青学レスリング澤田千優、最後のインカレで三度目の正直ならず
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全日本学生レスリング選手権 女子50kg級
8月20~23日@東京・駒沢体育館
準優勝 澤田千優(青山学院大4年)
青学の澤田千優(ちひろ、埼玉栄)は学生日本一を決める全日本学生レスリング選手権(インカレ)で、1年生と3年生のときに準優勝、2年生で3位と、いずれも頂点に迫っていた。4年生となり最後のインカレで自身3度目の決勝まで進んだが、三度目の正直はならなかった。
相手を寄せつけない強さで決勝へ
4年間で最後の学生の大会。澤田は準決勝まで、テクニカルフォールかフォールで勝ち上がった。相手を寄せ付けない強さで決勝へと進んだが、本人は「組み合わせがよかったのが大きい」と冷静に受け止めていた。
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3度目の決勝の舞台に、過去2度とは異なることがあった。それは、決勝の相手が同門同期の加賀田葵夏(きか、青山学院大4年、文化大杉並)ではなかったことだ。
澤田と加賀田は同じ階級を主戦場とし、大学に入ったときからともに切磋琢磨(せっさたくま)してきた。2016年、18年のインカレでは決勝で顔を合わせた。部員数が少ない青学の同門対決は非常にめずらしく、決勝で2度も対戦があったことは、青学レスリング部の歴史に深く刻まれる出来事だった。
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トーナメントで戦う以上、同じ階級に出場すれば、お互いが勝ち進む限りどこかで必ず対戦する。二人にとって最後のインカレとなった今回も、順当にいけば二人は決勝で顔を合わせるはずだった。しかし、それは実現しなかった。
目の前で負けた同門のライバル
両者の明暗が分かれたのは準決勝。先に戦う加賀田を、澤田はマット横で見守った。先制された加賀田は冷静にポイントを取り返して2-2としたが、ラスト30秒で勝ち越されて敗戦。決勝へは進めなかった。
澤田は加賀田が負けるところを目の前で見て、悔しさが込み上げた。「葵夏ちゃんと同じ気持ちになりました。葵夏ちゃんと(決勝で)やりたかったという悔しさではなくて、葵夏ちゃんが負けたことに対して(本人と)同じ目線で悔しかったです」。ライバルであり仲間である加賀田の敗戦は、まるで自分のことのように感じられた。
直後の澤田自身の準決勝は、安定した試合運びから相手を押さえ込み、フォール勝ち。加賀田を下した吉元玲美那(至学館大1年)が待つ決勝へと進んだ。
埼玉栄高校の3学年後輩との決勝
澤田と吉元は同じ埼玉栄高出身。国体の予選で2度対戦していて、澤田は2度とも負けていた。「吉元さんとは当たりたくないなと思ってました。2度対戦してて、1点も取れずにどっちもテクられてた(テクニカルフォールされていた)ので。強いからやりたくないなと思ってました」澤田は正直に言った。苦手な後輩と学生女王の座を争うことになった。
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張り詰めた空気の中で始まった決勝で、先手を打ったのは吉元だった。バックポイントを奪われた澤田は、2点ビハインドで試合を折り返す。ただ、リードされている中でも「焦る気持ちはまったくなかったです」と、落ち着いていた。「とりあえず大差にはならないように、隙があれば取りにいきたいなと思ってました」。気合を入れ直して第2ピリオド(P)へ向かった。
澤田は第2P開始から積極的に前へ出て得点のチャンスを伺った。試合残り1分、グランドの攻防の中で澤田が吉元をコントロールし、逆転に成功。しかし、そのままの流れで澤田も体を返され、吉元にもポイントが入る。「ポイントを取ったときに、そのまま離れていればよかったのに、そこでもつれた時間が長かったから(失点してしまって)、もったいなかったです」。一瞬の判断ミスを悔やんだ。この一手が勝負を決め、2-4の惜敗。澤田は最後の年も表彰台の頂点に立つことはできなかった。
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最後まで、できることはしっかりやる
「最後のインカレで、正直決勝で葵夏ちゃんとやりたいなという気持ちはありました。想像と違う決勝になってしまって、その分勝ちたいなと思ってたんですけど、力及ばず悔しかったです」。澤田は唇をかんだ。
なかなか思い通りにいかない。それがスポーツの難しさであり、面白さでもある。
それは選手自身が誰より強く感じている部分だろう。澤田のラストイヤーのインカレは、悔しさが残ったまま幕を閉じた。
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引退試合となる年末の天皇杯まで4カ月を切り、青学で過ごす日々も終わりが見えてきた。レスリングは試合が少なく、とくに女子は大会数が限られている。「できることはしっかりとやって、悔いの残らないような学生生活のラストを迎えたいと思います」と、澤田は懸命に前を向いた。
大切な同期でありライバルである加賀田をはじめ、青学レスリング部の仲間と支え合いながら、一日一日を大切に、地に足をつけて歩んでゆく。
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