根駅伝は100回記念大会で全国に門戸が開かれる。もし予選会に出るなら、出雲駅伝と全日本と合わせて、1カ月で3大会をこなすハードなスケジュールになる。

「日程的にかなり厳しいところになると思っている」と亀田。「日程を度外視すると、箱根で戦いたいという思いはある。もし仮に予選会に出場することになれば、日本人1位とは言わずに留学生にも勝って全体のトップを狙っていきたい」と続けた。

チームにとっては、亀田がいるから目指せる舞台でもある。坂東は「大エースの亀田さんが関東のトップ選手と肩を並べるというか、それ以上の力があると信じているんで、亀田さんがいる以上、チームとして臨まなければいけない試練なのかなと思います。目の前にあるチャンスを一つ一つものにしていかないといけないのかなと思うんで、挑戦していく意思はあります」と話した。

全日本大学駅伝本選に向けてレベルアップを誓う(撮影・井上翔太)

「僕一人のチームじゃなく、みんなのレベルも上がってきているという証明にもなった」と、選考会を総括した亀田。駅伝シーズンに向けて大事な夏合宿が待っている。

「亀田さんを一人で練習させない」という思いで力を上げ、エースだけに頼らないチームづくりをしてきた関大。選考会で得た自信を糧に、全日本ではさらに強くなった姿を見せてくれるだろう。

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