東洋大の相澤晃に完敗、飛躍誓う早稲田ルーキー中谷雄飛
天皇盃第24回全国都道府県対抗男子駅伝
1月20日@広島・平和記念公園をスタート・フィニッシュとする7区間48.0km
7区(13.0km)区間3位 中谷雄飛(長野、佐久長聖高、早稲田大1年)37分53秒
相澤に「一緒にいきましょう」
長野のアンカー中谷(なかや)は悲壮感の漂う表情で、両手を合わせてゴールした。そして、右足を思いきり蹴り上げた。「せっかくチームがいい流れで持ってきてくれたのに、僕のところで最低限の走りしかできなかったのは、ほんとに申し訳ないという思いが一番です」
中谷にとって、この1年の取り組みを試されるような展開になった。トップの群馬から25秒遅れの3位で、2位の福島と同時にたすきを受けた。福島のアンカーは箱根駅伝の4区で区間新記録を出したばかりの相澤晃(東洋大3年)だ。
相澤に食らいついていって群馬を抜き、最後に相澤を突き放して優勝のゴールテープを切る――。中谷は、そんな青写真を描いた。出番を待つ中継所で、中谷は相澤に「一緒にいきましょう」と声をかけ、相澤も「いこう」と応じていた。
そして、二人で群馬を追って走り始めた。ハイペースは覚悟していた中谷だったが、相澤は1kmを2分50秒、51秒と刻んでいく。そこに自分が付けていることに関しては「調子いいな」とプラスに受け止めたが、一方で中谷は2分55秒ペースを念頭に置いていたため、「かなり速い」とも感じていた。そして中間点あたりで置いていかれた。
「6kmをすぎてから足がキツくなってしまって……。後半はだいぶ苦しい走りになりました。10kmは何とか28分40秒ぐらいで通過できたんですけど、残り3kmが本当にいっぱいいっぱいという感じで、そのときに(並んでいた)群馬の選手に出られたので、粘れませんでした。悔しいし、自分自身ふがいない。来年はリベンジしたいです」。中谷はスラスラと、でも悔しさもにじませて、こう語った。
タイムはよくても勝負に負けては……
相澤は区間賞の37分14秒で東北勢初優勝のゴールテープを切った。中谷も区間3位の37分53秒と健闘したが、順位は上げられなかった。当初の中谷の目標タイムは、昨年のアンカーで佐久長聖高の2学年先輩にあたる關颯人(東海大3年)が記録した38分11秒だったため、高校時代の恩師で長野チームの監督を務める高見澤勝氏にも「いいタイムだ」とほめられた。「確かに僕自身も手応えをつかめるようなタイムではあったんですけど、勝負の世界において負けてるってのは非常に悔しいです。1年前は高校生で、高校の中で勝っていれば国際大会に出られたんですけど、シニアになったからには、実業団や一般の選手を相手に勝たない限りは、トラックでオリンピックや世界陸上を目指したり、ほかの国際大会の代表になるってのは厳しいと思います。こういうところで(7区で)まだ2人に負けてるってことを考えると、まだまだ力がないかなと思います」。見ているところが、そこらへんの大学1年生とは決定的に違う。
思い通りの1年ではなかった。ゴールデンルーキーとして早稲田に入ったが、なかなかいい結果が出なかった。昨年5月の関東インカレは5000mで25位。高見澤氏にアドバイスを求め、高校時代の原点であるクロスカントリーにも取り組んだ。9月上旬の全日本インカレは13位。駅伝シーズンを前に、9月29日の世田谷競技会で大学入学後初めて5000mで13分台を出し、長いトンネルを抜けた。10月の出雲駅伝では3区で区間4位、11月の全日本大学駅伝は3区で区間2位、箱根駅伝は1区でトップと7秒差の区間4位。駅伝では低迷し、箱根では13年ぶりにシード権を失ったチームにあって孤軍奮闘した。
トラックで世界へ
ここからは大学で2度目のトラックシーズンに備えていく。「世界クロカンも日本選手権もユニバーシアードもありますので、トラックで世界と勝負できるように、しっかりやっていきたいと思います」と中谷。
駅伝シーズンの最後に相澤と勝負できたのは、中谷にとって大きな刺激になったようだ。「相澤さんはちょっとずば抜けてるというか、すごく力の差を感じてる選手なので、そういった選手に勝てるようになりたいです。これからも戦う機会があると思うので、少しでも自分自身にプラスになるようなものを吸収するというか、盗んでいけたらいいなと思います」
たくましい1年生は、広島での完敗も、羽ばたくための推進力に変えていく。