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野球 立正大の小郷、指名漏れからの4年間

野球 立正大の小郷、指名漏れからの4年間
楽天から7巡目で指名され、喜ぶ小郷

硬式野球 東都大学秋季リーグ戦1部優勝決定戦

10月25日@神宮球場
立正大 8-1 駒澤大

正午から優勝決定戦、17時からドラフト会議。プロ志望届を出した立正大と駒大の選手にとって、2018年10月25日は特別すぎる日になった。

立正大の背番号7、3番ライトで副将の小郷裕哉(おごう、4年、関西)は前夜、3時間しか眠れなかったという。埼玉県熊谷市の合宿所から神宮球場へ向かうバスに乗るとき、仲間の顔を見て、「このチームで勝つ」との想いを強く持った。ただ、眠れぬ夜、そして起き抜けに考えたのは、ドラフトの方だった。いや、夢の中でも考えていたのかもしれない。そう、この4年間、彼は指名なしで終わった高校3年のときの落胆を抱えて生きてきた。

18シーズンぶりのV、最初の歓喜

まずは神宮球場での大一番だ。東都1部の優勝決定戦は亜大と青学大が対戦した2011年秋以来。試合は2回、小郷の同期でプロ注目の主将、立正大の4番を張る伊藤裕季也(日大三)が先制ソロホームラン。3回には相手のボークとスクイズで2点を追加。7回には小郷を含む6連続安打などでダメ押しの4点を奪った。投げては糸川亮太(いとがわ、2年、川之江)が8回無失点の好投。立正大にとって18シーズンぶり2度目の歓喜が訪れた。入学直後からの5シーズンは2部だった4年生にとって、とくに感慨深い1部の頂点だった。

ひとしきり喜んだあと、球場の外で待ち構えていたファンに対応すると、立正大の選手たちはドラフト会議パブリックビューイングと記者会見の会場である品川キャンパスへ。立正大OBでもある坂田精二郎監督から見てもはっきり分かるほど、伊藤と小郷は落ち着かない様子だったという。坂田監督は「選手を預かっている以上、父親みたいなものですからね。ちゃんと呼ばれるだろうかと、毎年複雑な気持ちです。慣れるようなもんじゃないですね」と、苦笑いで話した。

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優勝決定戦の7回にタイムリーを放った小郷

待つこと2時間10分、3度目の歓喜

17時、ドラフトが始まった。2巡目の指名で伊藤の名が呼ばれ、会場が一気に色めき立った。指名したのは横浜DeNAベイスターズだった。この日の立正大にとって、これが2度目の歓喜の瞬間となった。

さあ、小郷だ。会場内のスクリーンに映し出された中継映像を見ては、飲み物に手を伸ばす。待てど暮らせど呼ばれない。登壇者の新井敦志部長、坂田監督、伊藤、小郷の前に用意されていた飲み物の減りが小郷だけ早い。7巡目になると、指名を終えるチームも出始めた。ダメなのか……。会場にいる全員が固唾を呑んで見守る中、19時10分だった。東北楽天ゴールデンイーグルスが7巡目で小郷を指名!! チームにこの日3度目となる歓喜が起きた。

ドラフト会議が進んでいく中で、坂田監督から伊藤と小郷に1度ずつスマートフォンが手渡されたシーンがあった。ドラフトの取材が初めてだった私は想像がつかず、質問してみた。電話の主は二人を指名した球団のスカウトだった。伊藤は2位で指名された直後、「高い評価をさせていただきました。期待しています」という言葉を受けたという。小郷への電話は、まだ名前が呼ばれる前。「7位でも大丈夫でしょうか」という問いに対して小郷は「はい」と答えた。指名発表の瞬間、小郷の感情は喜びよりも安堵が大きかったように、私には見えた。

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指名を待つ間、落ち着かない様子の小郷

名前が呼ばれなかった人の気持ちが分かる

小郷は関西高3年の秋もドラフト候補だった。高校1年でベンチ入りを果たし、甲子園にも2度出場して、高校通算28本塁打。ドラフト前にはプロ6球団から調査書が届き、自分でもプロに入れるだろうと思っていた。しかしドラフト当日、小郷の名は呼ばれなかった。帰宅すると押し殺していた悔しさがあふれ、しばらく落ち込んだ。

小郷はプロ入りしか考えていなかっただけに、立正大に進んだ当初は2部のチームということもあって、野球をなめていたところがあったという。ベンチ入りが遠く、ようやく2年の秋にメンバーになれた。3年の春にはレギュラーとなり、秋には2部リーグ2位の打率を残す活躍で、15シーズンぶりの1部昇格に貢献。その後、侍ジャパン大学代表候補強化合宿にも呼ばれた。高3のときにプロへの道が絶たれてからは、野球で生きていくことを夢のまた夢ととらえていたが、このころから具体的な目標へと変わったという。走攻守そろったプレーヤーという持ち味を伸ばすことに打ち込んだ。今回のドラフト前、今度は12球団すべてから調査書が届いた。そして、楽天に指名された。

発表直後に見せた笑顔の裏には、7巡目での指名に対する悔しさもあった。それでも、「自分の実力が足りなかったと受け止めてます。でも、プロに入れば順位は関係ないですから、見返してやろうと思います」と前を向いた。まずは、同じ楽天に1巡目で指名された、同じく外野手の辰己涼介(立命大4年、社)をライバル視していくつもりだ。また、小郷は元楽天の監督で故人の星野仙一氏と同じ岡山県倉敷市出身。「楽天は星野さんが育てたチームで、キャンプも倉敷でやってます。何かの縁があるのかな?」と言って笑った。

小郷は喜びの中で、こうも話した。「自分にはドラフトで名前が呼ばれなかった人の気持ちが分かります。だから、これを当たり前だと思ってません。声がかからなかった人たちの分まで、頑張らないといけない責任があります」。悔しさを乗り越えた小郷だからこそ、たどり着けた場所なのだろう。私はそう感じた。

小郷が次に目指すのは、11月9日に開幕する明治神宮大会での日本一だ。「チームの雰囲気を一番大事にしてます。それが見えない力になる。次の大会でも自分たちの色を出しきります」と力強く語った。4度目の歓喜に期待したい。

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