陸上・駅伝

特集:第30回ユニバーシアード

大東大・鈴木優花 大飛躍の1年経て、ナポリで優勝狙う

優勝の賞品がペットボトルのお茶1年分と聞き、大笑いの鈴木

日本学生女子ハーフマラソン選手権

3月17日@松江市
1位 鈴木優花(大東文化大1年=当時、大曲) 1時間11分27秒

第22回日本学生女子ハーフマラソン選手権は3月17日、今夏のユニバーシアード代表選考会を兼ねて松江市であり、大東文化大1年(当時)の鈴木優花(大曲)が1時間11分27秒で優勝した。2秒差の2位には名城大2年(当時)の加世田(かせだ)梨花(成田)、8秒差の3位には松山大1年(当時)の田川友貴(ゆうき、盛岡誠桜)が入った。この3人が7月にイタリア・ナポリで開かれるユニバーシアードのハーフマラソン代表に内定した。

鈴木には優勝賞品としてペットボトルのお茶1年分が贈られた。表彰式では賞品を聞いて大笑いしていた鈴木。その後の取材で「お茶、どうします? 」と聞くと、満面の笑みで「毎日1本ずつ飲みます!! 」と、元気よく言った。

1年生らしからぬ勝負強さ

鈴木にとって初のハーフマラソンだったが、1年生らしからぬ勝負強さを見せつけた。19kmで先頭集団は4人に。20kmをすぎて、鈴木は加世田とともに前へ出た。200mほど並走したところで加世田がスパートしたが、鈴木は食らいつく。20.6kmで鈴木が出て、そのままゴールまで駆け抜けた。「ラスト5kmまでは気持ちの面でリラックスして、勝負どころでしっかりと全力を出せるようなレースにしようと思ってました。加世田さんが前に出たところは、もう結構キツかったんですけど、焦りは禁物だと思ってついていきました。最後の直線は『あと少しだ』という思いで、もがきました」。鈴木は少し興奮気味に振り返った。

ユニバーシアード行きの決まる3位以内でなく、優勝を狙っていた。「強気でいかないとユニバはとれないと思っていたので、1番をとりたい気持ちはすごく強かったです」。この大会前には気持ちを高めるため、ユニバーシアードの開かれるナポリの風景をネットで眺めては、「ステキな街だな」と、南イタリア最大の都市へ思いをはせていた。願いはかなった。

叫びながら優勝のゴールテープを切った鈴木

秋田で生まれ、秋田を愛し

秋田で生まれ育った。中学校まではバスケットボール。バスケ部にいながら出た陸上の大会で1500mを走り、2年連続で東北大会まで進んだ。「思ったより上までいけて、自分はどこまでいけるのか試してみたい気持ちになりました」。進学校の県立大曲高校に進み、陸上部に入った。高校の周りを走っていると、地域の人たちが「応援してるよ」と声をかけてくれた。「温かさをすごく感じて、すごく絆が強いなと思います」。ふるさと秋田が大好きだ。

高校時代に陸上で目立った好結果は残せなかった。2年のインターハイで3000mの決勝に進んだのが最高だった。それが、関東へ出てきてすぐに快進撃だ。

昨年5月の関東インカレ女子5000mでは16分13秒の自己ベストで2位。6月の日本学生個人選手権では一気に15分46秒まで自己記録を伸ばし、大会新記録で優勝した。駅伝シーズンになると、10月の全日本大学女子駅伝対校選手権では、2区(5.6km)で12人抜きの力走でチームをトップに引き上げた。17分38秒の区間賞だった。そして、暮れの全日本大学女子選抜駅伝はアンカーとして7区(8.3km)を走り、28分39秒の区間新記録で区間賞に輝いた。

慎重に給水をとる鈴木(209)

いったい何が起こったのか。大東大の女子長距離ブロックを率いる外園(ほかぞの)隆監督には、リラックスの大切さを学んだという。「自分は練習からずっとガチガチの走りだったので。余裕を持たないといけないって言われてきました。あとは基礎、基本のところです。監督からたくさん教えていただいて、基本の動きを見直せたのがいちばん大きいです」

ユニバーシアードも優勝を

ターニングポイントがあった。昨年5月の関東インカレ女子5000m。「大学に入って2本目の5000だったと思うんですけど、残り1000で自分から先頭に出たんです。そこで『もっともっと自分はいけるのかな』という光が見えた気がしました」。確かな光だった。その光の向こうに、鈴木優花の飛躍があった。

2位の加世田(左)、3位の田川(右)とともに笑顔の鈴木

7月のユニバーシアード本番への抱負を尋ねた。「しっかりまた基本から見直します。『調子が悪い』とかああだこうだ言っても仕方ないので、どんな状態でも自分のいい練習ってのを、しっかり目標を定めた中で、一つひとつしっかり準備していきたいと思います」。言葉が強くて、芯がしっかりしている。ナポリでの目標は? 「優勝するつもりで、強い気持ちを持っていきたいと思います」

秋田発の快進撃がどこまで続くのか、楽しみだ。

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