負けて吹っ切れた 早大に死角なし
鵜野幸也(4年、早稲田実)の放ったスパイクがブロックに阻まれ、ボールを返せずゲームセット。9月30日、大学公式戦において早大は30試合ぶりに負けた。今まで感じたことのない強烈な悔しさで、選手は涙をこぼすしかなかった。
かみ合わないチームの先にあった敗北
思えば、ずっと不調は続いていたのかもしれない。秋リーグ戦は代表経験豊富なリベロの堀江友裕(3年、開智)をけがで欠き、万全とは言えないチームでスタートした。順調に勝ち星を積むも、どこかぎこちない試合が続いた。ブロックでワンタッチを取ってもボールをレシーブする選手がいない。トスを上げた先でアタッカーが助走していない。連係がうまく取れずに、いら立ちを見せる場面も増えた。勝っても選手たちの表情は曇りがち。藤中優斗主将(4年、宇部商)は「自分たちのバレーボールができない」と何度も悔しさをにじませた。勝利を重ねるほど“勝利への義務感”が募り、自分たちの思う試合運びができなくなった。
そして迎えた日体大戦。主将の高梨健太(4年、山形城北)を始めとする日体大の力強いスパイクを何度も早大コートに叩きこまれ、主導権を握れない時間が続いた。1セットをもぎ取ったものの、日体大の組織的なレシーブ陣形に歯が立たず。
敗北に向き合うことで見えたもの
敗戦から2週間、4年生はミーティングを重ねた。前田真治(4年、洛南)は「ミーティングを重ねても何が正解なのか分からず、不安な時間が続いた」と振り返る。1年間負けを経験していなかった選手たちにとって、負けたという事実は想像以上に深く心に突き刺さった。練習に身が入らず、チームの雰囲気もよくなかった。
それでも敗北に真摯に向き合った。どこが悪かったのか、どこを改善すべきかを徹底的に洗い出した。堀江の代わりにリベロとしてコートに立っている村本涼平(3年、洛南)は「4年生や鉄也(武藤、3年、東亜学園)が負けて泣いている姿を見て、コートに立てず悔しい思いをしているであろう友裕の分まで頑張ろうという気持ちがさらに沸いた」と言い、決意を新たにした。
10月13日、敗戦後に臨んだ順大戦。苦しそうだった早大選手の姿はもうなかった。点を決めると円陣を組み、喜びを共有。サービスエースを取ればコートを走り回って喜んだ。タイムアウト中にはポジティブな言葉が飛び交っていた。一人ひとりが自分の役割を果たし、拾ってつなぐ「ワセダバレー」が帰ってきた。順大戦、その翌日の中大戦ともに勝ち、選手たちに笑顔が戻った。優勝決定戦となった筑波大戦でも相手に自由な攻撃をさせず、終始主導権を譲らなかった。3-1で優勝。「データ通りにうまく試合運びができた」と選手たちはうなずいた。敗北を糧に、さらに強くなれた。
早大は昨年の秋リーグ戦からタイトルをすべて勝ちとり、絶対王者としての風格を表し始めた。集大成となるインカレで最大限の輝きを放つために、血のにじむような努力をしてきた。どんな困難も早大ならきっと乗り越えられる。もう早大に死角はない。日本一へ、いざ。