フィギュアスケート

特集:ギフティング(寄付)特集

中京大卒・大庭雅「このプログラムを絶対全日本に持っていく」 宮原知子さんとの約束

13回目の全日本選手権出場を目指す大庭雅(演技はすべて撮影・浅野有美)

フィギュアスケ-ト女子の大庭雅(東海東京FH、中京大学卒)は社会人選手として7年目のシーズンに入った。今シーズンのSP(ショートプログラム)は2018年平昌オリンピック日本代表の宮原知子(さとこ)さんに振り付けを依頼。常に新しいことにチャレンジし続けている。

「誰かの原動力になれるように」

「新シーズンも競技者として競技を続けられる事が決まりました。私の頑張る姿で、誰かの原動力になれるように怪我なく一生懸命頑張りたいと思います!」

5月、大庭雅(東海東京FH、中京大学卒)は自身のSNSで今シーズンの競技継続を発表した。

社会人のフィギュアスケーターとして歩み始めて7年目。「続けたいけど続けられるのか」。モチベーション、身体の調子、練習環境。毎年悩みながら、自分自身と向き合い、職場に相談して結論を出す。

今シーズンも所属会社や練習リンクを提供してくれる中京大学などのサポートがあり、現役を続けることができた。

8月のサマーカップでは笑顔で滑り切り、観客からあたたかい拍手が送られた

8月に滋賀県で行われたサマーカップには全国からファンが駆けつけ、大庭の演技に温かい拍手を送った。SPでは高難度の連続3回転ジャンプは入らなかったものの、SPもフリーも演技全体をまとめて総合8位。はじけるような笑顔で滑る様子が印象的だった。

「とにかく楽しむというのが今回の試合の一番の目標で。上へ上へと目指すと緊張して体が動かなくなったりするんですが、たくさんのお客さんが全国から見に来てくださっている試合なので、皆さんにも楽しさが伝わるように演技しました」と振り返った。

年齢は大会最年長の29歳。「年齢は非公開と言ってるんですけど(笑)。気分は大学4年生のまま」とおどけてみせる。

今大会では大庭のほかに、日本大学卒の青木祐奈(MFアカデミー)や、同志社大学卒の籠谷歩未(神戸クラブ)ら大学を卒業した選手が出場していた。「最近は選手寿命が少しずつ延びている気がします。『雅ちゃんが頑張っているから私も頑張れます!』と言ってもらえるようになってきて、自分が頑張っていることが後輩のみんなの力になっているならすごくうれしいです」とほほえんだ。

新しい大庭雅を見せるプログラム

今シーズンのSPは「水百景」。振り付けは2018年平昌オリンピック日本代表の宮原知子さんに依頼した。

「ずっと使いたいと思っていた曲で、いざ自分が使おうと思ったときに、知子ちゃんが軽やかに明るく滑っている姿が浮かんで。これはお願いしてみようと思いました」

宮原さんは2022年3月に競技を引退。その後はプロスケーターとして国内外のアイスショーに出演している。選手時代も演技力に定評はあったが、プロになってからはますます磨きがかかっている。「プロスケーターになってからの表現力がレベルアップしているのにすごく感動していて。いまの知子ちゃんならもっとすごいプログラムを作ってもらえるんじゃないかと感じました」

SPの振り付けは宮原知子さん(左)に依頼した(本人提供)

宮原さんは大庭の依頼を快諾。出演するアイスショーの合間を縫って名古屋に駆けつけ、2日間かけてプログラムを仕上げた。その後は、大庭が演技の動画を送ると、宮原さんが実際に滑った映像にアドバイスを入れて返してくれるという。

「静止する場所、跳ね上がる音など、自分は動きが止まらずにさらーって流れてしまう癖があって。しっかり止めるところは止める、動くところは動く。目線も細かく指導してもらいました」

これまでの振り付けは大庭のイメージに寄せた振り付けが多かったが、今回はあえて宮原さんのイメージに近づけることを試みた。音の取り方や手足の動きがこれまでとは違うため試行錯誤の連続だ。「見ているみなさんに『新しい雅ちゃんだね』と言ってもらえるようなプログラムにしたい」と練習を重ねる。

「このプログラムを絶対、全日本に持っていくね」と宮原さんに伝えた。

資格の勉強もしながら、自分のペースを大事にして練習を続けている

フリーは3シーズン連続で使用している、テレビドラマ「医龍-Team Medical Dragon-」より「Aesthetic」。「とにかくジャンプをしっかりまとめたいというのが第一目標です。滑り慣れているはずなので伸び伸びやれたらと思います」と意気込んだ。

楽しく悔いなく、13回目の全日本へ

「最後の年かもしれない」。毎年、そう覚悟を決めてシーズンをスタートする大庭。年間を通じた最大の目標は「楽しく悔いなく演技すること」だ。そして、自身13回目の出場となる全日本選手権を目指している。

大庭はこのほど、スポーツギフティングサービス「Unlim(アンリム)」に登録した。「今年続けるために試行錯誤した中で、自分は世界選手権やオリンピックに出場はできないけれど、自分が続けることで会社の宣伝になったらいいなと思って始めました」

Unlimを通じてファンから応援のメッセージや寄付が届く。その支援金を活用して7月のみなとアクルス杯後に購入したスケート靴でサマーカップに臨んだ。「応援してもらえているから、もっと頑張らなきゃと、自分のパワーになっています。感謝の気持ちでいっぱいです」と話した。

ファンからの支援金を活用してスケート靴を新調した

仕事では、2年前までは大会と練習の活動報告やイベントの手伝いが多かったが、最近は資料作成やデータ集計などに携わるようになった。証券会社の業務に役立つ資格の勉強を続け、ファイナンシャルプランナー2級を取得。いまはAFP資格取得のための講座を受けている。

「頑張ることが好き」と、さわやかに語る大庭。「トレーニングでもレッグプレス100kgを上げられるようになって。勉強も続けるからには会社のためになる資格をとろうと思ってやっています」

競技でも仕事でも、努力することは大庭にとって何ら特別なことではないのだろう。

全日本の予選となる中部選手権(9月21~23日)に向けて、今日も練習拠点のリンクに向かう。大庭が挑戦を続ける姿は、きっと誰かの原動力になっているはずだ。

 

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