陸上・駅伝

東海大の新キャプテン館澤亨次は実直な男

神奈川のキャプテンとして力走した館澤

天皇盃第24回全国都道府県対抗男子駅伝

1月20日@広島・平和記念公園をスタート・フィニッシュとする7区間48.0km
3区(8.5km)区間2位 館澤亨次(東海大3年)24分7秒

1月20日の全国男子駅伝には、今シーズンの学生駅伝をわかせたランナーも大勢出場した。東海大の館澤亨次もそのひとり。神奈川県代表として3区の8.5kmを駆け抜けた。箱根駅伝での初の総合優勝に大きく貢献した館澤は、来シーズンの学生駅伝3冠を狙うチームのキャプテンに就任したばかり。6度目の出場となった全国男子駅伝には、一足早く神奈川のキャプテンとして臨んだ。

気迫あふれる走りで16人抜き

社会人か大学生の走る3区と7区は、毎年豪華メンバーが競い合う区間だ。今回の3区の大学生ランナーをざっと挙げても、塩尻和也(群馬、順天堂大4年)、吉田圭太(広島、青山学院大2年)、橋詰大慧(和歌山、同4年)、片西景(東京、駒澤大4年)、阿部弘輝(福島、明治大4年)、さらには東海大で館澤とチームメイトの鬼塚翔太(福岡)、西川雄一朗(兵庫)、西田壮志(熊本)、小松陽平(北海道)と、学生駅伝を賑わせた顔ぶれがズラリ。館澤は昨年も3区を走り、区間4位だった。今回狙うは、もちろん区間賞だ。

館澤が今回もっとも意識したのは塩尻だった。昨年の塩尻は3区で区間2位。館澤は24秒差をつけられた。「今年こそリベンジ」の気持ちで臨んだ大会でもあった。中学生区間の2区を終えて1位長野、2位鹿児島、3位福岡。塩尻の群馬は9位、館澤の神奈川は18位だった。そして3区、塩尻と館澤が期待通りのパフォーマンスを披露した。トップと12秒差で駆け出した塩尻はまたたく間に8人を抜き、トップに躍り出る。一方の館澤も苦しい表情をしながらの力走で16人を抜いてみせた。1位群馬、2位神奈川とお互いにチーム順位を引き上げ、4区へつないだ。タイムは塩尻が23分55秒で区間賞、館澤は24分7秒で2位だった。

全国男子駅伝で第2中継所に向かう選手バスの前で。館澤は声援に笑みで応えた

神奈川のキャプテンとして、館澤は昨年以上の走りをして、チームメイトに背中で伝えるのが最大の役目と考えていた。さすがの走りだったが、館澤は満足しない。「自分は、いまある力を出し切れたと思います。ただ塩尻さんには今回も圧倒的な走りをされてしまいました。この負けは力の差です。しっかり力をつけて、また挑みたいです」と、次回へリベンジを持ち越した。

目指すは学生駅伝3冠

東海大で学年リーダーを務めてきた館澤だが、自分に抜群のリーダーシップがあるとは思っていない。どちらかと言えば、今回自分と二人キャプテン候補に挙がった西川雄一朗のほうが、リーダーとしての能力があると思っている。だが、自分がキャプテンをやるからこそ、チームがまた強くなれる要素があると考えてもいる。「キャプテンや監督だけがチームを引っ張るのではなく、後輩もふくめて全員が主体性を持つことで、強いチームになれると思います」。館澤はチームメイトに「力を貸してほしい」「みんなでチームを動かしていけるように頑張ろう」と実直な言葉を投げかけている。「自分がキャプテンだと、下級生もいろいろ言いやすいんじゃないかと思ってます」

館澤はすでに得意の1500mのためのスピード練習を始めている。目指すは秋にドーハである世界陸上だ。「去年のアジア大会ではまったく歯が立たなかったんで、このままじゃ絶対にその舞台にも立てないと思ってます。まずはしっかり強くなって、スタート地点に立つことから始めないとダメです。来年には東京オリンピックもありますし、世界陸上を今後世界で戦うための第一歩にしたいです」

1月10日、東海大で開催された優勝報告会。館澤ら新4年生は「学生駅伝3冠」への思いを口にした(撮影・佐伯航平)

そして駅伝での目標はただ一つ、学生駅伝3冠だ。箱根で総合優勝したが、「去年の日本一は間違いなく全日本で勝った青山学院さんです」と館澤は言う。だから大学ラストイヤーも、挑戦者の気持ちで駅伝に向き合う。「歴代最強のチームだったと言われるよう全力を尽くします」。たいてい柔和な表情で丁寧な口調で語る館澤だが、このところ彼の口から出る言葉は強くて、重い。新キャプテンのもと、黄金世代が最上級生となった東海大がどんな1年をすごすのか、目が離せない。

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