大学陸上

福島初V 相澤、阿部、半澤それぞれのリベンジ

相澤は走り始める前から、先頭でゴールをするイメージをしていた

天皇盃第24回全国都道府県対抗男子駅伝

1月20日@広島・平和記念公園をスタート・フィニッシュとする7区間48.0km
1位 福島県 2時間19分43秒
2位 群馬県 2時間20分18秒
3位 長野県 2時間20分22秒
優秀選手賞 相澤晃(東洋大3年、学法石川高) 第7区(13km) 37分14秒(区間賞)

郷土への思いを胸に中学生から社会人までの7人で襷(たすき)をつなぐ全国都道府県対抗男子駅伝が広島で開催され、福島が東北勢初となる優勝を果たした。福島の相澤晃(東洋大3年)がアンカーを務め、25秒差あった首位の群馬を抜き去った。「30秒差なら」と考えていた相澤は、スタート前からどうやってゴールするかを考える余裕ぶり。ユニフォームに記された「福島」の2文字を強調。笑顔でゴールテープを切った。

相澤の青写真

福島は1区の小指卓也(学法石川高3年)が4位でつなぎ、2区で5位に。3区の阿部弘輝(明治大3年、学法石川高)で7位まで落ちたが、4区の横田俊吾(学法石川高3年)が区間賞の走りで3位に浮上。5区で首位に立った。6区の中学生区間で群馬に再び首位を奪われ、追う相澤は長野のアンカー、中谷雄飛(早大1年、佐久長聖高)と同時に襷を受け取った。スタート前、相澤と中谷は「一緒にいこう」「一緒にいきましょう」と声をかけ合ったというが、相澤の心は中谷がスパートをかける前に突き放すと決まっていた。

相澤(左)と中谷は同時に7区をスタートした(撮影・松永早弥香)

相澤のイメージした展開は、10km地点で群馬のアンカー牧良輔(SUBARU)に追いつき、ラスト3kmでスパートをかけるというものだった。しかし中間点付近で中谷が離れ始めたため、一気に突き放すと、そのまま牧の後ろについた。牧の表情が苦しそうに見えた。ここで牽制していると広島の藤川拓也(中国電力)に追いつかれると考え、牧も抜き去ると、そのまま自分のペースで快走した。

相澤自身、全国舞台ではトップで逃げるアンカーの経験がなかったこともあり、とりあえずスタート前にゴールシーンをイメージした。ゴールが近づいたところで胸の「福島」の2文字を強調するポーズをとったが、ゴールまでまだ遠すぎた。しばらく走って、もう一度「福島」を指さしてゴールテープを切った。相澤は昨年もエントリーされていたが、胃腸炎で当日に控えに回った。その悔しさから「2年分の走りをしよう」と心に決めていた。福島の初優勝と区間賞で、借りを何倍もにして返した。

相澤は今シーズン、出雲駅伝と全日本大学駅伝で納得のいく走りができなかった。その思いをぶつけた箱根で、4区の区間記録を1分27秒も更新。さらには福島の先輩である藤田敦史(現駒大コーチ)がもっていた参考記録扱いの「事実上の区間記録」も2秒更新した。「今回の全国男子駅伝でも箱根をほうふつとさせる走りができたと思います」と、自ら口にした。箱根で往路優勝ながら総合3位に終わった悔しさを胸に、来シーズンは東洋大の主将を務める。

ふたりの新主将

相澤には、今年の福島チームは勝てるという自信があった。昨年12月の全国高校駅伝で3位だった学法石川高校の走りは、相澤に箱根への気持ちを高めてくれた。そんな心強い高校生たちと走れる。なにより、中学生時代から切磋琢磨してきた阿部と同じチームで走れることを、心強く感じていた。その思いは阿部も同じだった。

相澤と阿部は同じ須賀川市出身。お互いの中学校に陸上部がなかったため、須賀川市に拠点をおく「円谷ランナーズ」で一緒に走っていた。当時の相澤といまの相澤の違いを阿部に聞くと、「基本的に何も変わってないですよ」と笑う。環境が似ていたため、いつもお互いを意識していた。学法石川高校でともに走り、東洋大と明大で分かれたいまも、どこかで意識し合っている。「競技レベルが高くなってきたいまでも、やっぱり相澤には負けたくないっていう思いがありますね。とくにロードは一番強い選手だと思ってます」と阿部は言う。

阿部は3区を走り、区間12位で順位を落とした(撮影・大島佑介)

阿部は箱根3区で区間2位という結果に満足はしていない。「勝ちにこだわるタイプなので、2番はいけない数字なんです」。今回の全国男子駅伝では3区で区間12位。「全然評価がつけられないです。体も気持ちも調整できてませんでした。それは走る前から分かってたんですけど、福島代表で走る以上は恥ずかしくない走りをしたかったです。レースが続いたので、まずは休養して体をつくって、伝統の明治の力を見せていきたいです」。明大の新主将とエースとしての覚悟を口にした。

福島チームの大学・社会人枠には相澤と阿部に加え、半澤黎斗(早大1年、学法石川高)がいた。半澤は控えとして何ができるか考え、とくに中高校生へのサポートを意識したという。「若いチームなので、大学1年の自分が中高生と大学生をつなぐ役割をして、強いチームワークで臨めたらと思ってました」。半澤は福島で生まれ育ち、東日本大震災で長期間の避難生活も経験した。「安西(秀幸)監督もおっしゃっていたように、僕たちが力強く走ることで福島の人たちに何か伝えられたらいいなと思ってます」。早大は箱根で13年ぶりにシード権を落とすなど、今シーズンは思うような結果を出せなかった。半澤自身はさらに、箱根を走ることもできなかった悔しさを抱えている。すでに動き始めた新体制では「自己記録を更新し、いい流れをチームにもたらしたいです」と語る。

半澤(右)は福島チームのために、1年生として自分ができることを考えてこの日に臨んだ

初の優勝に笑顔を見せる一方で、3人の大学生たちはそれぞれのリベンジを口にした。“マラソン大国”の福島の強さを示した彼らがここからどう飛躍するのか、その姿が待ち遠しい。

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