大東大主将・関谷夏希 背中で見せたライトグリーンの最強エース
関谷夏希(4年、市立船橋)は今シーズン、大東文化大女子長距離の主将としてチームをけん引してきた。1年生のときには全日本大学女子駅伝で最長区間の5区を任され、翌年から2年連続区間賞。関東インカレでも長距離2冠を2年連続で獲得した。そして、3年生の12月には10000mで学生歴代4位のタイムをマーク。大学女子長距離界のトップクラスの選手に上りつめた。
関谷を軸に三本柱が躍進
関谷に加え、ユニバーシアード金メダルの鈴木優花(2年、大曲)と、世界陸上3000m障害に出場した吉村玲美(1年、白鵬女子)の3人は、大東大の三本柱と言われている。
関谷の印象について、鈴木は「しっかりと腰を据えて毎日競技に向かって大会に挑んでいる姿をお手本にさせていただいてます。ほんとにキャプテンとして大きな存在です」と述べ、常に背中を追っている。吉村もまた「あこがれの存在です。一緒に練習するとなると緊張しましたけど、一緒に練習できてすごく刺激になってます」と言う。主将として先頭に立つ関谷は競技に対する真剣さやストイックさが、チームメートの士気をもけん引していた。
「お手本とされる選手になりたい」
今シーズン、関谷の個人成績は好調だった。5月の関東インカレでは5000mのラスト1周で五島莉乃(中央大4年、星稜)との残り200mのデッドヒートを制し、3連覇の偉業を達成。その勢いのままに、7月にイタリア・ナポリで開催されたユニバーシアード10000mでは3位入賞の快挙をなし遂げた。
「学生のオリンピック」とも呼ばれるこの大会で、12位に沈んだ2年前の雪辱を果たし、「メダル獲得が自分の競技生活において大きなものになりました」と喜びを表した。9月にあった日本インカレでも5000mで7位入賞と着実に結果を残し、いよいよ本格的な駅伝シーズンを迎えた。
大東大女子長距離は創部10年目を迎えるが、いまだ駅伝での日本一になっていない。今年のチームスローガンは、一人ひとりが才能を発揮させ、チーム全体をよくするという意味を込め「桜梅桃李(おうばいとうり)~10年間の笑顔を頂点へ~」とした。関谷は「走りの面もそうですけど、人間としてもお手本とされる選手になりたい」と決意を表し、ライトグリーン不動のエースとして駅伝に臨んだ。
決戦の地となる10月の仙台で、関谷は4年連続で最長区間の5区を任された。レースは激しいトップ争いとなったが、4区の秋山祐妃(3年、熊本信愛女学院)が中継所で待つ関谷の目の前で過呼吸により失速し、倒れ込むアクシデントが起きた。絶体絶命のピンチに関谷が主将としてかけた言葉は「祐妃。ゆっくりでいいよ」だった。後輩を思いやる先輩と、日本一を目指すというチームの思いがつながり関谷はスタートを切った。5位で襷(たすき)を受け取った瞬間から、気迫のこもった走りを見せ、区間2位と順位を押し上げ、大東大は3年連続となる準優勝を勝ち取った。
最後は全員笑顔を締めくくった1年
初の日本一を目指す大東大にとって、シーズンラストチャンスとなる富士山女子駅伝。学生最後の駅伝に臨む関谷は「優勝に対する気持ちは強くなってます。それを楽しんで練習に取り組めている。全日本前とは違ういい雰囲気になってる」と優勝に向けて期待を高めていた。
3年連続で最長区間の5区を任された関谷は「どんな順位でも冷静に勝負を決める走りをしたい」と意気込んだ。関谷は5位で襷を受け一つ順位を上げる快走を見せ、区間2位。チーム5度目の準優勝に貢献した。「区間賞を取れなかったのと、あとの2人に安心して走れる位置で渡せなかったのがまだまだです」と悔しさをにじませたが、関谷が率いる大東大の総合力が光った。
今シーズン掲げてきた「桜梅桃李~10年間の笑顔を頂点へ~」。この目標に向かって選手たちは1年間全力で練習に取り組んできた。「日本一」を掲げていただけにレース直後に選手たちは悔し涙があふれ出たが、最後の集合写真では最高の笑顔で一年を締めくくった。
卒業後、大東大大学院に進む関谷は、外園隆監督のもとでトラック競技に専念して東京オリンピックを目指す。大学4年間での経験を糧にさらなる高みを目指す。