東海大・小松陽平、2年連続8区区間賞でも悔し涙 それでも「幸せだった」
第96回箱根駅伝
1月2、3日@大手町~箱根の10区間217.1km
2位 東海大 10時間48分25秒(新記録)
8区 1位 小松陽平(東海大4年) 1時間4分24秒
前回大会、8区で東海大の小松陽平(現4年、東海大四)が東洋大を抜いて首位に立つと、その勢いのまま東海大が箱根駅伝初優勝を飾った。22年ぶりとなる区間新記録をたたき出した小松は金栗四三杯を受賞。あまりの反響ぶりに小松自身が驚いていた。あれから一年、「黄金世代の意地を見せる」と心に誓い、2度目の8区に挑んだ。そして今年も区間賞を獲得するも、小松の胸にあったのは悔しさだった。
青学の背中が見えない、焦りからペースが上がり
東海大は往路を4位で終え、首位の青山学院大との差は3分22秒だった。復路のスタートとなる6区には、当日変更で主将の館澤亨次(4年、埼玉栄)を起用。今シーズン、けがに悩まされてきた館澤は断固たる決意で駆け抜け、57分17秒という驚異的な区間新記録を樹立した。順位を一つ上げ、青学との差は2分21秒。7区の松崎咲人(1年、佐久長聖)も区間3位の走りでさらに順位を上げ、2位で小松に襷(たすき)をつないだ。
前回、首位の東洋大との差は4秒だったが、今回は2分1秒。9区には自分の走りで青学の背中が見える位置で襷をつなぐ。そのためには、昨年出した自分の記録を越える走りが必要だ。小松はそう考えながらレースに向かっていたが、姿が見えない相手を追う孤独と焦りを感じていた。そして運営管理車からの両角速監督の指示や沿道からの声援で、青学との差が開いていると知らされた。
「ここで踏ん張らないと」とペースを上げ、前回は29分35秒程度で通過した10km地点を29分20秒程度で走り抜けた。7割ぐらいの感覚で走ろうとしていた小松にとっては、予定外のペースだった。結果、ラスト5kmの遊行寺の坂で脚を使ってしまい、後半は思うように走れなかった。それでも持てるすべてを振り絞って青学を追った。小松は1時間4分24秒で区間賞をつかんだが、青学の岩見秀哉(3年、須磨学園)も好走し、1時間4分25秒で区間2位。差を1秒しか縮められなかった。
「郡司には笑顔でゴールしてもらえてよかった」
昨年12月18日にあった箱根駅伝の合同取材で、小松は希望する区間を10区と話していたが、心はすでに8区と決まっていた。その10区は今年も郡司陽大(4年、那須拓陽)が走った。2人は「『黄金世代』を一緒に食ってこうぜ」と話していた仲で、前回の箱根駅伝で一気に注目されるようになった。
その郡司がゴールした瞬間について小松にたずねた。「郡司もそうですけど、4年生はみんな切磋琢磨(せっさたくま)してきたメンバーなので、そうですね……」。小松の目がうるんだ。「いやー、あれだけ頑張って負けてしまうというのは本当に悔しかった。でも最後は笑顔でゴールしてほしいなって。僕らも最後は笑顔で迎えようと思ってたので、郡司には笑顔でゴールしてもらえてよかったです」
2位に終わったが、東海大の総合タイムも前回より3分44秒速かった。「僕らも目標タイムを上回ってたけど、それ以上に青山学院さんが強かった」と小松。前回敗れた悔しさを忘れず、力を発揮してきたチームの底力を思い知らされた。「僕らはこれで卒業してしまうんですけど、3年生以下はこれをバネにして青山学院さんにリベンジしてほしいなって思います。心強い後輩たちだし、今回走れなかったメンバーの中にも強い選手は全然いるんで、リベンジできる可能性はあると思います」と後輩たちに思いを託した。
小松は今春から、東海大出身の上岡宏次さんが監督を務めるプレス工業で競技を続ける。5000mや10000mのトラックを狙いながら、駅伝も走りたいと考えている。学生最後の駅伝は悔しい思いで終えた。それでも小松は言った。「4年間、箱根駅伝を目標にチーム一丸となって頑張ってきました。幸せだったと思いました」