野球

関大軟式野球部・浜島魁士 「主将兼監督兼4番」で苦しんだ1年、最後はジャパンに!

昨シーズン、浜島はキャプテンとして悩みながらもチームをまとめた(すべて撮影・小中翔太)

練習グラウンドを予約し、メニューを組む。試合ではオーダーを決め、打席や塁上からサインを送る。監督不在のケースが多い軟式野球では、こういう選手が結構いる。関西大学にも選手兼任監督として奮闘したキャプテンがいる。浜島魁士(3年、早稲田摂陵)。長打力が売りの右バッターだ。

同じ野球でも硬式の環境とは大違い

浜島が野球を始めたのは小学校4年生のとき。その前には水泳を習っていたが、「野球の方が面白かったし、外に出るんで気分も変わるし、楽しくやらせてもらってました」。少年野球では捕手でキャプテン、中学校の軟式野球部では副キャプテンを務めた。進学した早稲田摂陵高は、野球部員が約130人という大所帯。中学までのように主力にはなれず、3年生のときはBチームのキャプテンだった。

関大の政策創造学部に進んだ。勉強が大変だと聞いていたため、レベルの高い硬式野球部に入るのは断念。準硬式野球部の存在を知らず、軟式野球部に入った。1回生の秋から4番を打ち、2回生の秋にホームラン王。3回生の春にベストナイン(一塁手)のタイトルをとった。その活躍ぶりに、高校時代のチームメイトが驚いたという。

「軟式が合ってたんかなと思います。選んでよかったです。軟式は硬式と比べたら全然知られてないので、そういうところを広げていけたらなと思ってます。軟式はぜんぜん点数が入らない。だから何とかノーアウト3塁かワンアウト3塁の状況を作って、いかに叩いて1点を取るか。そういう攻防が楽しいなと思います」

少年野球ではキャッチャーだった。現在はファーストとサードを守る

硬式と比べて世に出ることの少ない軟式野球だが、全日本大学軟式野球連盟には254大学が加盟している。その数は硬式と遜色ない。しかし、環境の面では大きく違っている。

関大の場合、硬式は毎日専用グラウンドで練習できるのに対し、軟式は平日の練習は週2日か3日だけ。近くのグラウンドを借り、午後5時から7時までの2時間だけ。監督がいないため、誰かがその役目を務めなければならない。2018年秋の新チーム結成時は、ほかの選手が監督役を担っていたがうまくいかず、結局新キャプテンに就いた浜島が兼任することになった。

春の3位から秋は最下位に転落

監督兼主将兼4番。三つの責任が重くのしかかった。「苦しかったことは、すごいいっぱいあります。何回も泣いたし、悔しかった。僕が打順を決めて打てなかったら『何でお前が4番打つんや』って。練習メニューも全部決めるんですけど、『何でこんな練習するんや』って責められることもありました。そういう目があることは厳しかったけど、でも、だからすごくやる気になれたっていうのもありました」

長打力はチーム一。練習試合を含めれば、大学通算本塁打は20本を超える。客観的に見て、4番であることに間違いない。昨年の春は打率3割4分5厘と爆発。打線としても好調でリーグ3位となり、関西大会でも優勝した。

昨春は打率3割4分5厘で1本塁打、8打点で、リーグのベストナインを獲得

しかし秋は一変。各大学の1回生ピッチャーの台頭が目立ち、リーグ全体でも3割打者が2人しかいないという“投高打低”状態に。関大はチームトップでも打率2割2分8厘どまり。打線の不調が負の連鎖を生んだ。試合後のミーティングでは「自分の采配で負けた。責任は自分にある」と言い、状況が好転するようにと、ちょっとしたことでも仲間をほめるようにした。しかし2勝8敗で最下位に沈んだ。

3回生のシーズンが終わり、キャプテンは1学年下の代へ。現在キャプテンを務める杉本龍馬(2年、比叡山)は当時を振り返り、「浜島さんは悩んでましたね。春はよかったけど、秋に負けが続いてくると雰囲気悪くなって、その中でどうしたらチームをポジティブにできるかずっと考えてましたね」と話した。

最後こそジャパン入りと全国大会へ

浜島はすでに次のシーズンを見すえている。昨年6月には書類選考を通過し、大学軟式ジャパンメンバーとして選考合宿に参加。最終的に24人のメンバー入りには至らなかったが、この経験が野球への思いをより強くした。

「次こそは(ジャパンに)選ばれたいし、(関大チームで)全国や西日本の大会に出たいから、この後輩たちと真剣に取り組もうと思ってます」。ほとんどの選手が3回生の秋で引退するが、浜島は残る。次のシーズンも主軸を担い、就職後も野球を続ける予定だ。

ファーストの守備では、ショートバウンドの送球を捕るのがうまい

「軟式のロースコアの緊張感がすごい楽しいですし、野球を続けることでつながりができる。野球をやってる人に悪い人はいないと思ってます。野球で培ってきた礼儀だったり挨拶(あいさつ)だったりで、人間関係がうまくいく人になりたいです。選手兼監督でやってきたから、人とのコミュニケーションは一番とれてると自負してます。野球だけじゃなくて、そういう人としての成長もできたんじゃないかな」

西日本大学選手権で決勝を戦った同志社大と立命館大は、どちらも同じリーグ。強力なライバルを打ち倒し、大学ラストイヤーにみんなで笑いたい。

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