バレー

特集:全日本バレー大学選手権2018

王者の重圧、全員で跳ね返した早大

主将の藤中(右)と副将の小林。重責を果たし、感極まる

全日本大学選手権 最終日

12月2日@東京・大田区総合体育館
男子決勝 早稲田大 3-1 福山平成大

早大は2年連続6度目の優勝

「うれしい気持ちより、ほっとした気持ちの方が強いです」。選手たちは安堵の表情を見せながらインタビューに答えた。早大は今シーズン、3冠を成し遂げ、華々しい成績を残してきた。どれだけ勝利を積み重ねても、選手から出るのは「インカレで優勝して日本一になることが目標です」のひとこと。それだけ、今大会にかける思いは強かった。優勝の筆頭候補に挙げられていた早大が挑んだ6日間の戦い。ベスト8からの激闘を振り返る。

関西王者との30点台ラリー

1回戦、2回戦、3回戦と順調に勝ち進み、準々決勝の相手は、関西の秋リーグ戦で完全優勝を果たした近大だった。第1セットは連続得点で逃げきり、セットを先取。第2セットはジュースへ。先にセットポイントを握られるも、鵜野幸也(4年、早稲田実)のスパイクで逆転。ただ、あと1点が遠かった。サイドアウトの応酬が続き、30点台に突入するも決着はつかず。スパイクミスで再度近大に逆転を許し、34-35。ここから鵜野が2本続けてスパイクを決めた。サイドアウトを切りたい近大のセッター中野倭(1年、開智)はライト小林空(4年、鳥羽)にボールを送るも、主将の藤中優斗(4年、宇部商)の左手がスパイクを仕留めた。粘りに粘って接戦を勝ちきり、37-35で第2セットも奪った。「プレッシャーしか感じてなかったです」と話す鵜野の言葉とは裏腹に、そのパフォーマンスにはエースの意地が感じられた。

第3セットは接戦の末、今大会で初めてセットを落としたが、第4セットは体力と集中力で上回った早大に軍配。藤中や副将の小林光輝(4年、創造学園)のサービスエースもさく裂し、最後は圧倒して勝った。

勢いにのる明大にストレート勝ち

準決勝は明大と対戦。明大は準々決勝、主将の小川智大(川崎橘)ら4年生が入学して以来1度も勝てていなかった中大を撃破し、勢いにのっていた。何度スパイクを打っても小川を中心とした盤石な守りに阻まれ、サイドアウトをきれない。そんな中、第1、2セットともに試合を動かしたのは宮下諒大(4年、早稲田実)のサーブだった。明大のミスを誘い、ネット際の攻防を制して2セットを連取。第3セットは明大を一気に突き放し、ストレートで試合を決めた。

宮下(中央手前)と抱き合う前田

未知なる難敵

もう一つの準決勝、東海大を倒して決勝に進んだのは福山平成大だった。ここ4年間、公式戦での対戦経験はなく、能力は未知数。秋リーグで早大に唯一土をつけた日体大、さらに筑波大を下した東海大を破った。まさに「台風の目」。多彩な攻撃と組織的なブロック、そして会場の声援を力に、破竹の勢いで決勝まで駆け上がってきた。

決勝の第1セットは同点で進んだが、藤中のブロックが決まりブレークポイント。リードを保ったまま、25-23で先取した。第2セットも拮抗した展開が続いた。相手のクイックに苦しみ、2点差を詰められず21-23となるも、宮浦健人(2年、鎮西)のスパイクと相手のスパイクミスなどで3連続得点。24-23と形勢逆転した。ジュースへもつれ込み、25-24の場面で宮下がサーブ。レシーブ陣形を崩し、スパイクを村山豪(2年、駿台学園)が打ち落とした。「真治(前田、4年、洛南)、友裕(堀江、3年、開智)が夜遅くまで練習に付き合ってくれた」。宮下のサーブには、仲間の思いが詰まっていた。

第3セットは早大のミスが重なり、19-25で落とした。第4セットも終盤まで流れが行き来する激しい打ち合いに。小林のツーアタックが決まり、スパイカー陣を楽にする。セット終盤、鵜野がもう一度輝きを放つ。ブロックを抜いたインナーへのクロススパイクを決め、さらにサービスエース、バックアタックを突き刺す。迎えたマッチポイント。小林のブロックポイントが決まった。一瞬の静寂の後、早大チームの笑みがはじけた。一年間ずっと求めてきた「日本一」の称号を手にした瞬間。選手たちの目に光っていたのはうれし涙だった。

最後はそろって最高の笑顔

連覇。4冠。この二つの言葉の重みは計り知れない。選手たちはどれほどのプレッシャーを抱えながらプレーをしていただろう。前だけを見据え、練習を積んできた。選手たちだけではない。裏方で選手を支えてきたアナリストやマネージャー、スタッフ、コーチ。誰が欠けてもこの優勝は成し得なかった。大好きな仲間とともに、集大成として最高の栄光を手にした早大バレー部。その一方で、このチームの最後のときも迫っている。喜びと寂しさをかみしめながら、最後の大会となる天皇杯ファイナルラウンドに向け、きょうもチーム一丸となって練習に向かう。

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